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ロボットアバターで戦いたい! 【すばらしき新世界Re:Birth】  作者: R.U.R.U.R
チャプター1 はじめましてのVRMMO ~白き機神と初イベント~
12/24

第10話 お色直しとレベリング!~お色直し編~

ルルねぇが何処かに走り去ってしまったので、俺たちは冒険者ギルドを後にした。

あのまま部屋にいてもルルねぇは帰ってこないだろう。


「お前、ルルさんどうすんだよ」

「いつものへそ曲げだ。後でデザートでも作って持っていけば治る」

「手慣れてますね」


毎日一回は顔を見ないと弟成分が欠如するって言って憚らないお人ですよ。


「ルルねぇはひとまず放置しても大丈夫。それよりも、これからどうする?」

「意気込みいれちゃいましたけど、私たちまだ推奨レベルに全然届いてないんですよね」


噴水の縁に座ったルーチェさんはイベントのメールを読み込んでいる。

イベントには適正とされるレベルが設定されているようで、今回の場合は基本ジョブ10レベル。


「ウェンディちゃん。今からレベルを上げて始めて、10レベルって間に合うのかな?」

「無理じゃねぇかな」


ズバッとウェンディは希望を切り捨てる。


「ゲーム内じゃあと二日あるっつっても、思ったよりもてんで上がんねぇし、イベント開始までリアル捨ててゲーム三昧ってわけにゃいかねぇだろ」

「あぅ、そうだよね」

「だからよ、別の方法でその差を縮めようぜ」


ウェンディはウィンク一つ、俺とルーチェさんの前に仁王立つ。

やたら自信たっぷりですが、その方法ってのはつまり。


「装備を整えるんだろ」

「ザッツライッ!よくわかったな、ヒュージ」

「そりゃあ、冒険者ギルドに行ってきたばかりだからな」


討伐報酬を受け取った以外に、冒険者ギルドではモンスターのドロップ品も買い取りも行ってきた。

初冒険をクリアして獲得した260ガメルは……〈HNM〉の討伐報酬が如何に破格か思い知らされて、三人揃って神妙な顔をしてしまった。


「スタートタウンつっても、探しゃアタシらレベルでも装備できるいい装備が見つかんだろ。幸い十分すぎる元手があるしな!」

「〈HNM〉の報酬金があるもんね」


260ガメルはさておき、【グラウバ】の討伐報酬の配分は終わっている。

俺が10万、ルーチェさんとウェンディが45万ずつ受け取っている。

ルーチェさんは、もっと貰ってくださいとぐいぐい来てたけど、流石にXジョブかもしれない【神楯機兵(アイギスガード)】に加えて、報酬金まで2人と同じくらい貰うわけにはいかない。


「装備の良し悪しはよく分からないけど、この格好はあんまり似合ってないから着替えたいです」


ルーチェさんは困った顔でロングスカートをつまみ上げた。

確かにルーチェさんほどの美少女だと質素な服では素材の良さが殺されてしまうな。


「やっぱ初期装備はどのゲームでもデザインが微妙なんだよなぁ。アタシもこのジャケットとジーンズは好きじゃねぇし」

「ウェンディでも気にするんだな」

「なんか言ったか」


しまった、つい本音が口から滑り出てしまった。

眼光だけで人を殺せそうなウェンディをルーチェさんが宥める。


「話が決まったのなら、一旦別れよう。3時間もあれば装備は整えられるよね?」

「分かりました。集合は噴水前に」


2人の了承を得て、俺たちは『ティミリ=アリス』の街に散会した。

〈エクスマキナ〉の所属が少ないとは言っても、流石に俺でも装備できるアイテムくらいは売っているだろう。

俺は揚々と武具店へと向かった。





しかして、現実は残酷であった。

5件目の武具店を巡り終え、俺は完全に打ちのめされていた。

もう店も回る気力もなく、一足先に噴水前に戻っている始末だ。

初期装備とは比べ物にならないスペックの楯や、VITを格段に上げる鎧は見つけた。

高くて5万ガメルだったから、手持ち金で購入できる。

要求ステータスも満たしているから、いざ購入!

