19話
いつもより少しだけ長いです
『か、勝ったのか⋯⋯?』
『嘘だろ⋯⋯⋯』
『てことは、つまり⋯⋯』
『フルールって、1級より強いってことか!?』
『50000円:ヤバすぎヤバすぎヤバすぎ』
『50000円:前代未聞だろこんなの』
『50000円:伝説、始まる————』
『もう始まってんだよなぁ』
『50000円:同接20万超えてるぞ!!』
『もうやめて!DIVEサーバーのライフは0よ!』
『世界トレンド、1位がフルール、2位が特級、3位がアークデーモン⋯⋯世界中でバズってるぞこれ!!』
『50000円:後にも先にも、この記録抜けるやつ居ないだろ』
『50000円:フルール最強!フルール最強!フルール最強!』
『50000円:ワルキューレの皆を助けてくれてありがどう!!!!』
『50000円:下手したら世界救ってた説ある』
私たちがアークデーモンを倒した結果、コメント欄は超大盛り上がりだ。同時接続者数は21万人、チャンネル登録者はこの配信だけで5万人は増えている。投げ銭も止まらず、既に7000万円を突破している。このまま行けば1億の大台に乗ってしまう可能性さえある。
「リンネ⋯⋯助かったよ」
「レイナさん!無事で良かったです!」
「いつの間にか、カレン達にポーションも使ってくれたんだろう?ありがとう」
「いえいえ!当然のことをしたまでですよ!」
私の元に、息も絶え絶えなレイナさんが声をかけに来る。他のメンバーは気絶している中、立ち上がって感謝を伝えられる辺り、レイナさんはワルキューレ・コードの中でも頭一つ抜けているんだろう。異世界の力抜きでこれほど強いのは、素直に賞賛したい。
また、地球のダンジョンには『ポーション』と呼ばれる回復薬が手に入る事がある。カレンさん達の傷であれば、中級ポーションを使えば治るレベルだ。購入する場合、だいたい1本100万円はくだらない代物である。ちなみに異世界の場合、回復魔法があった代わりにポーションが無かったので、そういう所は地球の方がファンタジーだ。
「戦士たちの皆、心配をかけてすまなかった」
『謝らないで!』
『レイナ様が生きてただけで嬉しい!』
『かっこよかったよー!』
「皆、ありがとう。この通り、フルールの活躍により、私たちは無事だ。これからダンジョンを脱出するので、安心してくれ」
レイナさんがコメント欄のファンたちに向けて話しかけると、投げ銭が飛び交い、レイナさんの無事を皆がお祝いした。ファンは安心だろう。ああいうの、ちゃんと真似しないといけないよな〜。まだ慣れなくて、あんまりコメント欄とはコミュニケーション取らないもんな私たち。
思い立ったが吉日。私もやってみるか。
「フルールファンのみんな〜!私たちの活躍、見てくれたかな〜?」
『リンネちゃま強すぎたよ!!』
『ワイはサーシャたんの口内ハッピートリガーに笑い止まらんかった』
『アリサ様の盾って、割と安く買える盾ですよね?どうしてカレンの盾を切り裂いた攻撃を弾けるんでしょうか⋯⋯』
『セリナちゃんのダガーナイフも安いんだよなぁ。アストラルの特製ライフルが無傷なのに、どういうこと???』
『リンネちゃまの槍もエントリーモデルのやつよ』
「⋯⋯⋯⋯みんな、応援ありがと〜!」
不味い、色々突っ込まれると面倒なこと言い始めてる。私はそれらに見ない振りを決め込み、明るい笑顔だけを返した。
私はコメント返しもそこそこに、アークデーモンの死体を回収しに行く。私がアークデーモンの死体に近付くと、脳内にアナウンスが聞こえた。
『《エリクサー》がドロップしました!』
その言葉と同時に、私の右手が光に包まれる。——そして、その手には《エリクサー》という名前の瓶が握られていた。
⋯⋯これまでも、似たような感じでアイテムがドロップした事はあった。例えば下級ポーションや、スキル強化アイテムなど。ただドロップ率は極めて低く、基本的にどのモンスターも0.1%程度と言われている。実際、私たちはまだ下級ポーション1個しかドロップしていない。
