第3話 ペンギンハウス
「うおっ…!」
男が放った数発の銃弾を俺とソフィアは避けたが、何故かネロは避けようとせず、銃弾を受けていた。
「あ~~…最高ですぅ~」
銃弾を受けたネロは興奮しており、受けたはずの弾丸が音を立てて地面に落ちた。
「でも~…ただの銃弾だと、ネロを傷つけることはできませんよ~?」
「なっ…!」
弾丸を受けたネロは余裕そうな表情を浮かべながら述べると、それを見た男は少し引いたようだ。
男がネロに引いているうちに、俺らはトンネルに背を向けて、地面に座り込み、弾丸に当たらないようにした。
「先程の武器庫から、くすねといて良かったです…」
今度はソフィアが、どこからか拳銃を取り出して、男に向けて容赦なく発砲した。
「容赦なさすぎだろ!?」
声を上げて俺はソフィアに言ったが、ソフィアはは?と言わんばかりの表情を浮かべた。
「何言ってるのよ、私たちの世界はやらなきゃやられるっていうの知らないの?」
「は?」
ソフィアの言葉に俺がきょとんとしていると、
「まずは…お前らだ!」
ネロを倒すのをあきらめた男が、銃の射線が通るように移動してきて、俺らに向けて銃弾を数発放った。
「ちっ」
「うおっ…!」
ソフィアは舌打ちをしながら、俺は手で頭を防御しながら、それぞれで弾丸を避けた。そして、男は素早く銃をリロードしようとしたが、その隙を突いてソフィアが銃を撃ち、男が持っていた銃を吹き飛ばした。拳銃を吹き飛ばされた男は反動で地面に倒れこんだ。
「くっそが…」
男は飛ばされた拳銃を回収するため、地面を這いずる男の前にソフィアが立ち塞いで、拳銃を男に向けた。
「終わりね…貴方が持っている情報をすべて言いなさい?……言わなかったら、分かっているでしょうね?」
ソフィアは男に拳銃を突き付けながら、威圧を放って男に問い詰めた。
正直めっちゃ怖い…
ソフィアに脅されている男は、苦い顔をした後に口を開いた。
「分かったよ、全部言う…なんて言うとも思ったか!!」
大人しく話をするのかと思われた男は、地面についていた手で、地面を軽く掘り起こし、その際に出た土をソフィアに向けて投げつけた。
「なっ!」
ソフィアは土を投げつけられたため、ひるんでしまいその間に男は銃を回収して、こちらへと向かってきては、いきなり俺の首を掴んで頭に銃を突き付けてきた。
「動くなよ?お前らの同僚が死ぬぞ?」
男はそう言って二人を脅迫しながら、俺の首を掴んだまま自身の背中が壁に向くように移動した。
ゲームで散々見てきた銃、やっていたからこそ分かる銃の怖さで、俺の頬から冷や汗が流れ落ちた。
「あぁ…ネロがあっち側に~…」
「馬鹿、ふざけている場合じゃないでしょ!」
俺が人質となっている中、ネロは自分が人質になった時のこと妄想でもしたのか、息を荒げて興奮している。そんなネロにソフィアがすかさずツッコミを入れた。
さて、どうしたものか…あの二人に迷惑はかけたくない…となると、自分で脱出するしかないな。
二人に迷惑をかけないように、俺は自力で逃げ出すことを決め、タイミングを伺い始めた。
「こいつの命が欲しかったら、ここの所長を呼んでこい…!………早くしろ!!」
男はネロの態度を見て腹が立ったのか、少々苛ついている様子で、所長を呼んでくるように二人を脅した。二人は顔を見合わせた。
「…分かった、貴方の言う通りにするわ」
ソフィアが男の条件を呑むと言い、それを聞いた男は少し気が抜けたのか、俺の首を掴む力を弱めた。その瞬間を俺は逃がさず、体重を後ろへと掛けて、男の右脇腹に目掛けて肘打ちを行った。
「なっ…!があぁ…!」
諸に右脇腹に肘打ちを受けた男は銃を落とし、打たれた右脇腹を手で押さえながら、その場でうずくまった。
こう見えても俺は子供の頃に空手をやっていて、その時に先生に右脇腹に拳を入れらた時、余りの痛さで動けなかったのだが、まさかこんなところでこの知識が役立つとは…
「えっと…拳銃回収っと…」
俺が男が持っていた拳銃を回収していると、
「遅れてごめんさいね~」
薙刀を持ったお菊さんがやってきた。
「全く~…うちの新人教員達を狙うなんて…命知らずな人居たのね~」
お菊さんは笑顔でうずくまっている男に薙刀をグッサグッサと刺し始め、その痛みで男は悲鳴を上げた。
「急所は外しているから、安心してね~?」
一応急所は外しているらしいが、怖すぎる……お菊さんは絶対怒らせないようにしないと…
時期にすると、お菊さんに刺されていた男から声がなくなり、身動きを取らなくなった。
「ごめんね…そうそう戦わせることになってしまって……それじゃあ、私はこのゴミを連れて行くから、所長のところに行ってちょうだい」
そう言い、お菊さんはびくともしない男の襟を掴み、武器庫の方へと男を引きずりながら行った。
そして、俺らはお菊さんの言う通りに所長のもとへと向かった。
────────────
「はっはっはっは!いや~、まさか今襲撃してくる者が居るとは思ってなかったよ!」
所長は胸を張って、今回の襲撃は予想だにしていなかったっと言ってきた。
「まぁ、流石はあの試験を合格した者達だ!あれぐらいの殺し屋は余裕だったな!」
笑顔で言ってくる所長に対して、
(余裕じゃねぇよ!)
と、内心思いながら少しイラっとした。
そして、俺は今まで疑問に思っていたことを口にした。
「あの、ここってどういう託児所なんですか?」
俺の質問に所長やソフィア達は驚いた顔で俺を見た。
「…なるほど、表社会で生きていた君が、何故申し込んだのか分からなかったが、ここのことをあまり知らなかったのだな!」
少し考えた後所長は口を開き、何やら気になる発言をした。
「それでは、改めて私の口から説明しよう…!ここ、国際連合公認託児所ペンギンハウスは、殺し屋、マフィアなどの子供を預かる、裏社会の者たち向けの託児所…たまに政府の関係者や王族の子達も来る時もあるな」
所長からペンギンハウスがどういう場所か聞いた俺は、驚きのあまり固まってしまった。
改めて、俺、やばいところに就職してしまたのか…!