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18話

 二人がドローンカメラとアークデーモンの気を引いてくれたおかげで、サーシャがカレンさんとユイナさんに回復魔法をバレずに使用することが出来た。まだ起き上がることは出来ないだろうが、とりあえずこれで死ぬことは無いだろう。


 私は、『雷神の槍』を付与した槍をアークデーモンに放つ。アークデーモンは初めて警戒の色を顔に出し、その場から飛び退いた。

 しかし残念。この槍は必中必殺なのだ。槍はアークデーモンを執拗に追いかける。そして、その心臓を貫いた。


「がはっ!?」

「うーん、やっぱこのくらいじゃ死なないか」

「き、貴様ァ⋯⋯!何をした⋯⋯!!」

『!?』

『リ、リンネちゃま!?』


 必中必殺の槍だが、弱点はある。その一つが、命が複数あるタイプの敵にはあまり強くない点だ。地球のモンスターであれば十分だったが、異世界では割とこれくらいなら平気で耐えられる化け物が何体も居た。こいつも、そういう化け物に片足は突っ込んでるんだろう。⋯⋯片足の爪先レベルだが。


「丁寧語が崩れてるよ、悪魔さん」

「答えろォ!!」

「何をしたも何も、ただ槍投げて、あなたが避けきれなかった。それだけでしょ?」

「⋯⋯わ、私を愚弄するなァ⋯⋯人間風情がァ!!」

『あれ、おかしいな⋯⋯何か悪魔、狼狽えてないか?』

『え、嘘だろ?こないだスキルに覚醒したJKだよな?』


 アークデーモンが爪を立てて襲いかかってくる。それをアリサが盾で弾いた。アリサの盾は安いやつだが、アリサの技量であればアークデーモンの攻撃をパリィすることが可能だ。これも、卓越した能力があってこそだ。


「何ィ!?」

「そんな大振りな攻撃で⋯⋯舐められたものだ」

『アリサ様すげえええええ!!』

『カッコよすぎる!!』

『私決めた。アリサ様と結婚します』

『は?アリサ様と結婚するのは私なんですけど』


 アリサはそう言うと、アークデーモンの首を一撃で切り落とす。即座にアークデーモンは肉体の全てを蝙蝠に変え、私たちから距離を取って集合、集まった蝙蝠は再びアークデーモンの形を取った。しかし、首を切られたダメージは無視できなかったのか、その顔には疲弊が色濃く映っている。


「クソ、クソがァ⋯⋯!こんな、こんな筈では⋯⋯!供物が、供物が足りぬゥ!!」

「はいはい。負け惜しみお疲れ〜」

『速すぎ速すぎ速すぎ!!』

『なーんにも見えなくて草生える』

『セリナちゃんの解体ショー』


 アークデーモンが息を整える間もなく、懐に潜り込んだセリナのダガーナイフが、アークデーモンの両手両足を切り落とす。このダガーナイフも安物だが、セリナほどの達人であれば、どこにどう刃を入れれば相手を切断できるか、簡単に分かる。スナイパーライフルの銃弾さえマトモに傷を付けられなかった肉体に、無数の傷を刻み込む。


「え、えーい!」

『掛け声可愛くて草』

『うーん、パンチ力は可愛くないみたい⋯⋯』

『サーシャたんは癒し系、そう思っていた時期が僕にもありました』


 自分にのみ行使可能なバフ魔法をしこたまかけたサーシャが、アークデーモンにステゴロを仕掛ける。四肢を失くしたアークデーモンに対して、その殴打の尽くがクリーンヒットする。その勢いのまま、アークデーモンを押し倒して馬乗りになると、その口に自動小銃(アサルトライフル)を突っ込み、引き金を引いた。激しい閃光と炸裂音が、アークデーモンの体内から響く。体内に鉛玉をぶち込むとは、相変わらず見た目によらないワイルドすぎる戦い方である。


 堪らず、アークデーモンは再び肉体を蝙蝠に変換し、休ませているカレンさん達の所へ向かう。人質を取るつもりか。させるわけ無いだろう。


 私は瞬時にカリンさん達を庇える箇所まで移動すると、槍を超高速回転させる。


「『雷域』」


 槍から電撃が漏れ出ると、私を中心として、空間が私の雷に包まれる。そして、蝙蝠に変化したアークデーモンの肉体を、無数の雷が捕らえた。


「ぐあああああっ!?」


 雷域でこのまま倒し切っても良いのだが、もう少し暴れさせてもらいたいので、ワルキューレ・コードに危害を加えられないようフルールで四方を囲むと、私は魔法を解除した。


「っ!⋯⋯はぁっ!はぁっ!」

「卑怯な真似しようとしたって、私たちが許さないよ」

「ぎ、ぎぎぎ、ぎぃぃぃぃぃっ!!」


 再び人型になったアークデーモンだが、体の一部が欠損していたり、あちこちから血を流しており、本体にも十分なダメージが通っていることが伺える。

 アークデーモンは奇妙な呻き声を上げると、破れかぶれで私に接近してきた。どうやら私が一番弱いと判断したらしい。まぁ私だけステータスのゴリ押しで、隙が一番多く見えたんだろう。実際、近接戦闘のステータスは、現在サーシャ以下だろうし。


 が、残念。私の本職は槍使いではなく魔法使いだ。そして、アークデーモン程度なら本気で魔法戦を仕掛ける必要は全く無い。お遊びの槍戦で十分だ。


「それそれそれそれ!」

「ぬ、ぬぅぅぅ!死ねェ!死ね、化け物がァァァ!!」

『まだ速くなるの!?』

『す、スゲェ⋯⋯レイナ様の突きを遊びみたいに止めてた悪魔が、速すぎて追いつけなくて穴だらけだぞ』

『マジで何者なんだ、この子達⋯⋯』


 私の槍がアークデーモンの肉体を貫く度、アークデーモンは苦しそうな声を上げる。これが熟練の騎士であれば、アークデーモン程度のステータスでも私の槍なんか当たるわけが無い。しかしコイツは私と同じ、ステータスに物を言わせて相手を甚振っていたやつだ。ならば、更にステータスで上回る私が負けるはず無い。


「『雷纏』」


 自身の肉体に電流を流し、肉体能力を更に向上させる、私の持つ数少ないバフ魔法を発動する。どういう原理なのか、全く痛くない。ファンタジー様々だ。

 更に速くなった私の槍は、アークデーモンを貫いて貫いて貫きまくる。蝙蝠に変わろうが、その蝙蝠も突き殺し、逃走も再生も許さない。


「最後!!皆行くよ!!」

「分かったわ!はぁっ!」

「みじん切りだよ!そりゃっ!」

「えーい!えーい!喰らってー!」

「ふざけるな、ふざけるなァー!化け物共がァー!!!」


 私の槍、アリサのロングソード、セリナのダガーナイフ、サーシャの拳が同時に襲いかかり、アークデーモンは断末魔を上げて倒れた。


 こうして、私たちは史上初めて——DIVEの配信上で、『特級』のモンスターを討伐したのだった。

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