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8話 子、供?

「ここです、着きましたよ。えっと、モンスターも他の探索者もいない、な……。うん、大丈夫そうです」

「……」


 昨日だってここにきて採掘していたのに何だか随分と久しぶりな気がする。


 出入口からそう離れた場所にあるわけじゃないけど、他の開けた場所よりも入り組んだ場所にあって、ダンジョン内を照らす光る石や岩が少ないせいで暗くて寒い。


 そのお蔭か分からないけど、俺以外の人が出入りしている様子もなくてモンスターもほとんど出ない。

 採掘とかいう単純作業をするだけなら最高に集中できる仕事場で、そんな仕事ばっかりしてた俺からすると心地いい場所。


 長谷川さんはなんでこんなところに連れて来られたのか訳が分からないのか、俺とは違って計感心バリバリの神妙な面持ちだけど。


「わおんっ!」

「あ、ちょっと待てって!」


 採掘場に到着して早々にルドが奥まで走って行ってしまった。


 自分が生まれた場所でいわば自宅に帰ってきたような解放感がルドにはあるのかもな。


「まったく。まぁルドは放っておいて……。まずそっちにおいてある休憩用の椅子、あれ使っていいのでゆっくり話しま――」

「ここ。なんでこんなに静かなんだ? いつもはモンスターだらけで、周りからは立ち入り禁止区域みたいな場所って聞いたことがあったのに……」

「え? 何言ってるんですか? ここにモンスターなんてほとんど湧きませんよ。そんなわけ分からないこと言ってないでとにかく座っててください。俺はちょっと準備してきます」

「準備?」

「長谷川さんの質問にお答えする準備です。……。にしても、やっぱりここ魔石数多かったんだな。それにあれ、ルドの時並みのが一個だけあるな」


 長谷川さんの言葉を適当に流しつつ、俺は採掘場を見回した。


 するとさっきまでの場所以上にキラキラと煌めく魔石の数々が目に映る。


 これはさっき確認した魔石の嗅覚の効果。

 嗅覚っていうには視覚への影響が多すぎるような気はするけど、とにかく便利なのはいいことだな。うん。


「よっと……。でも結構奥だから掘るにはちょっと時間が掛か……らない。これ、マジで?」


 採掘場に置きっぱなしだったスコップを拾い上げていつものように石壁を掘る。


 硬すぎていつもは10センチ掘るのだって一苦労なのに今日はそんな壁が豆腐、とまでは言わないけど、比較にならない程柔らかく感じられる。


「これもレベルアップのおかげかな? ……。……。……。っと……もう掘り出せた。ってこれ……」

「それは……魔石?」


 あっという間に俺は壁に埋まっていた魔石を掘り出した。


 長谷川さんの魔石を見る目がまるでごみを見るような目で、改めて魔石の価値が低いことを実感する。


 ま、俺としてはその分これから起こることに対しての驚きも大きくなるだろうなって思えてワクワクが高まるけどね。


「ふふ」

「なに笑っているんだ?」

「あ、すみません。それじゃあ早速ですけど単刀直入に説明しますね。実は俺、あとテイムしたモンスターは魔石を割るだけで強くなれるんですよ」

「は?」

「それが俺の職業、魔性ブレイカーの特徴らしいです」

「魔石ブレイカー……。そんなの見たことも聞いたことも……。その、なんだ、私によく思われて適当言ってる、とかじゃなくてか? 別にそういう理由で嘘をついているならそれはそれで可愛いと――」

