12:ドレス
名前が決まったところで朝の鐘が響き、わたくしどもは慌てて教室へ。
少々時間に遅れてしまい、周りからくすくすと笑われてしまいましたわ。でもそんなこと、もう慣れっこですから気にはなりません。
その日、学校を終えた帰り道で、アマンダさんがわたくしの家に来たいと申されました。
なんでも『ヒーロースーツ』なるものを作りたいとのこと。わたくしはよくわからなかったものの承認し、黒いタクシーに乗って彼女と屋敷へ帰宅いたしました。
「お嬢様、その方は」
使用人の老婆やが目を丸くしています。今までわたくしが友人を屋敷へ招くようなことはなかったので、驚くのも当然でしょう。
わたくしは笑顔で答えましたわ。
「アマンダさんですわ。昨日知り合ったばかりですの」
「留学生のアマンダです! アズサの友達になりました!」
わたくしはまだ友人とは思っておりませんが、その方が話が早いので訂正はいたしませんわ。
金髪のキラキラ美少女に見惚れている老婆やをよそに、わたくしは屋敷の自室へアマンダさんを案内したのでした。
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わたくしの部屋へ入った途端、アマンダさんははしゃぎ出しましたわ。
なんでも、ドレスに憧れていたのだとか。確かにわたくしのクローゼットにはたくさんドレスがございますから、乙女心をときめかせるのかも知れません。わたくしにとっては普通の装いなのですが、庶民にとってドレスというのはあまりにも馴染みのなさすぎるもののようですからね。
わたくしがお見せしたドレスはそれぞれ、赤・ピンク・黄・青のもの。
形はそれぞれ違いますがどれも高級品ですわ。アマンダさんは目を輝かせて「綺麗ですねっ!」と大はしゃぎでした。
話を聞いたところ、彼女、『ヒーロースーツ』とやらを探しに来たらしいのです。
戦隊が戦う時に着る衣装のことのようで、それがあるのを期待していらしたようでしたが、生憎そんなものはここにはございませんわ。
「でも、このドレスが使えるかも知れません。アズサ、ドレス四着貸してくれますか?」
わたくしが頷く前にアマンダさんはドレスをひったくってしまい、弾む足取りで帰って行かれました。
その時はただ呆然とするしかなかったのですが、数日後、さらに驚かされることになったのですの。
――だってその時のドレスが見事に改造され、わたくしたち【キラキラ★ベリベリキューティーガールズ】の衣装になっていたのですから。