はじめての「おはよう」
翌朝。
結衣は目を覚ましてすぐ、枕元のスマホをつかんだ。
画面を開くと、昨夜の浩太とのメッセージが並んでいて、胸の奥がふわりと温かくなる。
(……彼氏かぁ)
呟くだけで頬が熱くなる。
昨日まではただのクラスメイトだったのに、たった一日の差で世界が変わるなんて不思議だ。
と、そのときスマホが震えた。
《おはよう。昨日、全然眠れなかった。今日、迎えに行っていい?》
「……え?」
心臓が跳ねた。
まだ寝癖もついているのに、そんな状態で会っていいのだろうか。
でも、来てほしい気持ちのほうが大きかった。
《うん。家の前で待ってて》
送信した瞬間、胸の奥がくすぐったくなる。
家の前で待つ彼氏
玄関のドアを開けると、朝の光の中に浩太が立っていた。
髪がいつもより整っていて、制服も丁寧に着ている。
「……おはよう、結衣」
「おはよう……浩太」
言葉を交わしただけで、昨日の手の温もりが蘇ってくるようだった。
「なんか……今日の結衣、可愛い」
「は!? 朝からそういうこと言わないでよ!」
「いや、ほんとに思っただけ」
照れて赤くなる結衣を見て、浩太は嬉しそうに微笑む。
「歩こっか。学校まで一緒に」
自然に差し出された手。
結衣は少し迷いながらも、その手を握った。
その瞬間、朝風よりもずっと優しい暖かさが指先から伝わる。




