第2話 所内案内
「それじゃあ、まずはここ…教室でーす」
そう言ってお菊さんは、ドアを開けて大きな広間のような場所に案内してくれた。
「ここでお子さんたちを預かるのよ~…人数が普通の託児所より少なめだから、うちでは○○組とかで分けてないのよ…」
片手を頬に当てながらお菊さんは俺らに説明してくれた。
結構駅に近いから、入りたい人と多いと思うんだけどな…まぁ、何かしらの理由があるんだろう…
「午前中は天気が良かったら子供達を外で遊ばせ、雨とかなら室内で遊ばせて頂戴…お昼ご飯を取った後は歯磨きをさせて、三時までお昼寝タイム…五時から八時の間に保護者の人達が迎えに来るから、それまでは室内で子供達の相手をしてあげてね~…子供達が全員帰った次第、明日の準備とかをしたら帰っていいわよ~」
俺らを連れて、お菊さんは教室内を歩き進めながら、普段の業務内容を淡々と説明してくれた。
内容は普通の託児所だな。
すると、お菊さんは頑丈そうな扉の前に立っては、俺らの方を見た。
「業務内容はその都度教えるとして…次は第一倉庫ね~…第一倉庫は教室と繋がってるから、物を取り出す時に子供達が入らないようにしてね~」
お菊さんは頑丈そうな扉を開け、第一倉庫と呼ばれる場所を見せてくれた。
倉庫内には、園児用の机やいすが大量に積み重ねられているほか、ポールやクレヨンと言った遊び道具などもあった。
うん、普通の託児所…
「昼食は各自で用意して頂戴ね」
お菊さんは扉を閉めながら、昼食は各自で用意するように伝えてくれた。
昼食はお手製の弁当でも作るか。
「あっ、そうそう…第二倉庫を紹介しとかないとね~」
昼食を自分で作らないといけないと思いながら、第二倉庫を紹介するために、教室を出ていったお菊さんの後を俺らはついていった。
試験がえげつなかった割には、普通の託児所だな。
そう思いながら、辺りを見渡しながらお菊さんの後をついていくと、明らか重そうな扉の前にお菊さんは立ち止り、ゆっくりと扉を開けた。
部屋は窓がないのか真っ暗で、お菊さんは電気をつけるためにスイッチを押した。
「はい、ここが重要な倉庫こと……武器庫で~す!」
お菊さんが電気をつけると、そこには大量の銃が壁に飾られており、床には弾丸や手榴弾のマークが書かれていた木箱が、大量に積まれていた。
前言撤回、ここ普通の託児所じゃねぇ!ここ!託児所になんで武器庫があるんだよ!?
「基本的な武器はここに置いてあるからね…ただし火気厳禁なのと、子供は絶対入れないようにお願いしますね」
「「はい」」
平然とした顔でお菊さんは、俺らに武器庫での注意事項を述べた後、他の二人から驚いている様子は感じ取れず、お菊さんに返事を返した。
「は、はい…」
変に疑われないように、俺は戸惑いながらもお菊さんに返事を返した。
よく警察とかに見つからないよな…
「それじゃあ、次に行きましょう」
俺らの返事を聞いたお菊さんは、武器庫の中へと入り、次の場所へと案内をしてくれた。
「それじゃあ、足元に気お付けてね~?」
お菊さんは武器庫の中へと進んでいっては途中で立ち止まり、床にある戸を開いた。
戸の先には薄暗い階段があり、階段は螺旋階段で地下深くまで、続いているようだった。
そして、お菊さんはそのまま階段を降りていったので、俺らも続々と後に続いて降りて行った。
階段を降りていくと、そこには牢屋と拷問器具が置かれていた。
なんで、託児所の地下に牢屋とか拷問器具とか…やばい物があるんだよ!?
「ここで襲撃してきた連中を閉じ込めらり、拷問して情報を吐き出させるのよ…いざって時は、園児をここに避難される場合もあるから、覚えといてね~」
ニッコニコの笑顔で地下室について説明してくれた。
もう、ツッコミに疲れたよ…俺…
ふと、俺は他の二人を見た。
「…」
「ハァ、ハァハァ…ハァハァハァ…!」
ソフィアは平然としており、ネロは拷問器具を見ては、何やら息を荒げて興奮していた。
もう、ダメだこの託児所…
早く辞めたいと俺が思っていると、お菊さんが口を開いた。
「それじゃあ、ある程度所内を案内したから、一回休憩にしましょ」
お菊さんは休憩を挟むといい、俺らはお菊さんと共に地下から出て行った。
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束の間の休憩時間、俺らは託児所の庭にある、園児用の小さいトンネルの上に座っていた。
お菊さんは少し用事があるといい、どこかへ行ってしまった。
俺は青い空を見上げた。
なんで、こうなったんだろうな…
保育士になって、普通に働いて、結婚して、婆ちゃんにひ孫の顔を見せてあげたかっただけなのに…なんで、普通じゃない託児所に就職することになったんだよ…
俺が空をボーっと見ていると、ソフィアに顔を掴まれて無理矢理頭を下げられた。
「なにをす…!」
俺がソフィアに文句を言おうとすると、突然銃声音が聞こえ、俺の頭があった位置を弾丸が通り過ぎた。
「チッ…間抜けそうな男からやったつもりだったが…まさか、付き添いの女が鋭かったとは…」
声がした方を見ると、拳銃を片手に持った男が銃口をこちらに向けながら、俺らとは少し離れた建物の陰から出てきた。
「ただでさえ面倒くさい奴が多いここに、これ以上面倒くさい奴を増やされてたまるかよ…」
そう言い、男は拳銃の引き金を引いた。