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49:力を合わせて

〜財前梓視点→志水詩央里視点→アマンダ視点〜

「必殺技ってよく合体するのがありますけど、あれと同じような感じってことですね〜」


「まあ、そうなるな。能力の合体というか」


「能力の合体、ということは、わたくしたち全員の力を合わせますのね。わたくし、連携プレーはあまり得意ではないのですけれど、全力を尽くしてやってみますわ」


「面白そう! 私も頑張る!」


「クソ、こうなったらやるしかないわ! 最強たるあたしがぶっ飛ばしてやるんだから!」


 そんなこんなで、必殺技の詳細が決まりましたわ。

 ちなみにイエローは最強の称号はまた得ていないのですけれど、調子に乗るだけ乗せておきましょう。囮役を任せるにはちょうどいい人材ですものね。


「じゃ、お願いしますわねイエロー」


「わかってるわよ!」


 イエローは巨大『魔王』の気を惹きつけるため、奔走していただく予定となっておりますの。

 一番危険な役割ですけれど、いつも逃げてばかりのイエローが適任ですわ。攻撃力が最小なのも彼女ですし。


 叫びながら『魔王』へ挑みかかっていくその姿は少しばかり勇敢に見えます。

 せいぜい時間稼ぎをしていただいている間に、わたくしたち攻撃班はきちんと準備しませんとね。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



《ははは、選ばれし乙女たちよ! 巨大化した僕を前に怯んだのかな? それに比べてこの黄色い子は元気だ。これでこそ絵になるというものだ》


「うるっさいわね! それにしてもあんた、どうやって喋ってんのよ!?」


《未知の科学力によってだ。五百メートルくらいは声が届くようになっている》


「じゃ、じゃあ、あたしたちがタネを食べた時、あんたは五百メートル範囲内にいたわけね!? このクソ変態!!!」


 ほんとむかつくわ、こいつ。

 そもそもあたしをこんな怖い……じゃなかった、危険な戦いに巻き込んだことも許せないし、その動機がただのお遊びだっていうのがさらに度し難いのよね。

 それにあの亜弥芽とかいう子だって、あたしがいなきゃ死んでたところよ。簡単に人殺しをしようとするなんて許せない! 反吐が出るわ。


 あたしは今、引きつけ役として奔走中。いつも嫌な役目を押し付けられるのって決まってあたしなのよね……。

 でもいいわ。やってやろうじゃないの。そしてあたしが『魔王』を倒した英雄(ヒーロー)になるのよ!


 『魔王』の大きな脚にしがみつき、必死で上へ上へと登る。

 振り払おうとされるわ脚が無駄に太いわでなかなかにきつい……けど、絶対に落ちてなんかやらないんだから!


「そんなところを登っても無駄だよ。僕の膝にまでも到達できないだろうさ」


「ふんっ! そんなのやってみなきゃわかんないでしょうが! ――喰らいなさい、あたしのとっておき『聖水の弾』よ!!!」


 『聖水の弾』を遥か上の『魔王』の顔へ放つ。

 いつもの数十倍の威力にしてあるから、少なくとも鼻っ柱をへし折ることくらいできるんじゃないかしら。……と。思っていたんだけど。


「残念ながら届かないね」


 そう笑いながら水滴の弾丸を掌で受け止めやがったの。

 掌からポタポタと血が落ちてくるけれど、せいぜい掌に穴を開けられた程度で大したダメージは与えられていなかった。クソ、なかなかしぶといわねこいつ。


 そう思いながらふと下を見下ろせば、そこにはアマンダや財前梓、小桜希歩、碧海若菜がいて、必殺技を作り出そうと必死になっている。

 その姿を見たらあたしも簡単には負けていられないと改めて思わされ、あたしは顔を上げた。


「『魔王』! あたしたち【キラキラ★ベリベリキューティーガールズ】を舐めないことね。あたしたち、あんたのことなんか全然怖くないんだから! まだまだこんなの序の口なんだからね!」


 本当は怖い。怖くて怖くてたまらない。『魔王』のメイクが怖いし、何せ高い場所が怖い。足がガクガクする。

 でもそんな弱みはヒーローは見せないって決まってるから、全力で強がる。

 強がって笑うの。


「もういっぺん喰らいなさい! 『魔王』、どのみちあんたの負けよ!!!