……普通ならばそうなるのだが。


「〈エクスマキナ〉装備不可と来ますか……」


悲しいかな、種族という超えられない壁が俺を阻む。

話を聞くに、国家ごとに技術力の差があるらしい。

ここ【サンディライト】はマジックアイテムの生産力と加工技術は【BW2】でトップではあるが、〈エクスマキナ〉関連の技術がまだ根付いていないのだ。

技術を定着させようとも〈エクスマキナ〉の数は決して多くなく、むしろ減る一方なので基盤が育たない悪循環に陥っている。

プレイヤーも加工職(クラフター)のジョブに就くことで技術を磨けるらしいが、〈エクスマキナ〉関連は【ダイヤリンク】か【トゥークル】まで赴かないと転職できないから望むべくもない。


「〈エクスマキナ〉が少ないわけだよ、これは」


やはり一度【ダイヤリンク】への遠征を計画すべきだろう。

でも、他の国家に移動するのだけでも金が掛かりそうだよな。


「ロボが噴水の縁に座って空を見上げる絵面は威圧感がやべぇな」

「太陽光を浴び、彫像のような美を放つこの素晴らしさを理解できんとは愚民でいらっしゃる?」


言い返して、目線を下げる。

装備を一新したウェンディがそこに一人立っていた。


「お前なんも変わってねぇけど、買い物したのか?」

「したよ。イベント開始前に受け取りに行くの。で、ルーチェさんは?」

「何言ってんだ。ここに居んだろ」


ウェンディは何もない背中に手を伸ばす。

空を切るだけでそこには誰もいない。


「もしかして、はぐれたのか?」

「いんや、さっきまで一緒に居たんだぜ……あ、いやがった!」


やおら身を翻し、死角になっている家の陰に回り込んだ。


「待って、待ってってばウェンディちゃん!心の準備がまだなのっ!」

「別にぱんつ見せてるわけじゃねぇんだから、ほれ」


ウェンディに渾身の力で引っ張り出され、ルーチェさんらしき腕が少しずつ見えてくる。


「わ、私こんな格好じゃ恥ずかしいよ!」


甲高い悲鳴を上げ、ついにルーチェさんが姿を現した。


「……ルーチェさん?」

「……あ、はい。そうです、ごめんなさい……」


だよな。

我ながらアホな質問をしてしまった。

彼女の姿に何度も目を瞬かせてしまう。

かわいい、というよりは綺麗な女の子だ。


「【神官(プリースト)】が装備できる【ガーベラシリーズ】のフルセットだ。回復魔法の回復量や発動速度がアップするだけじゃねぇ、【神官(プリースト)】系ジョブの魔法を使用するときにゃMP消費も軽減されてまさに回復職にピッタリってなもんさ。ちょいとお高く付いちまったが、似合ってるからいいだろ!」

「何でお前が誇らしげなんだよ」


早口でまくし立て、さあ見ろ!とルーチェさんを俺の前に突き出す。

甘いムード漂う白と朱色のミニスカートとボディスを、金糸をアクセントにした同系色のローブを羽織ることで上品さをワンランク格上げしている。

耳の横で丸くまとめた髪についているピンク色の花の髪留めがルーチェさんに色気を匂わせつつも、垢抜けない少女らしさを残す憎いワンポイントになっている。


「……馬子にも衣裳な女の子でごめんなさい……目が腐ったら慰謝料請求してください……」


ややあって、ルーチェさんが居心地悪そうに、おずおずと俺を見上げた。

目線が高く感じるのは、ヒールの高い靴を履いているからか。

このままだんまりを決め込むと不安がらせてしまう。


「そんなことないよ。華やかなでよく似合ってるよ」

「……その、嬉しいですけど、無理に誉めなくても……」

「無理なんかしていないよ」


きょとんと俺を見つめるルーチェさんの肩をに振れ、力説する。


「ルーチェさん可愛いんだから、もっと自信をもってよ」

「そ、そう言いますけれど……」

「俺だって、とってもドキドキしてるんだ」

「え?」

「ルーチェさんが球体間接だったら、人目を憚らず押し倒してたくらいだよ」

「……ソウ、デスカ。アリガトウゴザイマス」


喜怒哀楽をミキサーにかけたようなコクのあるブレンドフェイスをしているが、どうしたんだ?


