20:見知らぬ少女たち
〜詩央里視点→梓視点〜
かわゆい乙女がピンチに陥っている時、必ず正義の味方が助けに来るのはもはやテンプレよね。
なんでああいうのってちょうどいい時に来るのか……。こういう展開ってムカつくのよ。だって、ご都合主義にもほどがあるじゃない?
でもそのご都合主義展開が、今目の前で起こったんだからびっくりよね。
「「「拳で悪をぶっ飛ばす! 正義の【パンチング・ヒロインズ】!」」」
あたしを包み込むぬるぬるしたスラ〇ムたちが高い音を立てて弾け、あたりに飛び散った。
一体何事か……それは、すぐにわかった。
あたしの目の前に三人の女の子が立っている。
年頃は大体あたしと同じくらい? みんなピッタリしたビキニのようなものを着ていて、首にスカーフを巻き、顔には仮面舞踏会でつけるようなマスクをしていたわ。
そう。それはまさにヒーローだった。あたしなんかと違う、本物の。
そもそも現実に本物のヒーローなんていないのはわかっている。わかっているんだけど……なんというか神々しいオーラが溢れてたの。
まさにヒーロー登場!って感じの。
「あ、あなたたちは……?」
ぬるぬるの残骸から立ち上がったあたしは、おずおずと尋ねた。
これがあたしと見知らぬ乙女たちの出会いになった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「またですの?」
わたくしは思わずため息を吐いてしまいましたわ。
皆さんが帰ったと思ったらすぐ、アマンダさんから「怪物が出ました〜」と電話がかかって来ましたの。
もうくたくたですのに、また現場へ向かわねばならないなんて億劫ですわ。しかもわたくしは後始末係ですし……。
でもグダグダ言っていたって仕方がありませんわね。諦めて、出向くことにいたしましたわ。
と、そこまでは良かったのですけれども。
こっぴどくやられたらしい街。
何度も怪物に襲われているせいで、建物の損傷が激しいですわ。どうしてまだここに住み続けようと思う人間がいるのかしら……などと思いながら歩いていると、すぐに小桜さんとアマンダさんと合流できました。
「あら、志水さんは?」
「それが……いないんだよね。どこか出かけちゃったのかな?」
「シオリにはさっきから何度も電話かけてるんですが、全然繋がらないんです。もしかしてもう戦っちゃってるかも知れません」
お二人ともあまり心配していなさそうですが、わたくしは少々気にかかりましたわ。
いつも一番に駆けつけてくるのは意外にも志水さんでした。そんな彼女が来ないということは、何かあった可能性が高いですわ。
それに、不思議なことがもう一つ。
それはどこを見ても怪物がいないということです。いつもなら暴れまくっているはずの奴らがどこにも見当たらないのは不自然ですわ。
小桜さんも「あれ……さっきまで……」と呟いておられるところから、怪物が忽然と姿を消したようですわね。考えにくいですが、どこかに潜んでいるのかも知れません。
なんだかものすごく胸騒ぎがしますわ。早く志水さんを見つけませんと。
そう思った矢先のことでした。
「――探し物はこの娘かい?」
聞きなれない誰かの声がしましたの。
振り返るとそこには……緑の仮面をした怪しげな美女が。しかも美女の隣には、黄色いドレスを汚した少女――志水さんことイエローが睨みつけていたのですわ。
あの……これは一体どういうことですの?