6
あ、そうそう、僕にこのクソみたいな名前をつけやがった恩人の女旅人さんは、
(ホーロビル中央病院に到着してからすぐ)
【????】「…あ、そういえばぷりちぃぷりぷりキュンキュンぷんぷんゾンくん、まだ私の名前を言ってなかったね?♡♡♡
…私はエラノア。 よろしくね?♡♡♡」
僕「…よろしくお願いします。エラノアさん。そして一言いいですか?」
エラノア「ん?♡♡ なぁーに?♡♡♡ 愛の告白?♡♡♡」
僕「……その名前マジで嫌なんですけど。やめてくれません?」
エラノア「…えぇぇええ〜!!! なんでぇぇ〜??かわいいじゃぁぁん♡♡♡♡♡
ぷりちぃぷりぷりキュンキュンぷんぷんゾンくん♡」
僕「本気で言ってるんですか??ゾンビの僕よりも目や耳、そして感性が腐ってるんじゃないんですか???」
エラノア「そんなに褒めてもお姉さんからはキスしかあげられないぞぉ?♡♡♡♡」
僕「うっわ!拷問!!」
エラノア「…ってことで改めて、これから一生よろしくね?♡♡♡
ぷりちぃぷりぷりキュンキュンぷんぷんゾンくん♡
書類とかもその名前にしておいたから♡♡♡♡」
僕「うっわ!!最悪!!!」
…というのが一昨日。治療はこの会話の後に行われた。
この世界の医療技術というか、治療法はとてもわかりやすい。
治癒魔法士が患部に治癒魔法をかけ、患者には薬草をたらふく食べさせる。というものだ。
なんと麻酔を使わないので、目の前でどんどん新しく足や鼻が生えてくるのだ。
新しい足がどんどん生えていく光景は新鮮で面白かったが、もちろん新感覚な痛みがずっと続くので、最初は悶絶するほど痛かった。しかし、だんだんと慣れていくと、タンスの角に小指をぶつけた後、よろめいたときにブロックのおもちゃを踏んだときのような痛みが続いた。まだそのほうがマシだ。
…とはいえ、僕の身体の損傷はひどく、エラノアさんが言っていたように、なぜ生きているのか不思議がっていた。
病院の先生たちはどうにかして僕を完治させようと、なんとこの国中の治癒魔法士を全招集し、全勢力で僕を治療した。
どうしてゾンビの僕を完治させようとしてくれたのか聞いたが、
担当医「そりゃあこんなべっぴんさんが亡くなったら、誰だって悲しむに決まっているでしょう。
なぜかはわかりませんが、私達はとにかく貴女を元気にしてあげたかった。それができるのなら、費用など必要ないとも思いました。
そして、私達は実際に貴女を完治できた。死ぬほど嬉しいのです。
このような感動を与えてくれてありがとうございます。
費用は本当に不要です。これからもどうか、末永く元気にお過ごしください。」
…と、僕の目と胸をチラチラみながら、鼻の下を伸ばして話していた。
なぜこの人は僕のことを女性だと勘違いしているのだろう?
というか、エラノアさんは僕のことを年頃の男子と認識していたのに、僕が先生から女性と勘違いされても、エラノアさんはなにも疑問に思わなかったのだろう?
明らかに矛盾しているのに、どうして誰も疑問に思わないのだろう?
……ここで僕は、ある実験をしてみた。
ありとあらゆる人に声をかけて、どんな反応をするのか見るのだ。
とあるおっさんは、担当医の先生と同じ反応を示した。
とあるおばさんは、
とあるおばさん「こ…こんなイケメンなお兄さんに声をかけられるだなんて…♡♡
私もまだまだイケるってことかしら……♡♡
で…でもごめんなさいね…?お兄さん…♡♡私には夫と息子夫婦がいるの…♡♡
だから…そのナンパには乗れないわ…♡♡♡」
…つまり、僕をイケメンの好青年と認識した。
…
小さい男の子は、この様な反応を示した。
小さい男の子「……お姉ちゃんのお胸大きい!!♡」
…つまり僕を豊胸な女性と認識した。
…あるお兄さんは、この様な反応を示した。
お兄さん「…ねぇ…?♡ 君かわいいね…♡ ……どうして男の子なのに、そんなにかわいいの…?♡♡
ガブッて食べちゃっていい…?♡♡」
…つまり僕を男の娘と認識した。
……と、このように、人それぞれ似た反応はあったが、中には僕のことを獣人と思う人もいれば、無機物と捉える人もいた。
つまり、人それぞれ反応がバラバラなのだ。
しかし、共通点は4つ。
1つ目、誰も僕のことを、ゾンビだと認識しない。
2つ目、僕がどんな姿形であれ、僕と関わった人間は全て、僕に対して性的興奮や性的欲求を示した。
3つ目、みんなそれぞれ違う反応を示すのに、誰も姿形が変わる僕に対して疑問に思わない。
4つ目、僕の要求に対して、二つ返事ですぐに応えてくれる。そのかわり必ず頬にキスをするように求められる。
例えば先ほど紹介した男の子に、彼が持っている飴玉を全てほしいというと、
男の子「…いいよ!!!♡♡♡♡」
と、すぐにくれた。そしてその後すぐに、
男の子「お返しにここ♡(頬に指をさす)ちゅーして?♡♡」
この要求に応えてあげると、すぐにその場でトロけた笑顔になり、数分間そのままの状態で固まる。
逆に応えないようにすると、
男の子「そ…そんな…どうして…?ねえ、なんで?やだ。お願い。あ、もっと飴玉ほしいの?わかった。すぐに持ってくる。なんでもする。だからお願い。ちゅーして。ねえ、お願い。ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ……」
…と、ちょっと怖い反応を示す…
その後にまた、その要求に応えると、通常よりも長時間、というよりほぼ半日以上トロけた笑顔で固まる。
…怖いのがこの状態で固まっているのに、だれも声をかけず、そのまま本当に何もないように素通りするのだ。
というか本当に認識できていないのかもしれない。
とにかく怖いのでこの男の子から後は、すぐに頬にキスするようにしている。
………ということでこの結果を踏まえての僕の考察だ。
…おそらくこれは僕のスキルかなにかなのだろう。
明らかに都合が良すぎる。怖い。
承認欲求が強過ぎる人にはオススメのスキルなのかもしれないが、僕は普通に恐怖を感じるので滅入っている。
…話を戻して、この異常事態が、僕のスキルによる影響なのだと仮定しよう。
人間と魔物以外の存在にも作用するのだろうか?
軽い要求しかしていなかったが、もし、財産分与や地位譲渡、最悪の場合、自死をするように要求しても、そのような普通では考えられない行動をしてくれるのだろうか?
……確かめたいところだが、ゾンビの僕だけではどうしても行動範囲に制限がある。
ここは一か八か、この謎のスキルを使って、移動手段や仲間を手に入れてみようか…
………その前にスキルの名前を決めよう。これからかなりお世話になるのだ。愛称がほしい。
えっと……みんなをメロメロにする… 惚れさせる…
…『魔性』。 うん。なかなかいいかもしれない。
…スキル名は、『魔性』にしよう。
僕はこれから、『魔性のアンデッド』として、この世界を生きていこうと思う。
もう死んでるけど…




