33:これからはライバルとして
荷物をまとめ、全員が食堂に集まっていらっしゃいます。
もうすっかり夕刻。寂しいですけれど、【パンチング・ヒロインズ】の皆さんとはこれでお別れなのですわ。
「あっという間だったな」
「ええ、そうですわね。あなた方と訓練できて良かったですわ。感謝を」
わたくしと碧海さん、両チームのリーダーが微笑み合いましたわ。
おそらくはもう彼女たちと会うことはないでしょう。なんだか名残惜しくてなりませんわね。
朝陽さん、紫宇田さんも同じようにそれぞれ別れを告げられました。
小桜さんは彼女らと握手を交わし、志水さんなどは涙を隠し切れず、アマンダさんはメアド交換をしようとして断られていらっしゃいます。ふふふ。
これからはわたくしたち【キラキラ★ベリベリキューティーガールズ】と【パンチング・ヒロインズ】は同志でありながらライバルなのです。
同じ『怪物と戦う』というわけのわからない使命を背負う者同士ですもの。良きライバルになれることを祈っていますわ。
「皆さん、財前家でお過ごしいただきありがとうございました。賑やかなお客様がいてわたくし、とても楽しかったですわ。さようなら」
「ありがとう」
「またどこかでね〜」
「あんたらのこと、忘れへんわ」
こうして碧海さんたちは帰って行ったのでした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
わたくしたちSL学園組は行きと同じで財前家の自家用高級車で帰ることになりました。
使用人たちに別れの挨拶をすると、わたくしは車へ乗り込み、他三人の少女を手招きします。
はぁ。もう帰ってしまうだなんて……楽しい時間というのはあっという間に過ぎ去るというのは本当だったんですのね。
今まで友人を持たず、こうして別邸へやって来る時も家族だけであったわたくしにとって、今年の休暇は特別なものになりましたわ。ぜひまた来年も皆さんと来たいものですわ。
その頃にはわたくしたちの戦隊ごっこも終わっているかも知れませんわね。そうなったらわたくしたち、どうなってしまうのかしら……。
「アズサ、何を考えてるんですか?」
突然アマンダさんに話しかけてられたので、わたくしは慌てて首を振りました。
「――いいえ。何でもありませんわ。また皆さんに別邸にいらしていただけるかしらと思って」
「もちろんですよ」にっこりと微笑むアマンダさんは当たり前のようにおっしゃいましたの。「だってワタシたち、お友達ですからね!」
その言葉になんだか安心させられて、わたくしも思わず頬を緩めましたわ。
――こうしてわたくしたちの合宿は幕を下ろしましたの。