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第9話 浄化部隊

POV:サラ


白の都では、誰もが役割を持っていた。

教官たちはそう何度も何度も繰り返し叫び、その言葉は消えない反響のように子どもたちの脳裏へと刻み込まれていった。サラ、リンネ、そして何百人もの子どもたちは、その前提のもとで育てられた――役に立て、という命令のもとで。


孤児が支援を受けられるのは八歳までだった。その年齢に達しても養子に引き取られなければ、強制的に防衛部隊へ送られる。選択肢など最初から存在しない。他に道がない以上、押し付けられた運命を受け入れるしかなかった。


「覚えておけ!」

しゃがれた声で教官が怒鳴る。

「この世界は腐っている。だが、それはお前たちの罪じゃない。悪いのは、存在するだけで大地を汚す、あの忌まわしい連中だ。感染者は人間じゃない、害虫だ。お前たちには、この世界を浄化する義務がある」


サラとリンネ・スターリングは、その思想を脳に焼き付けられて成長した。恐怖や苛立ち、怒りを覚えるたびに、感染者への憎悪はより強くなっていった。洗脳はあまりにも徹底していて、両親の記憶でさえ、嫌悪の色に染まっていた。


彼らは弱く、汚染され、そして「純粋さ」の名のもとに切り捨てられた。慈悲の入り込む余地などなかった。

それでも、時折、その作られた外殻がひび割れることがあった。


「サラ、行かないで……」

リンネが一度だけ、私が永遠にいなくなると信じ込んで、そう囁いたことがある。


「リンネ、ちょっと気を失っただけよ。大丈夫。どこにも行かない」


妹が酷い扱いを受けるのを見ると、いつも腹が立った。だから教官が「リンネは基準に達していない」と言ったとき、私は激昂した。本物の教官なら生徒を導くべきで、貶めるべきじゃない、と怒鳴りつけた。そんな態度は職務に対する恥だ、と。


返ってきた答えは、「特別授業」だった。

その授業の内容は、私が意識を失うまで殴り続けること。


そして今、私は医療センターの簡易ベッドの上にいた。


リンネの瞳に浮かぶ不安を見た瞬間、羞恥が胸を締めつけた。妹を守ろうとして、かえって余計な心配をさせてしまった。彼女を苦しめてしまったことが、悔しくて仕方なかった。


「大丈夫よ、リンネ。もう少し耐えればいいだけ。成人したら休暇がもらえるって約束されたでしょ。外に出て、何も気にせず青い空を見られるんだって」


「あなたがいない休みなんて、いらない……」

リンネは涙を拭いながら、そう言った。


「言ったでしょ、リンネ。何があっても、私たちはずっと一緒。たとえ何かあっても、必ずあなたのところに戻る」


「……うん、分かってる。お姉ちゃん」


リンネは一瞬だけ言葉をためらい、唇を噛んだ。


「お姉ちゃん……もう一つ、言いたいことがあるの」


「なに?」

私は片眉を上げた。


「あなたが倒れたとき、何人かの男の子が笑ってたの……でも、ジョンっていう男の子がかばってくれた。教官に逆らったあなたは勇敢だって。これ以上笑うなら、自分が相手になるって言ってくれたの」


私は肩をすくめた。


「へえ……まあ、あとでお礼は言っておくわ。笑われるのは別に気にしないし」


けれど振り返ると、リンネの頬が赤く染まっていた。


「……すごく、かっこよく見えた」

小さく囁く。

「好き、かも」


私は言葉を失った。

こんなにも早く、妹が恋に落ちるなんて。あの少年とは数回話したことがあるし、どちらかといえば私に興味を示していた気がする。リンネと親しいわけでもなかった。


「えっと……まあ、うん。きっとすぐリンネのことを見るようになるわよ」

夢を壊さないよう、即興で答えた。


「本当!? 手伝ってくれる?」


「もちろん。私たち、姉妹でしょ」


安心させるために微笑んだ。

でも心の奥では分かっていた。私たちは誰一人、愛が何なのかを知らない。健全なそれが、どんな形をしているのかも。リンネの中に芽生えたばかりのその感情は、やがて歪み、ねじれ、かつては無垢だったかもしれない何かの、歪んだ残骸へと変わっていく。


◇◇◇


年月は流れた。

幼少期はぼやけた記憶となり、代わりに疑問を挟む余地のない規律、命令、訓練がすべてを埋め尽くした。十五で新兵教育を終え、十九の時点で、私たちは正式な兵士になっていた。


