03:巨人出現!?
「きゃー」
「うわああああ」
慌てて外に出たわたくしは、逃げ惑う人々を踏み潰さんとする『それ』を見て、呆気に取られておりました。
だって『それ』は大男――絵本にでも出てくる、絵に描いたような巨人だったのですから。
それが学園の校庭で大暴れをしているのですからまあ、驚きとしか言いようがありません。
わたくしうっかり寝過ごして夢でも見ているのかしら? 確かに目の前で起こっている出来事は夢と言った方が説明がつくのですが。
でも悲鳴がいやにリアルですわね。悲鳴が生々しいですわ。
ということはこれは現実……? 万が一そうだとして、ではなぜ巨人などが学園内に?
すると、わたくしに駆け寄って来る人の姿がありました。
「梓様! 梓様ぁ!」
どうやらわたくしのファン――取り巻きと呼ばれるうちの一人のようです。
その女子は制服のスカートを砂まみれにしたひどい姿でいらっしゃいます。どうやら何度かすっ転んだようですわね、情けない。
それはともかく。
「あ、あの……。貴女、これは一体どうしたことですの?」
「梓様ぁ。怪物、怪物が襲って来るんですっ。ほら」
巨人は今も一人の女子生徒を追い回しています。
彼女はきゃあきゃあ悲鳴を上げながら、校舎内へ飛び込んで行きました。ああ……このままでは巨人も校舎の方に向かってしまうでしょうね。
巨人の体格はゆうに十メートルはあろうと思われますわ。これは困りましたわね。
と、その時、ふとあの不可解な手紙のことを思い出したんですの。
『乙女よ。君は怪物を倒し、世界を救うのだ。それが君に課せられる役目となる。』、確かそうあの手紙には書いてありましたわ。
ほほぅ、つまりこれはあの手紙の送り主の嫌がらせ。そうに違いありません。
一体どうやってあんな怪物を引っ張り出して来たかは存じ上げませんが、とにかく只事ではないでしょう。ただそれだけを直感し、わたくしは覚悟を決めました。
相手が遊びに誘って来たのです、少し乗ってやってもいいでしょう。
わたくしは指示を出して校庭にいた全員を校舎へ向かわせると、握りしめていた封筒から小袋を取り出しました。その中には白い植物のタネらしき物が入っております。
…………これが危険物という可能性はないかしら。
充分に考えられることですわ。でも、わたくしは正体不明の手紙の言葉を信じてやることにいたしました。
そうすればきっと面白がって手紙の送り主が現れるはずですもの。そこを追求してやればいいのです。
このタネを食べることで、一体何が起きるのか。わたくしは何もわからないままに、そのタネを口に含みましたの。
――そして直後、大きな異変が起こったのですわ。