09:バトル再び②
「うわあ!?」
「何よこれ! 変な味がするんだけど!」
「ほぅほぅ。なんだか力が湧いて来ましたよ」
小桜さんは驚き、志水さんは恐怖、アマンダさんは嬉しそうな表情でそうおっしゃいました。
皆さんそれぞれ同じタネを食べても感じ方が違うようですわ。それはともかく、
「そのタネを食した者は、正体不明のなんらかの力を得るはずですの。その力を使い、あの黒い虫の大群を退治するのですわ!」
大群となって押し寄せる虫は、ゴキ〇リを五倍ほどの大きさにした奴らです。並大抵の力では殺せないでしょう。
これもきっとあの巨人と同じ奴が仕掛けて来たに違いありませんわ。
「ご、ゴキっ!」
志水さんが悲鳴を上げてうずくまってしまいました。きっと虫が苦手なのですわね。
でも一方のアマンダさんは余裕で飛び跳ね、大群の方へ走って行ってしまわれました。小桜さんはというとわたくしに疑問の視線を投げかけております。
「説明は後で。まず、この虫たちをなんとかしませんとね?」
そう言いつつわたくしは、手から炎を放って虫の群れの一部を焼き払ったのでした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「いやああああ! 死ね死ね死ね死ね死ね!」
志水さんの悲鳴が響き渡る校門前。
他の生徒はあらかじめ逃がしておき、わたくしたちはゴキブリ群団との戦闘を繰り広げている最中ですの。
その中で、三人のそれぞれの能力が発覚いたしましたわ。
まず小桜さん。彼女はものすごい力を発揮したのです。それこそズバリ、『花吹雪』ですわ。
突如として竜巻を起こしますの。しかしそれはただの竜巻ではなく、どこからともなく花びらが出現し、敵を包み込む……というわけのわからない能力ですわ。これで七割の敵はやっつけてしまいました。
次に志水さんの……ええと、『聖水の弾』なる力。名前だけは清らかな感じがしますが、わたくし目線で言えばただの水鉄砲にしか見えませんでしたわ。
しかも彼女「べ、別に怖くないし!」とおっしゃるものの、かなり臆病で、襲われたらすぐに逃げてしまうので見込みがあまりありません。どんまいですわ。
そして最後のアマンダさんですが、彼女は過激でした。
彼女の能力は『地割れ』。その名の通り、地面に突然パックリと裂け目を作り、そこに敵を落として生き埋めにしてしまうんですの。
恐ろしいですわ……。
後はわたくしが『苛烈な炎』で全てを焼き払うのみ。
そんな風にして、わたくしたち四人はあっという間に敵を始末してしまったのです。
第二のバトルも圧勝。一体あの巨大ゴ〇ブリがどこからやって来たかはわかりませんが、見事退けることができて何よりです。
それにしても、わたくしだけでなく他三人もあのような奇怪な力に目覚めてしまうとは……。白いタネの正体は一体何なのでしょう……?
考え込むわたくしをよそに、アマンダさんは「もっともっと戦いたいです〜」と興奮し、志水さんが怯えて逃げ帰り、小桜さんがアマンダさんと何かを喋っていらっしゃいます。
本当に彼女らはお気楽ですわねぇ。
ともかく、この奇妙な一連の騒動の件は四人でしっかり協議した方が良さそうですわ。
「人に見つかる前にとっとと帰宅しましょう。そしてまた明日、談話室に集合。いいですわね?」
そう言っている間にもまたもや教職員たちが駆けつけて来ます。
わたくしは昨日同様、ささっとその場から撤退したのでした。