26:【パンチング・ヒロインズ】との合同訓練②
わたくしたちが訓練場所とするのは、人気のない海辺のスポット。
本来であれば多くの人が訪れそうなスポットなのですけれど、この海には危険な生物がたいへん多く、倦厭されているのだと聞きましたわ。ここのビーチであれば練習場にはもってこいですわね。
練習であっても気分を出したいという小桜さんの要望もあり、それぞれヒーロースーツに着替えたわたくしたち。
今回はこちらも仮面をつけておりますので、さらに戦隊らしさが増しておりますわ。碧海さん――着替えたからグリーンさんですわね――が「すごいじゃないか」と誉めてくださいました。
「まるで怪しげな美女だね。どこかの姫じゃないのかって思うくらい」
「姫ではございませんわ。でも『怪しげな美女』という評価は嬉しいですわね」
一度言われてみたかったんですの。
一方の【パンチング・ヒロインズ】は以前見た通りのビキニ・カツラ・仮面姿。
顔立ちも口元を除いてわからないので、言われないと碧海さんたちと気づかないでしょう。
「変装をばっちり行ったところで訓練開始ですわ。何をやりましょう?」
「恐らく、チーム対抗戦のようなものがいいだろう。例えば……」
わたくしはグリーンさんの話を聞いて、「それはいい」と首を縦に振りましたわ。
そうしてわたくしたち【キラキラ★ベリベリキューティーガールズ】と【パンチング・ヒロインズ】の合同訓練が幕を開けましたの。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ハァァァァ、『炎』! 『炎』『炎』『炎』『炎』!!!」
「レディ、あまり乱発は良くないと思うが」
「わたくし、実際に戦ったことは一度しかございませんの!」
わたくしはグリーンさんと向かい合い、真剣勝負を行っておりました。
彼女が提案なさったのは、チーム対抗戦ではなく一対一での戦い。とりあえずは一人一人の能力を高めなければなりませんものね。
相手の胸に触った方が勝ちという、少しエッチな匂いのする勝負ですけれど、だからこそ負けるわけにはまいりません。
この財前梓、お嫁に行く前には誰にも胸に触れさせませんわ!
数うちゃ当たるとばかりに『苛烈な炎』を次々と放つわたくしに対し、それを余裕の身のこなしで避け続けるグリーンさんは、的確に拳を叩き込んで来ます。
どうやら彼女、特殊能力の代わりに拳で戦う系のヒーローらしいですわ。妙な能力であれば対応しやすいのですが、力技となると避けるのも一苦労ですわ。
一方で他に戦いを繰り広げているのは、ピンクVSオレンジ、ブルーVSパープル。
両者とも命を賭けた……というのは言い過ぎですが、それくらい過激な戦闘ですわ。特にブルーなんて相手を地割れで生き埋めにしようと必死、いいえ笑っていらっしゃるのですから怖いですわ。彼女って少しそういうところが怖いんですのよねぇ。
ちなみに今はイエローは砂浜に座り込んで観戦中のようです。
「ぐあっ」
と、少しよそ見をした間に頬へ拳を入れられてしまいましたわ。
その痛いことと言ったら! これでこそ張り合いがあるというものですわ。
「参りますわよ、『炎』ぉぉぉぉぉぉ――!!!」
わたくしは己の能力を思い切り解放いたしました。