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1話

 一枚の紙に書かれている文章。

 紙の上部には「契約書」という文字が大きく太く書かれている。その内容を簡略に説明しよう。

 一、結婚することは決まったものとし、離婚は不可能とする。

 一、結婚したら、夫婦で一生支え合って生きていくこととする。

 一、同居して暮らすこと。お互いの不貞は許さず。

 一、お互いの殺傷は許さず。

 一、自殺すること、他殺を望むことは罪に値する。また、寿命以外の死を許さず。

 以上の内容を破れば、それ相応の罰を下す。



 誰もが見えることができる場所で、一人の男と女が手を握り合っていた。

「ルリアナ、お前を愛している」

「わたくしもよ。エリオット、あなたを愛しているわ」

 その言葉と共に、ガッチリと抱擁をする男女。

 一言物申すなら——。

「なに、この茶番劇」

 私は君らには付き合ってられないよ。

 冷ややかな視線で彼らを見つめている女の子がいた。


 マルベラス王国。

 王族や貴族が主体となって国を治めていき、権力の頂点たるものは王様。現在は、第二十三代目のアレクセイ陛下である。陛下の見目は麗しくもたくましい。

 背が高く、顔のパーツのバランスがよく整っている陛下。彼は細身であるが、剣を振るう人だ。だから、身体は引き締まっていることだろう。武芸に秀でているとも言われている。陛下の髪は毛先にいくほど濃い紫色になっていて、グラデーションのようであった。これは代々王族に現れる色。また、明るい緑がかった青、ターコイズブルーの綺麗な二つの瞳が印象的であった。


 この国には魔力があり、魔法を使うことができる貴族がいる。また、王族は魔力、魔法を扱うことが容易にできた。


 彼の陛下は正妃をご寵愛し、一人の妃しか娶らなかった。そのため、この世に残る彼の血縁は一人の男の子のみ。新たに子を産めば新たな子ができるかもしれない。問題は、正妃様が一人目の子を産み、そのままご臨終なされたことにあった。陛下は大変正妃様をご寵愛されていたので、新たな妃を娶ることを拒んだのである。さてさて、この生まれた男の子を亡くさぬように、大切にかつ厳しく育てなければならなくなった。王の血縁はただ一人。後継者は彼のみ。いざ育てようと育てたのは良かったのだが……。


 どこで育て方を間違えたのか、わがままばかりを言うようになってしまった。自分の思い通りにいかないと癇癪をおこし、人に当たるようになる。

臣下たちは彼のことをほとほと見放して、彼を傀儡の王にすると決めた。その手綱を握るように頼まれたのは、セルフィス公爵家の一人娘、ルルフィアーノであった。そう、私は望まない結婚、政略結婚をさせられることになったのだ。

 この恋愛の国と言われるマルベラス王国で、政略結婚をさせられるのだ。ほとんど九割の人が恋愛結婚をしている。身分の壁はあるが、よほどのことがない限り身分の差があっても結婚ができる国だ。そんな国で、私は政略結婚をするのだ。陛下や陛下の妃、私の父や母たちが恋愛結婚をしている中で、私は政略結婚。ふざけんなと物申してやりたいが、グッと堪えてなにも言わなかったわけがない。なぜなら、国が滅びるくらいなら自分を犠牲にしようなどとは全く思っていないからだ。政略結婚の契約を結ぶ際、条件を三つほど提示した。

 一つ目は、バカ王子が結婚破棄といった時には政略結婚自体を白紙に戻すこと。二つ目は、バカ王子の廃嫡だ。三つ目は、バカ王子自身のお金から慰謝料を払ってもらうこと。私の貴重な時間をバカ王子のせいで潰されるのだから、それくらい当たり前のことだ。

陛下たちは頭を痛そうに押さえていたが、この条件を了承してくれた。この賢王である陛下からなぜあのバカ王子が生まれたのだろうか。


 まぁ、ドロドロのスプラッタにまみれた話はあるかもしれない。

 王様はお妃様をご寵愛していたようだけど、お妃様は他の男性と密通してたって噂話があるくらいだもの。知らない方が身のためなので、噂話の真実は確かめなかった。夫婦間の問題に首を突っ込んだら最後。こっちに火の粉が飛んでくる。だから、多分ドロドロのスプラッタにまみれた話はなかったってことにしとこう。私はまだ命が欲しいもの。


Copyright(C)2018-莱兎/世理

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