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留守番バイト 上

今更ですが男の言動は()で書いていきます

「そういえばお前名前なんて言うの?」


夜ご飯を食べ終え皿を洗いながら男に聞く

男はパチリと目を瞬かせたあと口をぱくぱくと動かした


「わかんねぇや、ちょっと待って」


今日の買い物袋をガサガサと漁る


「はいホワイトボード、物触れるなら多分書けるでしょ」


百均に買い物した時に見つけて、これなら会話ができると思い試しに買ってみた

男はパッと顔を明るくしてペンで書き始めた

書き終わったのかひっくり返してこちらに見せてくる


「えーと、和井拓斗(かずいたくと)?」

(こくこく)

「へえ、いい名前、じゃあ拓斗って呼ぼうかな」

(名前なに?)

「ん、あ俺の名前?進藤健人、健人でいいよ」

(いい名前)

「ありがとね、あ、ホワイトボード外に持ってったらダメだかんね、空中に浮いてたら変でしょ」

(わかった)

「ふぁ...あー眠、そろそろ寝よかな」


皿洗いも終わり、大きな欠伸をする

歯磨きをして、ベッドに入ろうとすると拓斗は壁際に寄りかかり膝を抱えて丸くなる


「そこで寝るの?」

(こくん)

「えー流石になんか気になるな」

(大丈夫)

「俺が大丈夫じゃないんだよ、ちょっと待って」


荷物をまとめてあるところから布団と毛布を取り出す


「じいちゃん達が来たとき用のだけどこれで寝な」


布団を引いてやれば申し訳なさそうにする


(風邪ひかない)

「ひかなくても俺だけベッドで寝てたら意地悪してるみたいじゃん、朝起きたら中に片付けといてね」

(わかった)


グイグイと布団に押し込んでやれば諦めたのか大人しく入っていく

それを確認してまたベッドに戻った


ピピピ、ピピピ

アラームの音で目を覚ます

目を擦りつつベッドから体を起こし洗面所で顔を洗う

元の部屋に戻ると拓斗は布団を片付けていた


「今日拓斗どうするの?家いる?」

(健人に着いていく)

「着いてくるの?ただのバイトだけど」

(行く)


すっかり懐かれたようでワクワクした顔で俺の周りで浮いている


「いいけど良い子にしてろよ?」

(こくこく)

(何のバイト?)

「単発、なんか家にいるだけでいいんだって」

(変なバイト)

「最近家の周りで変な事起きるんだって、強盗とかだったら怖いから仕事で家空ける間見てて欲しいって」

(一日?)

「うん、明日の朝帰ってきたら給料貰って終わり」


服を着替え、昨日の内にまとめておいた服や食べ物を入れた鞄を持って玄関に向かう


「ホワイトボードはこんなか入れといてね」

(こくこく)

「じゃあ行こ」


玄関を開けて外に出る

少し距離があるので電車に乗って移動する

拓斗は電車に良い思い出がないのかなんとも言えない顔をしている

スマホを出してメモを開き文字を打ち込む


『なんで変な顔してんの』


拓斗は俺の持っているスマホを人差し指でポチポチ押して文字を打つ

周りから見ても俺が使っているようにしか見えないだろう


(仕事行く時電車使ってた)

『あー満員電車?』

(うん、すごい多くて本当に嫌だった)

『めっちゃ苦しそうだよなあれ』

(苦しい、ぺっちゃんこになる)


拓斗の本当に嫌そうな顔を見て思わず笑いそうになるのを抑える

流石に1人でニヤニヤしてる成人男性は良くないかもしれない

1時間ほどかけて着いたのは住宅街でマップに登録しておいた場所へ向かう

着いた場所はよくある白い壁の一軒家

事前に教えて貰っていた植木鉢の下を見ると鍵が置いてある

中に入ると思ったより広く、なかなか快適そうだと感じた


「いいじゃん広いね」

(こくこく)

「あ、はいホワイトボード」

(ありがとう)

「部屋も風呂もキッチンも好きに使っていいって」

(結構自由)

「ね、まあなんかあったら嫌だし、1階のリビングでダラダラしてよ」

(いいと思う)


リビングには低めのテーブルとカーペットが引いてある

荷物を部屋の端の方に置いて、テーブルの前に座る


「ふあ...はー疲れた」

(上見てきていい?)

「んあ、ああいいよ」


拓斗は気になるのか階段をふよふよと浮いて上がって行った

とりあえず鞄から飲み物を出して冷蔵庫に入れる

冷蔵庫の中は思ったよりスカスカだった


「そーいえば雇い主変な人だったなー」

(どう変だったの?)

「お、ああ!?びっくりしたー、戻ってたの」


いつの間にか探索が終わってたのかホワイトボードが目の前に上からパッと出てきて驚く


(普通の家だった)

「あ、そう、まあただの一軒家だからね」

(雇い主)

「え?ああさっきのね、なんか電話の時すごい元気なくてさ、バイトしますって決まった時、ごめんなさいって言われたんだよね」


拓斗は露骨に嫌そうな顔をする


(危ないバイトじゃない?)

