47:ちょっとやそっとじゃへこたれない
「ああ、面白い。面白いな、君たちは」
頭上から無数の小型の怪物を降らせながら、『魔王』と自称する少年が笑い転げます。
何がそんなにおかしいのやら。わたくしは構わず怪物を焼き払いながら言いましたわ。
「怪物のコントロールをしているのはあいつですわよ。どこかにリモートコントローラーを隠し持っているはずですわ」
「わかってる! でもこれじゃ敵が多すぎて近づけないよ!」
「大丈夫ですわピンク。わたくしが怪物の脅威を取り払います。その間に漁ってくださいまし」
「了解! ブルーも手伝って!」
「はいは〜い」
ピンクとブルーが特攻部隊。わたくしとイエロー、それにグリーンさんはますます数が多くなる怪物たちを排除することになりましたの。
あちらこちらで炸裂する爆弾、青空から降り注ぐ人工の雷、どこからともなく押し寄せてくる黒い虫の大群。
それをわたくしたち三人で必死に抑え、その間にピンクとブルーの二人組が『魔王』へと踊りかかります。
「これぐらいの攻撃、僕には当たるはずがないだろう」
「おお! 飛び上がって『地割れ』から逃げるなんて、すごいじゃないですか〜。感心しましたよ」
「私の『桜吹雪』を舐めてもらっちゃ困るね。なんならそのタワーごと吹き飛ばしてあげてもいいんだけど?」
あらあらまあまあ。タワーごと吹き飛ばしたら弁償がものすごく大変なことになりますわねぇ。
心の中だけでツッコミを入れていますと、『魔王』と二人の戦いも本格的になって来たようでした。
暴風と轟音が吹き荒れ始める中、わたくしは炎を巧みに生かして怪物たちを撃退、グリーンさんなど拳から血が滲まないのが不思議なくらいに殴りまくり、イエローは逃げながらもなんとか水鉄砲で相手を穴だらけにして回っています。
でもこれもジリ貧ですわ。ピンク、ブルー、リモートコントローラーを早く!
「君たちはこれが目当てなのかな? でも『魔王』たる僕は意地悪なのでね。そう簡単に渡してやるつもりはない」
「な、なんで見抜かれたの!?」
「簡単なことですよピンク。この男、色々と超能力使うじゃないですか? だからきっとワタシたちの行動なんて丸見えなんですよ」
「え、そんな!」
『魔王』が操作機をこれみよがしに取り出したので、ピンクが大きく動揺。
ブルーは表向き平静を装いつつ冷や汗をかいているのがチラリと見えてしまいましたわ。……確かにそこまで見抜かれていては劣勢ですわね。
『魔王』、一体どんな方法を使ってわたくしたちの行動を読んでいるかは知りませんが、かませ犬のくせに無駄に力があるのは困ったことですわ。ですが、
「これしきのこと何でもありません。ピンクとブルー、作戦続行ですわよ! なんとしても強奪するのですわ」
我ながら戦隊ヒーローらしくない言葉ですけれど、この際仕方がありませんわ。
お二人は頷いて、再び攻撃を始めていらっしゃいます。
「強奪? そんなことができると思っているのか?」
こちらを見下すように嗤う『魔王』。けれどその余裕も今だけでしてよ。
わたくしはそれとなく怪物を倒しながら『魔王』の背後へ周り、ピンクとブルーが攻撃を繰り返して『魔王』の目を惹きつけているのを確認してから――。
「隙あり、ですわ!!!」
そう叫びながら無防備な『魔王』の背中に勢いよく炎を放つと同時に、彼が後ろ手に持っていたリモートコントローラーを奪ったんですの。