浄化部隊に、他の選択肢は存在しない。

夢も、感情も、疑念さえも根こそぎ引き抜かれ、代わりに叩き込まれたのは、三つの絶対命令だけだった。


――発見せよ。

――排除せよ。

――浄化せよ。


そして私たちは、一切の躊躇なくそれを遂行した。

考えすぎることは、許されない贅沢だった。


壁や床には、淡い桃色の染みが広がっていた。

この場所に、疫病が長い年月にわたって根を張っていた証だ。


任務のない時、ふと考えることがあった。

――これも、いつか終わるのだろうか、と。

だが現場に立てば、疑う理由などどこにもなかった。


かつて人間の居住地だった場所に、今残っているのは、人間を名乗る廃棄物だけ。


私たちの姿を見た瞬間、悲鳴が上がった。

甲高く、ひび割れた声。まるで、まだ自分たちが人間だと信じているかのように。


「お願いだ! 危害を加えるつもりはない! ただ、生きたいだけなんだ!」


そのうちの一体――背を丸め、汚れた包帯で、かろうじて残った尊厳を覆っている存在――が、必死に訴えていた。

女……だったのかもしれない。

でも、そんなことはもう、どうでもよかった。


――こいつらはただの疫病。

――同じ世界に生きる価値なんてない。


そう教え込まれてきた。


――狙え。引き金を引け。

――弾を無駄にするな。


引き金を引いた。

銃弾は紙を貫くように頭部を撃ち抜き、そいつは一瞬で動かなくなった。


疫病が、一つ減った。


「前進を続けろ!」

開けた通信回線越しに、ジョンの声が響く。

「まだ隠れている。まるで、ネズミみたいにな」


かつて妹が恋をしたあの少年は、いつの間にか、私たちの上官になっていた。


私たちの小銃は、ピンクの疫病に汚染された環境での使用を前提に設計されている。

一方で、彼らにできることは、石を投げるか、叫ぶか、命乞いをすることだけ。

それで助かると、本気で思っているのだろうか。


部隊は全部で七人。男が四人、女が三人。

今回の任務には、十分すぎる戦力だった。そのうち六人は、幼少期からこの仕事のために育てられている。


例外はナオミ。

私と妹リンネの推薦で入隊した少女だ。正直、最初は期待していなかった。

それでも彼女はここまで生き延び、任務の成績も悪くなかった。


私たちは躊躇なく、ピンクの疫病を排除していった。

必要不可欠な役割を果たしている。

それなのに、清浄な都市の中では、人々は私たちを避けた。


死体よりも念入りに、消毒される。

まるで、ウイルスが良心にまで付着するかのように。


――もし、こいつらが存在しなければ。

――妹は、普通の女の子として生きられたのに。


その集落を、何時間もかけて浄化した。

作業が終わった頃には、脈のあるものは何一つ残っていなかった。


「区域クリア」


「確認。焼却プロトコルを開始せよ」

ジョン――隊長の命令だった。


死んでいても、問題は終わらない。

携行型焼却装置を起動する。


それは小型で、射程も短く、通常の戦闘には不向きだ。

だが、痕跡を残さず、肉体を灰に変えるには最適だった。


中には、すでに命を失っているはずなのに、なお痙攣するものもいた。

吐き気を催す光景。

それは、私の嫌悪感をさらに強めるだけだった。


浄化できるものは、すべて浄化した。

誰一人、疑問を抱くことはない。初めてではなかったし、これが最後でもないと、分かっていた。


任務を終え、私たちは都市へ戻った。

巨大なゲートが開き、除染エリアへと進入する。


汚染区域専用に設計された車両は、簡易的な洗浄だけで済まされた。

だが、私たちは違う。


完全なプロトコルを通過する。


[スキャン中……]