ダンジョン産アイテムの他の取得方法だと、ダンジョン内の宝箱などがある。ただこれは罠があるダンジョンにしか存在しないらしく、今いるダンジョンには宝箱が無いらしい。モンスターを倒すだけで金には困らないので気にしたことは無かったけど。
それで、だ。エリクサー⋯⋯エリクサーと言うと⋯⋯定番はあれだよな、ポーションの最上級アイテム。⋯⋯ダンジョン産のアイテムは、どういう仕組みか『知りたい』と思うと、脳内アナウンスさんが詳細を教えてくれる。相変わらず摩訶不思議なシステムだ。
《エリクサー》
効果:どんな傷、病、状態も完全に回復する。死後6時間以内かつ、脳と心臓が30%以上残った状態の死体であれば、蘇生し完全回復することも可能。肉体年齢が全盛期よりも老いている場合、全盛期の状態まで肉体を若返らせる。
うわー。終わった。とんでもないもん出てきた。え?嘘でしょ?効果盛りすぎだろ。
完全回復、死者蘇生、若返り⋯⋯。これはヤバい。絶対にヤバい。こんな物があると知られてみろ、こいつ一つを巡ってとんでもない争いが起きかねないぞ。
「お、アイテムがドロップしたのか」
そんな事を考えていると、ドローンカメラに追われているレイナさんが声をかけてきた。あ、不味い⋯⋯思いっきりエリクサー握ったままだぞ⋯⋯。
「へ、へへ⋯⋯はい⋯⋯」
「どことなくポーションに見えるが⋯⋯少し違うな」
『え?』
『は?』
『は?』
『は?』
「?戦士たち、どうしたんだ?」
『そのアイテム、配信画面から解析ツール使ったら⋯⋯エリクサーって書いてるんだけど!?』
『エリクサー!?まじ!?』
『完全回復、死者蘇生、若返り⋯⋯これは⋯⋯』
『全世界の権力者が、このエリクサー求めに来るぞ』
『前にエリクサーがドロップした時って、確か世界一の富豪、アーロンが2兆円叩いて買ったんじゃなかったっけ⋯⋯』
「うわあああああああ!!」
『今、海外配信サイトにも切り抜き上がってる』
『トレンド1位、エリクサーに更新されてる!』
『もう隠せないぞこれ』
どうしよう、バレた!!私がエリクサーを持っていることが、たった今世界中に公開されてしまった!!!!
え!?これ2兆円!?国家予算だよ!!
「うえーん!アリサー!サーシャー!セリナー!どうしよう!!」
「ヨシヨシ。大丈夫よ。えりくさー?を狙って、リンネに迫ろうとする奴がいたら、モンスターだろうが世界だろが、私が守るわ」
「そうそう!偉い人が狙ってくるとかなら、私がサクッと闇に葬っちゃうよ〜!」
「私は常に傍で見守りますね!!」
私が事の重大さに耐えきれず泣きつくと、皆が優しくあやしてくれた。セリナのは⋯⋯ちょっと洒落にならないけど。でも超得意だろうしなぁ、暗殺。
ワルキューレ・コードの皆さんも、エリクサーの重要さに恐れ、すぐ手放すべきだと進言してくれる。2兆円で売って人生上がるのも悪くないもんね。
ただ、私としてはこのエリクサーを、後2本手に入れる気になっていた。そう、アリサ、サーシャ、セリナの分だ。私は勇者の加護で不老だ。しかし、他3人はそうじゃない。となると、私が一番最後に残される可能性は高い。それは嫌だ。だから、若返りの効果があるエリクサーは確保しておきたい。私はいつまでも皆と一緒に居たいんだ。だから私は、配信上で宣言する。
「私は、エリクサーを手放しません!2兆円でも5000兆円でも売りません!無理やり奪うつもりなら、本気で反撃します!それが嫌なら、私たちにちょっかい掛けないでください!!」
『よう言った!!』
『フルールに本気で反撃されるって、一体どうなっちゃうんだ⋯⋯』
『50000円:リンネちゃまの漢気に乾杯!』
この日、世界に『フルール』の名前が轟いた。そして、これが私たちフルールの、伝説の第一歩になったのは言うまでもない。
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