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第51話 レナノナ孤児院、開設!(前編)

 

「こ、ここがあたらしいおうち?」

「おなかすいた……」

「せんせー! おしっこ!」

「…………」


 魔王城の中庭に、数百人の小さな子供たちが集められている。

 みんな痩せており、お腹を空かせている子も多い。


 前にいた施設で酷いことをされたのか、虚ろな目で座り込んでいる女の子もいる。


(あたし達もこうだったなぁ……)


 街の片隅で泥水を啜り残飯を漁る……苦難の日々を思い出す。


 この子たちは王国中から集めた孤児たちだ。

 王都の片隅で暮らすストリートチルドレン、人身売買の温床と化していた自称孤児院。

 孤児たちを暗殺者に仕立て上げようとしていた犯罪組織まで。


 ガイとあたしたち”四天王”が手分けして助け出した小さな命たち。


「さぁて! みんなには今から……きょーふの魔王孤児院に入ってもらうよっ!!」


「おうレナ! 分かって来たじゃねーか!!」


 中庭にしつらえられた演台に立ったレナ姉がドヤ顔で宣言する。

 傍らで満足げにうなずくガイ。


 すっかり悪の四天王ムーブが気に入ったらしいレナ姉だけど、服装が可愛いメイド服にひよこさんエプロンなので違和感が半端ない。


「……これ楽しいね、おにーさん」


「くくく、そうだろうそうだろう!!」


「俺の魔力が落ちているから少々錬成に時間はかかったが……。

 ()()()()()孤児院が完成したぜ!

 思う存分ガキどもを洗脳するがいい!」


「らじゃー!!」


「くくっ、俺様は四天王に厳しい男だからな……孤児院の運営をお前らに丸投げしたというのに、給金はたったの3割アップだ!!」


「って、さらにお金がもらえるんかいっ!」


 この孤児院はあたしたちの希望で設置してもらったもの。

 相変わらず低昇級虐待を仕掛けてくるガイに思わずツッコミを入れる。


 どんっ!


 どんっ!


「「ひ、ひいっ!?」」


 上空から爆発音が響く。

 実は歓迎の花火なのだが、見た目極悪なガイと対等に渡り合っているあたしたちに驚いてしまったのかも。


「はいはい!

 ガイもレナ姉も、小さな子を怖がらせないの!」


 悪ふざけはこれくらいでいいだろう。

 あたしは手を叩きながら子供たちの前に出る。


 あたしの服装はタヌキの着ぐるみだ。

 ちっちゃい子供たちを怖がらせないための工夫である。


「ノナのヤツ……妙に似合うな」


「ノナちゃんケーキの食べ過ぎでお腹の方もタヌキに……ふぎゃっ!?」


 いらんことを口走るレナ姉に着ぐるみの頭をぶん投げて黙らせると、あたしは満面の笑みを浮かべて子供たちに向き直る。

 少々子供たちの顔が引きつっているのは気のせいだ。


「は~いみんな!

 まずはお風呂に入って着替えるわよ!

 あたしの後に付いてきて!」


「「おふろ?」」


 戸惑い気味の子供たちを引き連れ、あたしは先日完成した孤児院の建物に向かうのだった。



 ***  ***


「わ~い! おふろ気持ちいい!!」


 ばしゃばしゃ!


「こらこら、泳いじゃ駄目よ!」


「「はーい!」」


「まだ体を洗っていない子は、わたしの所に来るのだ!

 あわあわ地獄を味あわせてやろう!」


「「あわあわ~!!」」


「ぬほっ!? いっぺんに飛びつかないでっ!?」


 べたん!


「まったく、レナ姉はすぐに調子に乗るんだから」


 子供たちを引き連れたあたし達は、まずは孤児院の4階に向かう。

 ここには半露天式の大浴場があり、子供たち全員を同時に入れられるくらいの広さがある。


 村の地下1500メートルからくみ上げた源泉かけ流し!!

 もちろん孤児院だけではなく、村には公衆浴場が新設された。


 ガイいわく、お湯が良すぎて思わず湯あたりしてしまうぜ虐待!らしい。


 トゲトゲした孤児院の建物 (ガイの趣味だ)に最初はびくびくしていた子供たちだったけど、モイスチャー成分たっぷりの泡と暖かい温泉に興奮しっぱなしだ。


「……きゅう」


 レナ姉は子供たちにまとわりつかれて泡まみれになっている。


「はいっ、ねんちょーさんは小さい子を見てあげるのよ?

 つかりすぎると湯あたりしちゃうから、30かぞえて!」


「「いち! にい! さん!」」


 元気な女の子たちの声が響く。


 となりの男湯からも元気な歓声が聞こえてくる。

 男の子はガイが見てくれているのだ。


「ふふっ、なんやかんやガイおにーさんって小さな子に好かれるよね」


 ちゃぷん!


 子供たちを洗い終えたレナ姉が湯船に入ってくる。


「精神年齢が同レベルだからじゃない?」


「ははっ、言えてるかも!」


 軽口さえも心地よい。

 感情を失っているように見えた子も、今や柔らかな笑みを浮かべている。


「よかった……この子たちを救えて」


「おにーさんに貰ったものをおすそ分けしていけば、不幸になる子はいなくなるよ」


「……だね」


 あたしはこてんと頭をレナ姉の肩に預ける。


「この景色を守ろう……わたしたちで」


「うん」


 頼りになる声色で、あたしを安心させてくれるお姉ちゃん。

 あたし達はたっぷりと幸せなお風呂時間を楽しんだのだった。


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