10話
「うお、あれ⋯⋯」
「美しすぎる⋯⋯俺、この高校入って良かった⋯⋯」
「ねえ、あれ本当に私たちと同じ性別、同じ生物⋯⋯?嘘でしょ⋯⋯?」
「女神様⋯⋯」
校門に入ると、私たちを見てくる視線が増える。なぜ私まで⋯⋯と思っていたのだが、最近原因に気が付いた。異世界でレベルアップした時に魅力のステータスが上がっていたのだ。そのせいで、帰還者前と後で周囲からの扱いが全く違う。端的に言えば、爆モテ人生に突入している。恐るべし、異世界召喚⋯⋯。
なんだか悪いので、私たちを見ながら道を開けてくれる方々に会釈をしつつ、私たちのクラスへ歩を進める。ちなみに、全員別のクラスだ。姉妹だから当たり前だけど。
異世界娘三人衆とは自分のクラスである3-A前で別れを告げ、自分の席へ腰掛ける。
つい1ヶ月前まで普通に接していたクラスメイト達が、男女問わず私に熱い視線を送ってくるのだが、こうなってみると生きづらくて仕方ない。誰彼構わず爆モテする人生ではなく、好きな人と結ばれ、他の人からはほぼ空気のように扱われる人生が一番良いのだと知った。
だいたい、私の顔はそこそこ可愛いくらいで、あの子たちと釣り合うレベルじゃない。というのに、魅力値のせいでこんな状況になっているのだ。魅力値を下げるアイテムなど無いか探したが、見つけることができなかった。
突如生きづらくなった現実に、朝から自分の席で大きな溜め息をつくと、誰かが私の背中をバシンと叩く。
「おはよー!凛音!でっかい溜め息なんか吐いて!ダンジョン疲れか〜?」
「桜か。おはよ。別に、ちょっと人の目に疲れただけ⋯⋯」
「そりゃあんだけ人気の配信者になっちゃった訳だし、まー仕方ないんじゃない?」
「仕方ない⋯⋯仕方ないんだけどさ⋯⋯」
彼女は私の数少ない友人である渡会桜。帰還後も帰還前と同じように接してくれる、私にとってかけがえのない存在である。
こうなってしまったのは、私の魅力値が上がったのも大きな原因の一つだが、桜の言う通り配信業も大きな原因だろう。まさかこんなにバズるとは思わなかったのだ。そこそこ人気になって、知る人ぞ知るくらいで探索者は引退。ダンジョン関係ない配信プラットフォームに視聴者を誘導し、普通に働きながらちょこちょこ副業として配信して小遣い稼ぎ⋯⋯なんて所が理想の終着点だったのに。
私の承認欲求では捌ききれないくらいの認知度をいただいてしまった。完全に計算外である。南無三。
「いいな〜私もダンジョン行きたいな〜」
「桜は誕生日まだ結構先でしょ」
「11月22日、いい夫婦の日だよ!」
「覚えやすくて良いね。私も5月5日で、こどもの日だから覚えやすいけど」
「早く18歳になって、スキル覚えて、それでダンジョンを無双したい!!」
「頑張れ〜」
「わ〜!凛音が適当だ〜!許せない!凛音だって、スキル覚えるまでは普通だったのに、スキル覚えてからダンジョンで無双してるじゃん!」
「ま、まぁ、運が良かったというか、なんというか⋯⋯」
私は帰還者のスキルを偽装し、身体強化を持っていることになっている。異世界で武術の研鑽を積まなかったことが幸いし、今の私の戦闘スタイルはリアリティがある。要するに、身体強化スキルだけで敵を倒せてるような感じが出せているということだ。
だから桜も私と同じように、身体強化のようなスキルさえ芽生えれば、ダンジョンでブイブイ言わせられる、と思っているのだろう。実際そういう人もごく稀にいるが、そんなに多くはない。桜も戦ってみれば分かるだろう。
なお、スキルにはレアリティがあるが、同じスキルでも出力は人によって大きく異なる。身体強化は特に分かりやすく、全ての身体能力が1割増し程度の者もいれば、10倍以上まで強化される者も居る。これはある程度才能によるところと、研鑽によるところがある。
私は才能全開という設定で、身体強化の倍率は10倍〜100倍程度で抑えるつもりだ。異世界のステータスで照らし合わせると、身体能力系のステータスは、帰還時にちょうど勇者召喚時の100倍くらいのステータスになっていたので、そんなに違和感無い筈だ。
「良いな〜私も身体強化スキルが欲しいな〜」
「スキル無しもそこそこ有り得るんだから、あんまり期待しすぎない方が⋯⋯」
「夢はでっかく、だよ!」
「桜のそういう所、素敵だよね」
「!?ほ、褒めすぎだって!」
桜がバシンバシンと背中を叩く。そんなに照れなくても良いのに、と思うが、可愛いやつだ。