「と、とにかく見ててください! 嘘なんてついていないって分かりますから!」


―――――

魔石種類:???の魔石

サイズ:大

HP:1/1

???潜在

レア度:C

―――――


 俺が掘り出した魔石のステータス。

 そこにはルドの時同様に潜在の文字があった。


 それもレア度はC。ルドよりも強い個体が現れるのは間違いない。

 これを割ればあり得ない強さの仲間が手に入る。


 だから俺は疑心暗鬼な長谷川さんを一旦無視してこれを割ることにした。



 ――パ、キッ。



 分からせのワクワクと何が出てくるのかという2つのワクワクに心を躍らせながら俺はぎゅっと右拳を握ると魔石を放り投げ、落ちてくる魔石を全力で殴った。


 いつもよりも硬いからなのか拳に少しだけ痛みが走る。

 昨日のことも考えると、魔石に対しては被ダメージ固定のスキルは無効なのだろうか。


「でも、痛いのはちょっとだけ。それに割れてるんだから、問題なし」

「嘘。魔石がこんなに簡単に割れて……。しかも、なんか溶けてないかっ!?」


 破片となって地面に落ちた魔石はゆっくりと溶け始め、そのまま形を作っていく。


 ルドの時はじっくりとそれが完成される様子を見ることができなかったけど、こうして見るとなんというかちょっとだけ気持ち悪い。


「まさかこのまま虫型のモンスターが生まれたりしないよね? 俺、芋虫とか駄目なんだけど……」

「え? これモンスターになるのか?」



「――う、うぅ……」



「な、なんか喋ったぞ!? これ、一体どんなモンスターが生まれるんだ恭也!?」

「……。えっとぉ……。すみません、なんか思ったのと違います、これ」


 案の定驚いた表情をしてくれる長谷川さん。

 驚かすだけのはずが驚かされる立場になってしまった俺。


 ……。


 魔石に潜在してるのって絶対にモンスターじゃないんですか!? そんなの聞いてないよ!?


 どうしよ、変な汗出てきた。

 これもテイムできるよね? めちゃくちゃ強い敵になったりしないよね?


『潜在個体を復元します。初期値になりますが、強個体だった存在になります。念のためカウントを開始……30秒前、29、28、27、26、25』


 アナウンスさんが勝手にルドの時にはなかったカウントを始めたんですが。

 これヤバい奴なのでは?


「長谷川さん、念のため俺の後ろに隠れてください。さっきの戦闘によるダメージもありますから」

「わ、分かった!」


『1、0――』


「う、ぐっ」

「恭也っ!」


 長谷川さんが慌てて俺の後ろに移動した瞬間カウントは終了。

 そして同時に復元の完了を意味するであろう強い光が辺りを包み、俺は両目を瞑らされてしまった。


『復元が完了しました。状態は――』



「私を解き放つものが現れるなんてね。さて、その顔をよく見せて頂戴」


 アナウンスを遮って聞こえてきたのは大人の女性の声。

 そしてその声は俺のすぐ側で鳴る。


 それなのに光によって開けらなくなった目は素早く戻ってくれない。


 ならここは牽制でも構わないから攻撃を――


「大丈夫。私は敵じゃないわ。それどころか主従関係にある。苦肉の策だったし、成功する可能性なんてなかったけど……やっと、やっとこの時が来たのね。でも、私たちはもうあれを倒せるだけの力も最終階層に到達する力もない。だからお願い。酷な頼みだとは思うけど私たちに代わってあなたにはあれを倒して――」

「ちょ、ちょちょちょちょちょ待って! 待ってください! 一体何を言って――」

「お前! 私の恭也から離れろっ!!」


 俺の後ろにいたのが功を奏したのか、長谷川さんは俺よりも早くその存在を視認。

 俺とその存在を引き剥がそうと動いてくれた。


「あの、だから私は敵じゃないわよ! そりゃああなたよりもちょおっとだけグラマラスな身体かもしれないけど!」

「お前のどこがグラマラスだ! 女児だろ女児!」

「私のどこが女児だって言うの! こんなにっも豊満な胸が! ……あれ? 胸、が? どこにも、ない……」

「恭也! こんな子供に絆されるなよ!」


 子供?

 いやいやいや、こんな大人らしい口調で饒舌に話し始めるのなんて大人のお姉さん以外に――


「なくないのかよ。本当にロリじゃん。低学年の小学生じゃん。女児じゃん」

「そうだぞ恭也! 声に騙されるな!」


 ようやく開くことのできた目に映ったのはぼんやりとではあるものの、明らかに小さい……金髪ロリ。


 そう、モンスターではなかった。


「ち、違うわ! 信じて! 私はあの勇者一行の1人、美貌と魅惑の大魔法使いサヤ!! 名前くらいなら当然あなたたちも知ってるはずよ!」

「……。すみません、知りません」

「私もだ……」

「……。……。……。マジ、で?」

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