「うーん、でも住宅街だからそんな変なことできないと思うしなぁ、近くに交番もあったし」

(でも変だよ)

「んー、まあなんかあったらここ出ようか」


納得してない顔をされたが鞄に入れてきたお菓子を出してやるとパッと表情を明るくするのでちょっと笑った

お菓子を食べたり、持ってきたトランプなどで遊んでいるうちに外が暗くなってきた


「もう夜になりそう」

(お風呂入る?)

「うん入ってくるちょっと待ってて」


鞄から着替えを出し、夕方頃溜めておいた風呂に向かう

服を脱ぎ、湯船に浸かると疲れが取れる


「は〜...気持ちぃ...」


少しの間使ったあと、頭を洗う

洗うため目をつぶっていると、不意に何か視線を感じる気がした

お湯で流し、見渡すが何もいない

気のせいかと体を洗いまた湯船に浸かる

でも、また少し経つと視線を感じる

これは気づいたらダメなやつだなと湯船を出て、風呂場から出る

さっさと着替えてリビングに戻ると拓斗が俺を見てあっ!っという顔をする


(髪乾かしてない!)

「自然に乾くよ」

(風邪ひく!)


拓斗は洗面所に行き、ドライヤーを持って帰ってくる

座って、と床を指さす

大人しく座ればドライヤーで頭を乾かし始める


「別にいいのにー」

(ふるふる)

「...ね、お風呂場のとこなんかあった?」

(?、ふるふる)

「そ、ならいいや」


拓斗が気づかないのなら既にいないのだろう

髪がふわふわになったので、気分がいい

拓斗も満足そうにしている


「そろそろ寝よっか」

(こくこく)


人の布団を使うのはちょっとなぁと思ったので毛布だけ借りて、床に適当に寝ることにする

俺が寝ると拓斗も横に転がる

10分も経つ頃には眠りについていた


ぼんやりと視界が明るくなる

ここは何処だろう

さっきまでいたはずの部屋に似ているけれど少し汚い気がする


「何ここ...」


周りを見渡す

横に寝てたはずの拓斗はおらず、被っていた毛布もない

探すために立ち上がろうとすると、音がすることに気づいた

ことっ、ことっ

硬いもの同士が繰り返しぶつかる音だ

2階から聞こえる

音は少しずつ強くなっていく

どんっ、どんっ

俺は意を決して2階へと向かうことにした

音に脅えながらゆっくり階段を上る

2階はいくつかの部屋がある

階段からいちばん遠い部屋から音はしていた

どうやら扉に何かがぶつかって音がしているらしい

震える手を落ち着かせながら俺はドアを一気に開いた


そこには一体の人形がいた

日本人形だと思う

少し埃をかぶっているが大事にされていたのだろう

髪や服は綺麗に見えた

人形はドアの前に立っていて、ゆっくりとこちらを見上げた

黒い瞳に俺が映っているような気がする

動かないはずの口は静かに開かれる

「...ーーー!」


目を覚ます

体を起こし横を見れば拓斗がリビングの扉の方向を睨みつけている

扉を見ればそこには長い髪の小さな女の子がいた

肌は随分と痛々しいもので、腕は血が流れ続けていて、足は1本ない

女の子は1歩ずつこちらへ来る

拓斗は俺を庇うように腕を広げる


「拓斗」


声をかければ拓斗はバッとこちらを振り返る

口をぱくぱくとさせている

おそらく逃げろとでも言っているのだろう

俺は拓斗を横に押して、女の子の正面に行った

拓斗が手を伸ばしてくるが、お構い無しに話し始めた


「初めまして」


女の子は足をピタリと止めた


「どうしてここにいるの?」


女の子は少し俯き気味だった顔を上げて俺を見た

頭から血は流れているものの少女らしい綺麗な目だ


「もしかして探してるのは人形かな」


女の子は動揺を見せる

どうやら合っているらしい


「大事にしてたんだね、とっても綺麗な人形だったよ」


女の子は少し間を空けて、こくりと頷いた


「大丈夫、人形に会えるようにしてあげる」


目を見開く


「だからちょっと待っててくれるかな」


女の子は少し考えたあと、頷いて消えていった

拓斗は緊張が解けたのかその場にぺたっと膝を着いた


(怖かった)

「幽霊が幽霊を怖がるって愉快だね」

(健人何しても起きないで女の子来て健人殺されると思った)

「ちょっと人形さんと話しててね」

(人形さんって結局誰?)

「さっきの女の子の大事な子だよ」

(なんで離れ離れになったんだろう)

「そこまではわかんないけど、人形さんに言われたんだよね」

(なんて?)

「あの子が待ってるから会いたいって」

(でも人形さんどこにいるの?)

「それをまずは聞かないとね」

(誰に?)

「まずは恐らく女の子、もしくは人形のどちらかについて認識していた人だね」

(もしかして)

「そう」


「雇い主さんだ」




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