 あたしは再び、『聖水の弾』を撃った。

 と、その時だった。全身を緑色に包んだ人影――グリーンの姿があたしの目の前を()ぎっていったのは。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ほんと、シオリは強がりなんですから〜」


 『魔王』の膝下で揺れる黄色のドレス――イエローことシオリを見ながら、ワタシは口の中だけで呟きました。

 囮役は別にワタシでも良かったんですけど、ワタシよりシオリの方が身軽ですから、キホもアズサもグリーンも彼女を選んだんでしょうねぇ。

 ワタシはシオリが強がりなだけじゃなく、やる時はやる人間なんだって知ってますから、心配はしてませんけど。


 まあそんなことより、今は必殺技の方に集中ですね〜。


 グリーンの提案通り、ワタシたち全員の能力を一斉に集めることになりました。

 いいとこは全部グリーンに持ってかれちゃうことになりますけど、まあ、仕方がないですかねぇ。でも結局、とどめを刺すのはワタシなので不満はありませんが。


 グリーンの拳に、アズサが炎を灯します。

 轟々と燃え上がる彼女の掌。あれ、熱くないんですかねぇ。ああ、やっぱり熱いみたいです。グリーンが顔を歪めています。


「うぐっ……」


「熱いですけれどグリーンさん、頑張ってくださいまし! ピンク、グリーンさんを上へ!」


「了解! じゃあ、行くよー!」


 キホがそう言ってグリーンの体を掴むと、天高くへポーンと放り投げました。

 すごいですよね、キホって。そんなに力があるように見えないんですけど、意外に怪力なんですよー。

 でもただ投げるだけでは『魔王』の顔になど届くわけがありませんから、彼女は『桜吹雪』でグリーンをさらに持ち上げ、さらに上へ上へと運んでいきます。


 そういえばキホの『桜吹雪』ってどこから桜の花びらが生じてるんでしょうね〜? 不思議ですよね。


 そのままぐんぐん昇っていったグリーンが、『魔王』の胸元の高さまで到達したのが見えました。

 『魔王』はまだ気づいていません。『聖水の弾』を放ち続けるシオリに釘付けですね。ふふ、さすがシオリです。


「『魔王』、どのみちあんたの負けよ!!! 行っちゃいなさいグリーン!」


「うおおおおお、『魔王』、覚悟!!!」


 グリーンが上げる叫び声がワタシの耳にも届きました。

 さあ『魔王』、これで終わりですよー。ああ、ようやくグリーンの姿を捉えた様子の『魔王』でしたが、もう遅いのです。ワタシたちの必殺技第一弾、食らってください。


「ファイアーパンチ!!!」


 名前的にまあまあ弱そうですけど、これ、結構凄まじいんですよ。

 『魔王』の顔へ降り立ったグリーンがその額を拳で叩き割ると、ボワっと『魔王』の頭部から業火が湧き上がります。それは鉄をも焼くほどの熱い炎で、とてもとても普通の人間が耐えられるほどの温度ではありませんでした。

 よく考えるとそんな炎を一瞬でも掌に灯していたグリーンは、きっと大火傷でしょうねぇ。


「ぎ、ギャアアアアア――ッ」


 『魔王』ったら、あまりにも予想外な攻撃に怯んだのか、みっともなく悲鳴を上げてしまいました。

 そしてそのままぐんぐんとその影が小さくなっていきます。あっという間に隣のタワーより背が低くなり、五秒も経たぬうちにワタシたちよりちびっ子の姿になっていました。


 ふふ、グリーンの言った通り、致命的ダメージを与えれば小さくなるものなんですね。体の大きさが戻ってしまえば『魔王』なんて倒すのは簡単です。


 ワタシはシオリとグリーンが『魔王』からうまく逃れたのを見てから、念じました。



 ――その瞬間地面がぱっくりと割れ、『魔王』の足場が崩れます。

 ワタシの『地割れ』の力はすごいのです。たちまち地中へ落ちていく『魔王』へ向けて、必殺技第二弾が打ち込まれました。


「『桜吹雪』!」

「とっとと死になさい! 『聖水の弾』ぁ!」

「わたくしももう一度、『苛烈な炎』をお見舞いして差し上げますわ」


 キホの『桜吹雪』とシオリの『聖水の弾』、ついでにアズサの『苛烈な炎』までも地面の中に放り込まれ、混ざり合いながら『魔王』の元へ到達します。

 それをいっぺんに受けた『魔王』はたまったものじゃありません。もう一度醜い絶叫を上げながら、地中深くに沈んでいってしまったのでした。


 ……これぞ完全勝利ってやつですね。『魔王』、ラスボスにしては弱すぎてちょっと残念ですけど、楽しかったです〜。

 やっぱりワタシが一番活躍しちゃいましたよ。最強の名はワタシに相応しいですね。ふふふ。


 じゃ、かっこよく決まったことですし、後片付けはアズサにでも任せてさっさと帰りましょ〜っと。

 クライマックスで全キャラ視点で書こうと思っていたのに、小桜希歩視点だけが出てきませんでした。ピンクで語ることがない……(笑)

 あと二、三話で完結予定です。最後までお付き合いくださいませ。

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― 新着の感想 ―
[一言] \(^o^)/大勝利\(^o^)/ でもって後片付けをまたしても主人公が!! 不憫!!(゜Д゜;)
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