27:【パンチング・ヒロインズ】との合同訓練③
今までにない特大の火の玉を飛ばします。
一体この力は体のどこから湧いて出るのでしょうね。不思議でなりませんわ。
あまりの大きさに避け切れなかったグリーンさんのカツラがボワっと燃え上がり、彼女は少々たじろいだようですわ。そしてわたくしはその一瞬の勝機を見逃したりはいたしませんの。
グッと相手に距離を詰め、グリーンさんの、決して豊かとは言えないお胸に優しく触れ、「勝ちですわ」と微笑んだのでした。
――ただしわたくしが勝てたのはこの一度のみで、その後は全敗し、たくさん胸を触られまくられたのですけれどもね。
もうお嫁に行けませんわ……。
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それから、わたくしたちは毎日あの砂浜へ通っては、本気のバトルを繰り返しておりました。
最初は臆病で悲鳴を上げまくっていたイエローも慣れた――というより諦め切ったようで、素直に訓練に参加するようになりましたわ。一方でピンクやブルー、オレンジなどの能天気グループ(勝手にわたくしがそう呼んでおります)は積極的すぎるくらい。
グリーンさん、パープルさん、わたくしことレッドはほどほどに楽しんでおりますわ。
「レッドも随分と能力の扱いが上手くなったやん。今日の戦いでちょっとびっくりしたわぁ」
「あら、そうですの? でも結局負けてしまいましたわ……」
今日も今日とてパープルさんに敗してしまい肩を落とすわたくし。
それを慰めてくださいましたのはグリーンさんですわ。
「気にすることはないだろう。ボクらはキミたちよりちょっと経験豊富だからね」
「……というと?」
「ボクらは各地で戦ってるから。学校のある時は仕方ないけど、夜中でもできれば現場に向かうことにしているよ」
「そうなんよ。最近新聞とかテレビでぎょうさん怪物が出たって騒いでるやろ? あれの半分くらいはうちらが片付けてるんやで」
「まあ、そうでしたの。それは素晴らしいことですわ」
わたくしたちは学園生活に手一杯で、他の地域の手助けに行く余裕なんてございませんでした。反省ですわ。
そんなことを話している間に、今行われていたイエローVSオレンジ戦は終わったようですわね。
「べ、別に、泣いてなんかないんだから! 負けて悔しいとか思ってないんだからね!」
「ツンデレ好きだよ〜でも実際にいたらちょっと引いちゃうかな〜。素直に負けを認めた方がいいよ〜」
またもイエローは負けましたのねぇ。わたくしたち、まだまだですわ。
でも確実に強くなっているのは事実。イエローの『聖水の弾』の操作の精密さは、訓練の前と後では大差ですもの。
わたくしの『苛烈な炎』だってうまく調整できるようになりましたし、ピンクの桜吹雪はともすれば家一つを吹き飛ばせるような力に。ブルーの『地割れ』はさらに恐ろしく多くの者を飲み込む大穴へと変化しています。
やはりここへ来て良かったですわ。
「うちらのパンチもなんか強くなってるような気ぃするんよ。なぁ、朱莉」
「この格好してる時は朱莉って呼ばないでよ〜。でもそうだね〜パンチ力上がった感じするかも〜」
「そうだな」
【パンチング・ヒロインズ】の皆さんにも喜んでいただけて何よりですわ。
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それからやがて一対一の勝負がチーム対抗戦へと変わりましたわ。
何度も何度も戦い、負けながらも、わたくしたちは成長していくのですわ。
「次こそは!」と小桜さんが拳を固め、「な、泣いてなんかないわよ……」と志水さんが涙を堪え、「今日も楽しかったですよ〜」とアマンダさんがニコニコ笑顔を浮かべるのを見ながら、わたくしはまた明日も挑もう思いましたの。
明日で合宿は最終日ですわ。最後くらい、【キラキラ★ベリベリキューティーガールズ】の意地を見せませんとね。