・曝露レベル:高

・スーツの完全性:確認


スキャンは、防護服に損傷がないかを確認するものだ。

私たちは、Rウイルス――ピンクの疫病の残骸にまみれた状態で戻ってきている。

もしスーツに破損があれば、ここに辿り着く前に「問題を解決せよ」という命令が下っていただろう。


続いて化学洗浄。スーツを着たまま行われる。

薬剤は強力だが、素材は耐える。

削ぎ落とされるのは、疫病の痕跡だけ。


最後に、義務的なシャワー。


外界と直接接触していなくても、清浄な都市に足を踏み入れる前には、身体を洗浄する必要があった。

使われる薬品は皮膚を焼くように痛むが、誰も文句は言わない。

それもまた、プロトコル。

ただの、日常。


そして、蒸気と消毒液に包まれたその空間で、私はいつも、ほんのわずかな安らぎを見つける。

リンネが、そこにいるから。


「今週末、どうするの?」

隣のブースからリンネが声をかけてくる。水音に遮られているはずなのに、彼女の声を聞くだけで、心が落ち着いた。


「いつも通りよ。散歩したり、外で何か食べたり……あとは、マルクスと過ごすくらい」


妹とは違い、私は一応、安定した関係を続けていた。

それを、彼女に負い目として感じさせたくはなかった。


正直に言えば、マルクスは容姿も整っているし、白の都の第二層に住んでいる。

でも、私が本当に気に入っているのは、彼がリンネを大切にしてくれることだった。


短い沈黙。

水がブースを叩く音だけが、規則正しく響く。


「……また一緒に行ってもいい?」

不意に、彼女の声が弾んだ。

「この前、悪くなかったし」


「いいわよ」

私は微笑んだ。マルクスも、特に気にしていない。


曇ったガラス越しに見えるリンネのシルエットは、驚くほど私と似ていた。

長い金髪、白い肌、私と同じ灰色の瞳。

鍛え上げられた、引き締まった体。


けれどリンネは、いつも私よりも生き生きとして見えた。

あの訓練中に泣いていた幼い少女は、もう遠い過去に置き去りにしたかのように。


「……リンネ」

私は完全には彼女を見られないまま、声を落とした。

「一緒に来るのは構わないけど、分かってるでしょ。マルクスのこと、好きじゃない」


「当然じゃない」

くすっと笑って答える。

「でも、退屈しないし。それに、ジョンが知ったら……もしかしたら、私のこと気にしてないふり、やめるかも」


彼女はブースのガラスにもたれかかり、独り言のように続けた。


「マルクスは、私の気持ちなんて全然気づかない。ジョンは、最初から最後まで無視。

でも、サラはいつも私のそばにいてくれる。それが……それが、すごく嬉しいの」


私は、彼女を置いていくつもりなんてなかった。

最初から、その選択肢は存在しない。


三つ目のブースから、ナオミが控えめな声で割って入る。

淡い青色の髪と瞳を持つ少女だ。


「姉妹はいないけど……二人は、ちょっと近すぎる気がする」


「だって、ずっと何もかも一緒だったんだもん!」

リンネは即座に言い返し、すぐに悪戯っぽく付け加えた。

「ナオミもよかったら、サラを説得して、三人でマルクスと遊ぶ?」


「遠慮する」

ナオミは彼女を見ようともせず、そう答えた。

必要以上に強く、消毒液を肌に擦り込んでいる。


「損してるよ~」

まるで遊びのように、リンネは歌う。


私は黙っていた。


ナオミは「普通の生活」を望んでいる。

争いもなく、感染者を排除する必要もない日々を。


私たちとは違い、彼女は幼い頃からピンクの疫病という汚物を駆除するために育てられたわけじゃない。

ただ、兄が愚かなことをした。その代償を、彼女が払うことになっただけ。


だからこそ、リンネと私は彼女を部隊に推薦した。


借りは、もうすぐ返し終える。

そうすれば、彼女は「普通」に戻れる。


――その感覚が、私にはよく分からなかった。

たぶん、私は一度も「普通」を生きたことがないから。


それでも、ナオミは信頼できる。

だからリンネの友人になることも、私は受け入れた。

彼女の中にある何か――その「普通」が、妹に少しでも伝染してくれればと、どこかで期待していた。


リンネは、私たちがまだ子どもだった頃からジョンに想いを寄せていた。

だが、あの男は一度も彼女を見ようとしなかった。


任務では彼の命令に従わなければならない。

それでも、任務外では、どうしても嫌悪感を抑えられなかった。


今のリンネは、愛のために誰かと関係を持とうとしているわけじゃない。

快楽ですらない。

ただ、ジョンを苛立たせるため。

自分に一切の興味を示さなかった男を、挑発するため。


私は、彼女が何をしているのか分かっていた。


それで気が紛れるのなら、マルクスを少し共有するくらい、どうでもよかった。

結局、リンネの幸せのほうが、どんな関係よりも大切だ。


正しいやり方を教えてあげたい。

でも、私自身がそれを知らない。


だからこそ、ナオミのような人間と、もっと関わってほしいと思う。

浄化部隊に属していることなんて、気にしない人間と。


私は二人より先に終え、除染モジュールを出て医療管理室へ向かった。

簡易スキャンだけ。実質的な検査というより、形式的なものだ。


人工の空は、いつもと変わらない。

記録によれば、何十年も前に存在していたという「青」を、清潔に模したもの。


夜になれば暗くなり、朝になれば明るくなる。

寸分違わず、同じサイクル。


すべてが、正常に見えた。


浄化作戦の回数は減っていた。

それが、私を安心させることはなかった。

むしろ、苛立たせる。


任務が減るということは、停滞する時間が増えるということ。

待つ日々が長くなるということだ。


――あれらが、まだ外にいる間に。

――リンネと私が、同じ世界で生き延びようとしている間に。


私たちは、決して本当の自由を手に入れられない。

この偽物の空は、その何よりの証拠だった。


「……全部、消してしまえたらいいのに」

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