「ウェンディ、俺はセリフのチョイスを間違えたのか?」

「……ヒュージはさぁ、自分が返すがえす残念だとか思った事ねぇの?」

「心の感じたまま、素直に誉めただけだぞ」


手で顔を覆い、いやいやするウェンディ。

なんだその外国人コメンテーターみたいなオーバーリアクションは。


「お前はルーチェさんみたいに一式を装備したって雰囲気じゃなさそうだな」

「おっと気付くねぇ。アタシはAGIに補正がかかるもんを集めたんだぜ。トータルで7万弱のコーディネートはどうよ、ヒュージさんよぉ」


見せつけるように、尻尾を揺らして一回転。

お前如きが褒められるような安いアタシじゃない。

自信に満ちた表情は俺への挑戦と受け取った。


「ヒュージさん、突然人前で左手を顔に当てて腰曲げるのは怪しまれますよ……」

「こう、バァァァン!とかやたらポップな効果音が背中に出そうだぞ」


俺はロボットの審美に関しては一家言あると自負している。

だが、その培った経験が例えば美術品の鑑賞に活きないかと言えば、それは否だ。

作風や技術のことは分からずとも、そこに宿る素晴らしさを感じることはできるのだ。


「そもさん!」

「説破!」

「ノリノリだね、ウェンディちゃん……」

「ならば問うや。お前、髪切っただろ?」


ひゅっと喉を鳴らしてフリーズする。

この反応、正解とみた。


「待てヒュージ」

「毛先を2センチ、いや1センチ短くして全体のシルエットに気遣ってる。女性の髪のバランスは難しいとはよく聞くが、その優れたバランス感覚に20ヒュージポインツッ」

「なんですかその面妖なポイント」

「待ってくれヒュージ」

「いやらしい意味で言うわけじゃないから誤解しないでほしいんだが、均整でスリムなボディラインだからこそあえておへそを出したハーフトップと大きめのジャケットタイプを選んだんだな。特にジャケットのファーがアクセントになってるのがお気に入りだから、髪の毛に気を使ったってのが分かる。その心遣いとセンスに30ヒュージポインツ。だが、それらを凌駕する魅力がウェンディにはあると俺は今声を大にして言おう。そうだ、それは――」

「待てっつってんだろうが!」

「ホットパンツ!」


残り50ヒュージポインツの価値があるローライズ。

尋常じゃなく短いそこから伸びる健康的でしなやかな足から放たれるアッ・ドルリョ・チャギ。

その破壊力は俺の尻から快音を青空に響かせるほどに、鋭く、素早く、そしてすっげぇ痛ぇ……!


「どうだって聞いたのはお前でしょうが!」

「うっせぇ!よくもんな恥ずい言葉が出てくるな!」

「どうだ、脳力クソつよロボットの本気を見ただろ!」

「褒めてねぇんだよバーカ!」

「馬鹿って言うんじゃないよ!せめてロボを付けなさい!」


鼻を鳴らし背を向けるなり、大股で歩いていく。

彼女が足を踏み鳴らすたび、人混みが割れる。

美少女とは思えない所業は、【BW2】のモーゼの誕生を俺に見せた。


「あの、怒らないで上げてください。ウェンディちゃんは褒められ慣れてないんです」

「だからって回し蹴りを入れるもんかな」

「あれはウェンディちゃんなりの照れ隠しです。手がちょっぴり早いのは、愛嬌なのでひとつお願いします」


嬉しそうにウェンディのぴこぴこ跳ねる尻尾を目で追うルーチェさんはおかんさながらの母性を放っている。


「ウェンディのことよくわかってるね?」

「はい。大切なお友達ですから」


両手を握りこんでいつになく力んだルーチェさんに、つい笑みがこぼれた。

ここまで迷いなく言い切ってくれるなんて、ウェンディは果報者だな。


「ルーチェ!んな馬鹿は置いてレベリング行くぞ!」


耳をピンと立てて叫ぶウェンディに俺とルーチェさんは揃って噴き出すと、ウェンディを追いかけた。


ネットゲームの女性の装備は華やかですよね、うらやましい

ブクマ、評価、感想、どんとこいです。

対戦よろしくお願いいたします

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