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50:お見事

――財前梓視点――

「お見事だ……まさか僕を下す者が現れようとは。さすが、僕の選んだ乙女たちだ」


 わたくし、ピンク、イエローが見下ろす穴の中、そこに埋もれる『魔王』がそんな声を上げました。

 全身火傷だらけ、あちらこちらに穴が空いたズタボロな姿。普通では死んでいてもおかしくありませんが、『魔王』自身のダラダラした自分語りによれば不老不死とのことでしたわね。あれはどうやら本当のようですわ。


 もちろん普通そんなことはあり得ませんけれど、それを言ったら戦隊や異能力ということ自体があり得ないということになってしまうので細かいことは無視いたしましょう。


「さて『魔王』。それは降参宣言と思って、間違いありませんかしら?」


「ああ。僕は手札の全てを使い、君たちに挑んだが君たちは僕の予想の斜め上の勝ち筋を見つけた。これは僕の完敗だろうね」


「私には余裕ぶっこいて負けたようにしか見えなかったけど……。ともかく、このままただ見逃すわけにはいかないよね。みんな、どうする?」


 ピンクがそう言って、わたくしたち全員を見回しましたわ。


 確かに彼女の言う通り、『魔王』をこのまま生き埋めにするのはあまりいい案ではありません。そのうち地中からひょっこり出て来て、また馬鹿をやらかす可能性が高いからですわ。


「ボクはどこかに閉じ込めておくのがいいと思う。この化け物を解放するのは危険だ」


 グリーンさんの意見に対し、イエローは被りを振り、


「あたしは、ぶっ殺すのがいいと思うわ。不老不死なんて嘘に決まってるじゃない。ちょっと体力強化みたいなのはあるかもだけど……。これだけのことをしたんだもの、死刑であるべきだわ!」


「でもそうなると、ワタシたちの方が悪になってしまうんじゃないですか? まあワタシは別に、どっちでもいいですけどね〜」


 三者の意見はそれぞれ頷ける部分がありますわ。

 監禁も殺すのもこの『魔王』を封じておくには一番の手ですけれど、それをすればわたくしたちも犯罪者に落ちぶれてしまう。それだけは避けなければなりませんし、正義のヒーローたる者穏便な方法で済ませるべきですものね。


 ……さて、どうしたものやら。


「ああ、来たね」


 と、その時でした。

 『魔王』がボソリと呟いて、ボロボロの手で彼方を指差したんですの。


 わたくしたちがふとそちらを見れば、そこには信じられない光景が広がっていたのですわ。


 赤いランプを灯しながらこちらに迫り来る、無数のパトカー。

 それだけではありません。救急車、自衛隊……。それらが一気に押し寄せ、眩いヘッドライトを向けていましたの。


「――あれは」


「僕が事前に呼んでおいたのさ。当然だろう? 戦いにはタイムリミットというのがあってこそ楽しくなるのだから」


 と、いうことは、後数分遅ければ、『魔王』を倒せなかったかも知れないということ。危ないところでしたわ……。


「じゃあ、ワタシはこの辺で。さようなら〜」


「あっ! ずるいわよアマンダ。待ちなさいっ!」


「私もここで失礼しようかな。じゃあね」


 パトカーの群れを見るなりブルーが逃走、イエローがそれを追い、ピンクがそれに乗じてドレスを翻しながら颯爽と駆け出してしまいましたわ。

 わたくしたちはそれを追おうといたしましたが、一瞬遅かったようです。あっという間にパトカーに囲まれてしまい、逃げ場を失ってしまいましたの。


 …………残されたわたくしとグリーンさんが、それから一体どれほどの質問攻めに遭い、決死の思いでいかにして警察などの包囲網をくぐり抜けて逃げ切ったのか。

 そのあまりにも困難な道のりは筆舌に尽くし難いので割愛させていただきますわ。


 大事なのは『魔王』が無事、警察の手によって捕らえられたこと。

 そしてわたくしが一足先にトンズラしたあいつら(メンバー他三人)へ、思う存分恨み言を吐いてやろうと決意したこと、ですわね。まったく。後でしこたま叱ってやらないといけませんわ。




 ともかく、こうして『魔王』との最終決戦の幕は閉じ、わたくしたちの長いようで短かった非現実的な日々――ヒーローごっこが終わりを迎えたんですの。

 本当に、疲れ果てましたわ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 後は能力無くなれば普通の女の子に戻れるわけだけどさてさて……?
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