25:【パンチング・ヒロインズ】との合同訓練①
「お越しいただきありがとうございます。改めましてわたくし、財前家の長女、財前梓と申しますわ」
「ど……どうも」
美しく着飾ったわたくしを見て、相手の方はたじろいでいらっしゃいますわ。
一瞬誰かと思いましたが、お顔立ちを見たところどうやら先日のグリーンさんで間違いなさそうですわ。緑のカツラも仮面もしておらず、地味な容貌です。少しスポーティーな格好をしていらっしゃいますわねぇ。
彼女の後ろに立つのは、二人の少女。
大柄な方と小柄な方。おそらく前者がオレンジさん、後者がパープルさんではないかと思いますわ。
――ここは財前家別邸。
休暇に入って数日が経ち、わたくしたちがここに到着してから三日ほどが過ぎていた頃、ようやくこのお三方が現れたのですわ。
わたくしはひとまず彼女らを別邸へ招き入れます。
父もわたくしの友達と聞いて、やはり快く受け入れてくださいましたわ。父は、少しわたくしに甘いところがありますの。
おかげで小桜さん、志水さん、アマンダさんも存分にお屋敷生活を満喫中ですのよ。
……と、忘れておりましたわ。
「あなたがたのお名前をうかがえるかしら? これから数日を共に過ごすのですから、ぜひお教え願いたいですわ」
わたくしの言葉にグリーンさんらしき人物はううむと唸ります。
「ボクらは一応女の子なんだよ? そんなに簡単に身バレして大丈夫なのかい?」
「もちろんですわ。決して悪用したりはいたしませんとも」わたくしはにっこり微笑みました。友好的に見えるように計算した笑みですわ。
そして彼女はそれにころっと落ちたようです。
「……わかったよ。ボクは碧海若菜だ」
「ちなみにアタシは朝陽朱莉だよ〜」
「うちは紫宇田亜弥芽。よろしくな」
ほぅ。珍しい苗字ばかりですわね。
名前を知ることができたのは大きな収穫ですわ。
皆さん、わたくしがかの有名な――と自分で言うのも恥ずかしいですが――財前家の者と知って驚いていらっしゃるご様子。
でもわたくしの仲間と顔を合わせばきっと緊張もほぐれるでしょう。そう思い、わたくしは小桜さんたち三人のお気に入りスポットであるお庭へ向かいましたの。
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顔合わせは見事なまでに順調に進みましたわ。
さすがは学園のアイドルと呼ばれるだけあって、小桜さんは人とお近づきになるのが本当にお上手ですの。彼女といると五秒で友達になってしまうような、そんな不思議現象が起こるのですわ。
あっという間にオレンジさん改め朝陽さんと仲良くなっておいでですわね。
志水さんはツンツンしたところがありますが、そんなところが気に入ったのか、パープルさん改め紫宇田さんはいたくお気に入りの様子。すぐに打ち解けてしまっておりますわ。
アマンダさんは少し血生臭いことがお好きですが、それを除けば普通の可愛い女の子。
少し男勝りな碧海さんは金髪外人美女を見た瞬間、目の色が変わってしまっておりました。ふふ、面白い方。
――さてと。
とりあえず挨拶が済んだところで、そろそろ本題と入りましょう。休暇は残り一週間程度ございますが、だからと言って悠長にはしていられませんもの。
「皆さん。早速ですが合同訓練を開始いたしましょう。わたくしたちがここへ集っているのは遊びのためじゃありませんわよ?」
ある者は嬉々として、ある者は渋々頷きました。
勝負はこれから。一体どんな訓練になるかはまだ予想もつきませんけれど、とにかく頑張るしかございませんわ。