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2話 魔石破壊者

 アナウンスはそれで終了。

 同時に割れた魔石がどろどろと溶け、さっきまでの硬い状態が嘘のような状態に。


「――ぷぺっ!」


 次第にそれはモンスターの形に形成されているが、それをゆっくり見ている暇はない。


 スライムは可愛らしい鳴き声を発した後に、その口を思い切り開いて俺に近づいてきたのだ。


 振り返って逃げるには距離が近すぎる。


「やるか……。一気にレベルも5になったんだからっ!」


 覚悟を決して再びスライムに攻撃を繰り出す。


 攻撃は当たった。当たったのに、HPの減少値はやっぱり1。


「なんだよ! レベルアップしたんだろ! ならスライムくらい倒させてくれよ! ちょっとくらい固定ダメージが上昇っしたっていいじゃないか――」


 一向に攻撃力という面に成長が見えず絶望を覚える。


 そうして嘆いていると、まるであざ割るかのようにスライムは俺の右腕を咥えた。

 にゅるにゅるとスライムの舌のような器官が纏わりつき、しゃぶられているのを実感する。


 スライムは歯や牙がない代わりに、相手を溶かして捕食する。


 俺の腕も溶かしてそのまま食おうとしているのだろう。

 溶かされることによる激痛が全身を襲って……。


「こない。痛くない。なんで? もしかしてレベルが上がって……防御力がスライムの攻撃を上回った? でも、まったく痛くないなんてそんなこと……。確認、するか」



 ――『ステータス』



 心の内でそう呟く。

 自分の詳細な情報を知るにはこの手間が必須。


 だからなかなか戦闘中に確認なんてできないが、痛みがないならなんの問題も無し。


 気分は既に強者。こんなに自分のステータスを見るのが楽しみになる時が来るなんて思いもしなかったな。


―――――

名前:音無恭也おとなしきょうや

職業:魔石破壊者マセキブレイカー

レベル:5

HP:20 /160(補正込み値MAX161)

攻撃力:45(補正込み値MAX46)

魔法攻撃力:45(補正込み値MAX46)

防御力:25(補正込み値MAX26)

魔法防御力:25(補正込み値MAX26)

ユニークスキル:固定ダメージ攻撃LV1

通常スキル:毒耐性(小)

魔法:なし

職業スキル:魔石嗅覚(最大効率の魔石採掘場所探知)、魔石破壊ボーナス(魔石破壊数によってパラメーターを補正。数が一定数を超えた場合スキルの効果を異なる角度から強化。数が一定数を超えた場合テイムモンスターにもボーナス効果付与。)

テイムモンスター:1(タップで詳細表示)

状態異常:なし

魔石破壊数:1(全パラメーター:+1)

―――――


 ……書き込みが凄い。

 魔法欄以降なんて今までそんな表示すらなかったのに、めちゃくちゃに増えてる。


 それでもパラメーターに大した変化がないから攻撃を受けてもダメージがないのは多分毒耐性のおかげ。


「それは魔石を壊して得たスキルで……。抽選テイムモンスターに引っ張られてるって感じか。ということは、『こいつ』が現れてくれただけで俺は救われた、と。……一瞬ハズレだと思ったこと、許してくれるかな?」



「――わおんっ!」



『モンスターの復元が完了しました。ただしステータス情報はリセットされ進化前の状態になっています。自身のステータス画面から復元したモンスター、テイムモンスターの情報が確認可能です』



 俺がステータスを確認、スライムが必死に腕をしゃぶっている間にあのどろどろと溶けた魔石はモンスターへと姿を変え終わった。


「元気は良さそうだが……」


 コボルト。

 犬型のモンスターで獰猛。鋭い犬歯と爪で敵を切り裂き、捕食。

 免疫力の高さから毒耐性がある。


 取得したスキルからしてもこいつがコボルトだというのは間違いない。

 ただ……いくらなんでも可愛すぎないか? こいつ。


 大きさは小型犬位。

 体毛は赤茶色でもこもこ。目はつぶらで戦闘意欲は全く見られない。


 普通の犬よりも脚はずっしりしている分前脚、というか手? は小さめ。

 一応二足歩行だけど、コボルトというよりもただの犬に近い。しかも尻尾は丸みを帯びていて可愛らしい。

 

 どこのどいつを復元したらこんな姿になるのか、甚だ疑問だ。


「とてもじゃないけど、戦えそうには見えない。でも俺じゃあこのスライムを倒すのに骨が折れすぎるからな……」


 俺はコボルトをじっと見つめる。

 すると、コボルトは何かを期待しているかのような視線を向けてくる。


 なるほど。これがテイム状態ってやつなんだな。


「不安はあるが……。よし! 初命令だ! このスライムに攻撃を――」

「わうっ!」


 俺の命令にかぶせてコボルトは吠えた。


 そしてその脚で思い切り地面を蹴り飛ばすとスライムに噛み付き、じゃなく……。



 ――べちょっ!



 ダブルスレッジハンマー。別称オル●ガハンマー。

 このコボルト……戦い方がプロレス仕込み。


「ぷ、ぺ……」

「もしかして……一撃?」

「わおんっ!」


―――――

種族:スライム

HP:0

―――――


 呆気にとられそうになるのを堪えてしぼんでいくスライムの状態を確認。


 あれだけあったHPはたった一撃で0に。


 それには確かに驚いた。驚いたんのだが、スライムの情報の確認時に見えてしまったコボルトの情報、それはスライムの状態なんかよりも驚かせてくれた。


 だって、それは……。


―――――

種族:コボルト希少種

HP:2000

レア度:D

レベル:1

―――――


 主人の俺よりも貧弱そうなこいつのHPが明らかに1階層のモンスターではありえない領域に、レベル1という状態で達していたから。


『モンスターを倒した経験値は主人にのみ付与されます。したがって通常テイムしたモンスターはそのレベルを維持したままになりますが、魔石による経験値付与は別。共有されます。そのためテイム後もレベル上げが可能。それにより主人はボーナス効果、新たなスキルが付与されることがあります』


 丁寧な説明アナウンスが入る。


 その内容を聞くに、この魔石破壊者マセキブレイカーっていう職業は自分で戦うこともできるけど、あくまでバッファーっぽい?

 

 つまり他は全部仲間に任せて、とにかく魔石を破壊しまくる職業だよね?


 ……。それ、これまでとあんまりやること変わらなくないか?


 でもそれだけで強く、モンスターも倒せるのなら……これ以上ないくらい俺にぴったりで、効率のいい稼ぎ方じゃないか。

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