16:怪物の出どころを探るために
ある朝、わたくしは新聞を広げておりました。
一面を彩る記事を見てみれば、正体不明の怪物が降りて来てこれまた正体不明の人物が撃退したという……第三者から見ればさっぱり理解不能な事件の数々。
これがわたくしたちの住む地域だけでなく、北にも西にも出現しているのですから困った話ですわねぇ。
一体誰がこの騒動を仕組んでいるのかはわかりませんが、少なくともわたくしのようにヒーロー役をやらされている少女が他にもいるのでしょう。ご愁傷様ですわ。
そういう子たちともコンタクトを取った方がいいかしら?
わたくしはそう考え、すぐに首を振りましたわ。だって、きっと各地にいる戦う乙女たちとて、正体を明かされたくはないでしょう? 当然隠すはずですわ。そうなってしまっては、探しようがございませんものね。
そんな無駄なことをするよりも、この騒ぎを起こしている主を特定した方が早い。
財前家の財力を尽くせばどれほど早いでしょう。けれどもわたくしは、それに頼らず秘密裏に操作を行う必要があるのです。
でもいい加減、一人では手詰まりですわ……。
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「じゃあさ、怪物を解剖してみたらいいんじゃない?」
無駄とは思いながらもその話を聞かせたわたくしに、小桜さんは突拍子もない提案をしてくださいましたの。
怪物を解剖とは、思いも寄らない発想ですわね。それに至った理由を聞いてみましょう。
「だって、怪物を開いてみたら、何かわかるかもでしょ? 例えばあいつらが誰かに操られてるんだとしたら、指紋とかを採取して調べられる可能性もある」
「で、でも」彼女の話を聞いていた志水さんが不満げに反論なさいます。「すぐに警察とか来ちゃうじゃない! のらくらしたら捕まるわ!」
「ワタシたちが逮捕されるわけないじゃないですか〜。シオリは心配性なんですから。むしろ一躍有名人ですよ」
「アマンダはほんっとわかってないわね! そりゃ確かに有名人にはなるでしょうけど、絶対に親に叱られるに決まってるわ! 学校だって退学になるし、それに……もっと怖いことにだって」
志水さんのおっしゃる通り。アマンダさんにはどうやら考えが足りないようですわ。金髪美少女なのに残念ですわね。
……ともかく、怪物の解剖をするのなら、戦闘後にどこかへ運ぶ必要があるでしょう。
と、その時、一同が会していた財前家の屋敷の外で甲高い悲鳴が上がりましたわ。
またですのね。
わたくしたちは急いで現場へと向かったのですわ。