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振り返ればあやかしがいる。  作者: アイザワ咲香
第零章 僕が死んだ日の話
9/12

ごめんなさい。

まだ零章です。

「着いたぞ!ここがワレの家だ」


 犬神と別れてから約十分後、僕は一件の家の前にいた。

その家は一階建ての木造住宅で、周りの家と比べると少し大きいが豪邸というわけではなく、藍色の瓦屋根で素朴な作りをした、案外普通の家だった。


「もっと豪華なところに住んでるかと思った」

「ワレは3人家族だからな。この位の広さで十分なのだ。――さて、父上の所に行くぞ」


カゲロウは僕の手を引っ張り家の中に入る。

中に入ると、家の真ん中には囲炉裏があった。周りには三枚の座布団が並べられており、燃え残った牧が灰の中に入っている。左側は台所になっているようで、大きな水瓶とかまどと小さな流し、高く積み重なった牧が置いてある。流しの中には野菜の入った桶があり、立派なキュウリが桶から飛び出していた。

カゲロウは真っ直ぐ一番奥の部屋へと進み、勢いよく襖を開けた。


「父上ー!帰ったぞ!」

「おかえり、私の息子」


 部屋の中には、柔らかい笑みを浮かべた男が窓辺に座っていた。

男はくすみのある茶色の浴衣を着ており、肩まで伸びた髪はカゲロウの母親と同じで、真っ白だった。

しかし、何よりも目を引いたのは、男の背中に生えた巨大な羽だ。後ろの壁がはっきり見えるほど透明で綺麗だった。

今のままで十分綺麗なのだが、カゲロウは七色に輝く羽を持っていると言っていたはず……。

僕がジッと羽を見ていると、父親は僕の疑問を察したようで、笑顔で答えた。


「息子から僕の羽について聞いていたのかな?――今日は曇りの日だからね。私の羽は陽の光に当たると綺麗に見えるんだ。ところで、君は息子の友人かい?」

「そうだぞ!ワレの友人のアカシだ!」

「……友人?僕が?」

「ち、違うのか?ワレはアカシを友人だと思っておるのだが……」


友人。

上下関係なく、対等に親しくしている関係のこと。辞書にはそう書いてあった。

生前の僕には友人がいなかったから、実際はどういった関係なのかわからない。

でも、そうか。カゲロウは僕を友人だと思ってくれているのか。

上下関係のない対等で親しい関係だと……。

僕の顔は自然と笑みを漏らす。


「いや、友人だよ」

「そうか!ならよかった!」

「息子の友人かぁ。では、もう聞いているのかもしれないけど、私はウスバカゲロウの妖です。よろしくね。」


 父親は軽くと頭を下げ、微笑んだ。

僕も改めて自己紹介をしようと口を開いたが、何と自己紹介をしていいのかわからない。

犬神が言うには、僕は幽霊でもあるし妖でもある。しかし、逆に言えば幽霊でもなければ妖でもない。

僕は少し考えてから言った。


「元人間のアカシです。よろしくお願いします」

「へぇ、元人間かぁ……人間?」


 父親は目を見開き驚く。


「息子!彼が人間って本当かい?」

「本当だぞ。今は違うがな」


 カゲロウは僕を連れて来た経緯を簡潔に話す。

父親は黙って話を聞いていたが、終わるころには眉間にシワをよせ頭を抱えていた。

父親は一つ大きなため息をつくと、僕の方に向き直り深々と頭を下げる。


「まさか他者を人だと思っているなんて――。ごめんねアカシ君。まさか息子がそんな勘違いをするとは思わてなくて」

「いやいや、大丈夫ですよ!」

「でも、ちゃんと謝らないと。――ほら息子も」

「ワレは先程謝ったぞ。母上に言われて」

「母さんに会ったのか」

「会ったぞ」

「そうかぁ。すごく怒られただろう?」

「……あぁ」


 カゲロウは母親に怒られた時の事を思い出したのか、頬を押さえ、泣きそうな顔をする。

父親はカゲロウの様子を見て笑った。


「なら、これ以上私が怒る必要はないね。アカシ君、私の嫁――すごく怖かっただろう?」

「はい……。カゲロウ――息子さんもすごく反省してました」

「カゲロウ?」

「ワレの名前だ。アカシに名付けてもらったのだ」

「そうか、僕らには決まった呼び名はないけど、人間は一人一人に呼び名があるからね。アカシ君が僕らを呼ぶとき名前が無いと不便か。……よし、私も自分で名前を付けてみよう」


 父親は楽しそに考え始めた。

時折「あれがいいかな」「でも、あれもいいなぁ」など、顔を綻ばせながら独り言を言っている。

……考え始めてから約一時間ほどが経ったと思う。

「『カゲ男』はどうかな?」


父親は満面の笑みで言った。

……仲良くなれそうだ。

そして次も零章の予定……。

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