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告白のあとで
放課後のチャイムが鳴り響いてから十五分。
夕日に染まった校庭の隅、古い桜の木の下で、結衣はまだ胸の鼓動が落ち着かないでいた。
──好きです。よかったら、付き合ってほしい。
つい数分前、浩太が伝えたその言葉が、結衣の中でずっと反響している。
返事をする声が震えたのは、きっと浩太にもバレていた。
「……なんか、まだ信じられないね」
横で浩太が照れくさそうに笑う。
結衣はうつむいたまま、ぎゅっと制服の袖を握る。
「うん……私も。だって、今日カップルになったばっかりだよ?」
「今日でも、さっきでも、関係ないけどね。俺はずっと結衣が好きだったから」
ストレートな言葉に、また心臓が跳ねた。
会話の間に流れる沈黙すら、どこか心地よい。
「このあと、ちょっと歩かない? 帰り道、いつもよりゆっくり」
「……うん」
二人は家とは少し違う方向へ歩き出した。校舎から離れると、蝉の声が遠くなり、代わりに夕風のやさしい音が聞こえる。
今日から、世界の色が変わって見える気がした。




