06:不審な手紙は次々に
「……やはり、ですわね」
――ここは学園の談話室、この部屋にいるのはわたくしたち二人だけですわ。
わたくしは小桜さんが「机の引き出しに入っていた」と説明したその手紙をまじまじと見つめ、頷きました。
それはどう見てもわたくしと同じもの。文面までそっくりそのままでしたわ。
「もしかしてあなた、何か知ってるの?」
そう言って首を傾げる小桜さん。ああそうそう、彼女にはまだ話しておりませんでしたわね。
「ええ。つい昨日、わたくしの机にも同じ手紙が入っていましたもの」
小桜さんは「えっ」と声を上げられましたわ。
証拠に、隠し持っていたあの手紙を見せて差し上げることにいたしました。しばらくそれをしげしげと見つめていた彼女は一言、
「……もしかして昨日の化け物を退治したのって……」
わたくしはしばらく返答に悩みましたわ。
でも、小桜さんの元にも同じ手紙が届いたことを考えると、隠しておく必要はない気がいたしました。
各地であのような怪物が現れたということは、今後もないとは言い切れません。誰が仕掛けていることなのかはわかりませんが、悪趣味なことですわ。
「他言しないよう、誓っていただけますか?」
「――――」
黙ったまま頷く少女。
愛らしい瞳が戸惑いながらこちらを見上げて来ます。まるで小動物のようですわ、などと思いながらわたくしは声を顰めて言いましたの。
「その通りですわ。わたくし、実は……」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「とりあえず、このタネを食べたら変な力が湧き出て来たってことでいいの?」
「ええ。言葉にはし難いのですが、荒れ狂うようなそんなパワーですわ。最初は毒物じゃないかと疑いましたが、どうやらそうではないようです」
「ふーん……」
小桜さんがわたくしの言葉をどこまで信じているのか、あるいは少しも信じていないのか、わたくしにはわかりかねます。
今まで言葉を交わしたことのない相手に、突然このような突拍子もない話をされたのですから、普通はすぐに頷けないでしょうけれど。
それでもわたくしたちの身になんらかの異常な現象が発生していることは明らか。小桜さんとて、引き出しの中にこのような不気味な手紙が入っていたのですから、黙ってはいられませんでしょう。
「先生に知らせよう!」
「いけませんわ。そのような無謀なことをして、うっかりマスコミに囲またらどうするんですの?」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ。梓ちゃんの話が本当だったら、また危ない奴が来るかもなんでしょ?」
「そりゃあそうですが、でも……」
どうにも彼女とは意見が合いません。
そうしてしばらく揉めていた時でしたわ。
「べ、別に怖くないし! 全然平気なんだからね!」
「このタネ食べたら爆発しちゃうんじゃないですか〜。ちょっとやってみましょうよ〜」
ガヤガヤ言いながら、談話室に二人の女子生徒が新たに入っていらしたのです。
――そして驚くべきことに、彼女らの手には、それぞれわたくしたちの物と同じ手紙が握られていたのでした。