14話
「まぁこんなものだな」
レイナさんが剣を鞘に収めると、コメントをお知らせする音が多数鳴り響く。
『5000円:今日もカレンの猪突猛進、最高だぜ!!』
『5000円:レイナ様の美しすぎる剣技⋯⋯見蕩れてしまいます!!』
『5000円:今日も必中のミラで堪らん』
『5000円:おいおい、ユイナちゃん推しは俺だけか?ユイナちゃんのバフあってこそだろ』
コメント欄も大盛り上がりだ。私は、精一杯の拍手をワルキューレ・コードに送る。さすが、探索者等級2級——上から2番目なだけあるね。
「やっぱ、アストラル製品は一味違うな!」
カレンさんが、白金の盾を良く見えるように掲げる。盾には株式会社アストラル・ディフェンス——ワルキューレ・コードのスポンサー企業——のロゴが、キラリと輝いている。こういう所で、随時販促を行う決まりなのだろう。実際、アストラル製品はかなり高い売れ行きらしい。見た目も煌びやかだし、高くても欲しがる人は多そうだ。
「次はフルールの番だな。行けるか?」
「はい。任せてください!」
そう言った私たちは、新たなミノタウロスの群れを見つける。今回は五体いる。結構数はバラバラらしい。
「それじゃ皆、いつもの行こう!」
『了解!!』
いつものとは、サーシャの加護——という名のバフ魔法、全能力向上——を発動後、私とアリサとセリナでミノタウロスを各個撃破する作戦だ。
「いきます!加護!」
「加速!」
『身体強化!』
毎度毎度、スキル発動の発光エフェクトっぽく皆を光らせるのも楽じゃないよ。そう思いながら、私たちはそれぞれミノタウロスに接近する。火力の乏しいセリナが1体、私とアリサが2体ずつだ。
と言っても、私は異世界では魔法使いだったため、あまり筋力や俊敏性のステータスは高くない。近接戦闘経験も、日本に帰ってからの方が多いくらいだ。なので、私にはサーシャが自動小銃で支援してくれる。
まずはサーシャの銃弾がミノタウロスに迫る。が、それはミノタウロスが斧を使って防いだ。まぁ安物の自動小銃が4級推奨のモンスターに効くわけ無いか。
しかし十分気は逸らせたようだ。ミノタウロスの足元まで来た私は、安物の槍をミノタウロスの右足に突き刺す。すかさずもう一つの槍を魔法袋から取り出し、今度はそれを左足に突き刺した。
「グオオオオオオ!!」
「はいはい!」
ミノタウロスは足を地面に固定され、不自由さと痛みで雄叫びをあげる。その隙に、ミノタウロスの頭部まで跳躍し、その角を両手で掴んだ。
「せーの!」
後は簡単。ステータスに物を言わせ、魔法で強化した状態で首をねじ曲げる。我ながらサーカスみたいで、結構派手な倒し方ではないだろうか。
首が変な方向に曲がったミノタウロスは、その場に倒れ伏せる。素早く足元に突き刺した二本の槍を引っこ抜き、もう一体のミノタウロスを睨んだ。
うーん、次はどう倒したら派手かなぁ⋯⋯。あ、そうだ。
「『雷神の槍』」
誰にも聞こえないよう、ボソリと魔法名を詠唱する。雷神の槍は、異世界の神様の一柱が使えるとされる強力な魔法だ。槍に強大な雷属性を付与し、その槍は必中必殺の効果を得る。また、対象を貫いた後、必ず自分の元に帰ってくる性質を持つチート技だ。魔力消費量が多いのと、他の魔法を使う方が効率良いので、異世界ではあまり使わなかった魔法なのだが、こっちなら十分だろう。
「はい、行くよー!」
私は『雷神の槍』が付与された二本の槍を両手で同時に投げる。二本の槍は微かに雷を纏い、螺旋を描いてミノタウロスの心臓と脳天を貫いた。それにより即死したミノタウロスは倒れ、役目を終えた二本の槍は私の手元に返ってくる。
中々派手な演出が出来たんじゃなかろうか。これは私の神業的な槍術が成せる技です、という顔を崩さないようにしよう。なんだよ神業て。
一息吐いたところで、アリサとセリナの方に目を向ける。二人とも、ド派手にミノタウロスを倒したようだった。やはり人気を得るには魅せプが大事だよね。
「よーし!私たちの勝ちだー!」
「ま、当然ね」
「牛頭くんも弱かったねぇ」
「私はライフル弾が効かなくて残念でした」
「サーシャのアシストあってこそだよ!ありがと!」
私たちは勝利のハイタッチを交わす。これがフルール戦闘終了時のお約束だ。
『5000円:サーシャたんの狙撃、最高だったよー!ありがとうー!』
『5000円:アリサ様の剣さばき、やはりとんでもないです!』
『5000円:セリナちゃんのミノタウロスみじん切りも凄まじかったな⋯⋯今日はハンバーグにしようかな⋯⋯』
『5000円:リンネちゃまってエンハンス持ちだよね?コンバット持ちでも出来ないような投槍かましてなかった?』
『10000円:やはりフルールは最強!!!』
よしよし、コメント盛り上がってるな。同時接続者数も12万人を突破しているし、投げ銭もぽんぽん飛んでいる。
ハイタッチを終えた私たちがワルキューレ・コードの方々の所に戻ると、先ほどの戦闘を褒めてもらった。誰かに褒められるのって、何回でも気持ちがいいものだ。ありがたい。




