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5話

「メロドアダ男爵、エリオット王子があなたの娘であるルリアナ様を婚約者にしたいと、セルフィス公爵家の娘であるルルフィアーノ様との婚約破棄を願い出たようです」


「そ、それは! おめでたいことではないか!! 王家に我が家の血が混じるとは、なんと素晴らしいことだ。娘が王様の妃に選定されたことを誉に思う。光栄なことだ。王様、ありがとうございます」


  顳顬(こめかみ)がピクピクと反応してしまう。この男爵、話が理解できていなさすぎる。自分の都合の良い方に解釈しかできないのに、よく貴族なんてものをやってこれたな。普通だったら、他の奴らに陥れられて、男爵の地位なんてなくなっているものだ。しかも、王はまだ健在している。王を蔑ろにしている発言として、不敬罪になっても可笑しくはない。

 ああ、メロドアダ男爵が恐れ多いことを言うから、傍観していた貴族が一人倒れた。それを横目で眺めるが、そこへ駆け寄る人はいない。騒がしくしたら、王に指摘されるし、これ以上彼を不機嫌にさせるのも好ましい選択とはいえない。だから、皆動かずにいるのだ。倒れた貴族が泡を吹いていても、貶すことはない。次倒れるのは、自分かもしれないから。


「何度も言わせるな。誰が発言することを許した? 男爵、そなたの頭は卵白でできているのか。それとも、中身のない殻でできているのか」


「ら、卵白? 殻?? も、申し訳ございません。しかし、王様が選んだ妃が我が娘というのがとても華々しいものに思え、この喜びをお礼として伝えようと思ったしだいでございます」


 王様の妃に選ばれたのではなく、次期(・・)王様の妃に選ばれたのだ。まだ予定、候補に過ぎないが、王子の頑固さでは決まったも同然だな。それはそうと、何度この男爵は間違えれば済むのか。あの冷徹な眼差しを無視できるほどの図太さが備わっていて優秀な人材なら、どんなに重宝されたことだろう。本人がこの駄目さ加減では話しにならないが……。頭の回らない人間の考えていることはわかりやすい。あと、なぜ王は卵を例えにして遠回しに頭が悪いといったのか不明だ。卵が嫌いだと前に王城内で聞いた気もするが、謎だ。


 王の息子が一人しかいないから、次期王はその息子しかいないと思っているのだろう。王家の血筋からしか王になれない。その身に流れる血が王になれる証。その血がなければ、王の資格さえもらえない。だから、次期王は決まったも同然と未来に思いを馳せているのだろう。貪欲な人間だ。こんな人間が上に上がってきたところで利用され、すぐに蹴落とされる。自分の身の丈にあった位が一番だ。それが、わかっていない人間だから厄介なのだ。


「メロドアダ男爵。王は私だ。私は男爵の妃を娶る予定はない」


「それは、年齢差もありますし、無理なことでしょう。私が言っているのは未来の王のことでございます。彼、エリオット王子が私の娘を妃にするということですよ」


 この男爵の発言、今のアレクセイ王を不要と言っているようなものだ。本当に体の芯まで凍っていきそうだ。この男爵は能天気でおめでたい頭の持ち主だな。


「……、メロドアダ男爵。今の発言は不問にしよう。だから、黙っていろ。これ以上口を開くなら、不敬罪に致す。いや、ランドールのように一部分だけ凍らせるのもありだな」


 恐ろしいほど深い微笑みを浮かべて男爵の方を向いている王。男爵は俺の凍った片足を見て、ガクガクと震えながら、黙り込む。だが、その表情はとても不満げであった。


 辺りが静かになったところ、突然扉が開いた。そこにいたのは、セルフィス公爵家の娘。深紅の絨毯の上を歩き始める。歩いているだけなのに、優雅で周りに蝶が舞っているのではないかと思った。他の貴族たちも王のことを忘れ、彼女のその姿に見惚れている。だが、この令嬢がいるということは、最悪な状況になるのではないかと思った。


Copyright(C)2018-莱兎/世理

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