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6話

 階段の前に止まり、王に向かって礼をするルルフィアーノ令嬢。


「面をあげよ。ルルフィアーノ嬢」


「陛下、ご機嫌麗しゅう」


 ゆったりとした動作で立ち上がる令嬢。


「何用で参った?」


「バ……、エリオット王子が私と婚約破棄をしたいようです。つきましては、陛下。私と結んだ契約を履行していただきたい」


 ああ、とうとうこの日が来てしまった。こうなるのではとうすうす感じていた。

 王子が王になれなくなる唯一の条件がある。それが、この婚約破棄に関わっているのだ。元々、エリオット王子は王になる資格などない。この事実を知っているのは、極少数。俺はエリオット王子のことを見なくてはいけなかったから、そのことを知らされたのだ。

 エリオット王子は本当は王様にはなれない。そして、エリオット王子は王様になる唯一の道を自らの手で閉ざした。



 陛下が妃を寵愛していたなんて、真っ赤な嘘だ。陛下は妃の家、妃の父のことを疑っていた。この国の情報を隣国へ売っているのではないかと。なかなか尻尾を出さない一家に陛下は行動を起こす。

 メルローゼ伯爵家の娘を妃とすることに決めた。それが噂の寵妃であった。だが、実際には陛下と妃の恋愛話なんてものはない。妃は他に愛する男がいたし、陛下は妃が何か知っているのではと情報を引き出そうとしただけ。つまり、彼女を利用しようとしていたのだ。

 表向きは妃を寵愛しているアピールをしていた。裏では妃は好きな男との密通を繰り返す。陛下はそれを気づいていて、彼女のことを放置していた。そして瞬く間に彼女は妊娠する。

 周りは陛下と妃の初めての子だと喜ぶが、本当のところは妃と妃の愛する男との子ども。陛下との子ではなかったのだ。


 陛下と妃は契りを交わしたことはない。陛下は、子どもができることはあり得ないとわかっていた。妃は陛下に「この子は陛下の子である」と言い続けた。産まれたのは男の子。もちろん、紫の髪ではなかった。妃の好きな男が持っている髪の色だった。本来の王子の髪の色は……。


 妃は生まれた子どもの顔を見ることなく死んでいった。死因は大量出血だった。後日、メルローゼ伯爵家と隣国とのつながりの証拠をようやく手に入れた。伯爵家はその罪を厳正な審議の下、適切な処分を下された。満場一致で死刑は決まっていたらしい。そして、伯爵家は滅びた。残ったのは、妃が生んだ子どものみ。陛下は何を考えたのか不明だが、子どもを次期王として育てようと決めた。子どもの髪は紫色へと変化させた。


 生まれた子どもの本来の姿については箝口令を敷いた。また、それを知っている者にお金を積んで出て行ってもらった。だから、妃の生んだ子どもが王族の血を引いていない子であると知っている者は極わずかなのだ。



 エリオット王子は陛下の子ではない。王家の血筋を引いていないから。彼が王様になれる方法は私、公爵家の娘、ルルフィアーノと結婚することだけだった。そうすれば、バカでも操りのいや、傀儡の王様として最上の地位にはついていられたのにね。残念なことに、彼は何も知らないのだもの。王家の血を引いていないことも、私と婚約破棄をしたら廃嫡になるということも知らない。私は奈落の底へ向かう道を、この真実を求めてしまったというのに……。

 何も知ろうとせずに好き放題やってきたバカな王子は、陛下によって現実を突きつけられるだろう。暗闇の沼地に突き落とされて二度と這い上がってこないようにされるといいわ。バカ王子のお守はもうこりごりなのよ。

Copyright(C)2018-莱兎/世理

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