17:怪物の体を開いてみたら
もはや恒例となってしまった怪物退治。
まだ【キラキラ★ベリベリキューティーガールズ】が結成されてから十日ほどしか経っていないのですが、一日に最低でも一回、多い日には三度ほど出現するので、もう退治には慣れてしまいましたの。
いちいちドレス――ヒーロースーツに着替えるのが面倒臭くはありますが、それは仕方がありませんわね。
そうして戦隊の姿になると、わたくしたちはいつも通り名乗り上げ、敵を可憐にぶっ飛ばしにかかります。
今回の相手はミイラ群団でしたわ。
どうしてこう、グロテスクな怪物ばかりを選ぶのでしょう。趣味が悪いですわ。
ピンクが『桜吹雪』を吹かせると、ミイラ男の多くが粉々に。
あとは『聖水の弾』で浄化して、ブルーの『地割れ』で生き残りを埋めてしまうだけ。またしてもわたくしは見ているだけでしたわ。リーダーの名が泣きますわね……。
「さてと。皆さん、ここからが勝負ですわよ」
そろそろ野次馬が押しかけてくる頃ですわ。
人間というのは不思議なもので、危険だというのがわかっていながら騒動が起きている場所により集まって来るんですの。これが本当に厄介なんですの。
正体を悟られてはいけないわたくしたち。以前に一度、警察に職務質問されたことがあり、それからというもの迅速な撤退をすることになっております。が、今度ばかりはそうもいきませんわ。
ミイラ男たちの残骸をできるだけ拾い集め、かつ持ち帰らなければならないのですから。しかも――。
「ひ、ひっ、無理無理無理無理!!!」
イエローがめちゃくちゃな悲鳴を上げて逃げ惑っています。
彼女、どうも臆病なのですわよね。怪物を見たらいつも腰が抜けそうになっていらっしゃいますし、触れるなんてできっこありません。だからと言ってわたくしのように後始末に徹してくださるわけでもないのですから、すなわち戦い終われば役立たず。
「イエロー。あなたは野次馬をできるだけ堰き止めなさい。その間にわたくしたちは回収を行いますので」
「え、でも!」今にも泣きそうなイエロー。情けないですわ。
もちろん、彼女がただの中学生であることも承知の上。少し学歴がいいのでSR学園に入っているそうですけれど、見た目も性格も地味地味なのですわ。
それでもこんな時に役立たずのままでいられるのは困ります。ので、時間稼ぎをお願いし、わたくしはピンクとブルーを引き連れて作業へ向かいましたの。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「なんとか……逃げ切れた……」
「スリル満点で楽しかったですよ〜」
あれからミイラ軍団の残骸を漁っておりますと、すぐに警察やら消防やらが押しかけて来て大変なことになりましたの。
イエローが対応していたおかげで多少野次馬は防げましたが、それでもこちらに追い縋ってくる者も多く、逃げ出すのにはかなり苦労いたしました。
「疲れましたわ……」
「あたしなんて死にそうなんだけど」
ボロボロになってしまったイエロー――志水さんが口を尖らせます。
野次馬に引っ掻かれたのか、痛々しいお怪我が。ご愁傷様ですわねぇ。
「で、アマンダさん、解剖の結果はどうですの?」
疲れ切ったわたくしたちとは違い、一人だけ元気なアマンダさんは今までミイラの解剖をやっておられましたの。
それが終わったらしいので訊いてみたのですわ。
するとアマンダさんの顔が「待ってました」とばかりにパァッと明るくなりました。
そして彼女は、ずっと手に持っていたらしいミイラ男の死体の半身を高く掲げ、笑顔で言いましたの。
「わかりました! 謎の怪物の正体、それすなわち……ロボット、です!!!」