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振り返ればあやかしがいる。  作者: アイザワ咲香
第零章 僕が死んだ日の話
7/12

7

「あら、驚かせちゃった?」


カゲロウの母親は口に手を当て、クスクスと笑う。

母親は白無垢のような服を着ており、淡い桜色の着物を、腕を通さず肩にかけていた。


「な、なんで、僕の名前?」

「私はこの国の事ならなんでも分かるのよ。」

「はぁ……」


 母親は笑うだけでそれ以上なにも答えなかった。


「この世界――この国を造ったのは母上なのだ。この国は母上の手のひらの上と言っても過言ではない。だから、なんでも知っているのだ」


 なるほど……?


「この世界を造ったって事は、カゲロウの母親は神様みたいなものなの?」

「まぁ、そうなるわねぇ」


 神様か。

そう言われると、神々しい感じがする。

カゲロウも息子なら、意外と神々しかったりするのだろうか?

僕はカゲロウを見つめる。

ぱっちりとした目は確かに母親に似ている。しかしまぁ、なんというか……。


「そうは見えないな」

「お前絶対に失礼なことを考えただろう」

「いや、別に」


 カゲロウは目を細め、物言いたげな目をしていた。


「さて、私の息子――カゲロウちゃん」

「なんだ?」

「貴方が私を呼んだ理由はわかってるわ。でも、その前にちょっといいかしら?」


母親はゆっくりとカゲロウに近づき、頬に手を添える。


「……お仕置きよ」


僕がカゲロウに初めてあった時にしたのと同じように、母親はカゲロウの頬を思いっきりつねった。


「痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」


 ……いや、同じではない。僕より力を入れている。

カゲロウは泣きながら暴れるが、母親は一切力を緩めない。


「ねぇ、カゲロウちゃん。人様に迷惑をかけちゃダメだって言わなかったかしら?」

「言ってました!」

「そうよねぇ、言ったわよねぇ。じゃあ、なんでアカシ君を妖の国に連れてきたのかしら。……そういえば、『連れてきたことに感謝しろ』って言ってた気がするのだけど、どういう意味かしら」

「ご、ごめんなさい!」

「ごめんなさいじゃなくて理由を聞いてるのよ。ねぇ、どうしてかしら?」


 母親は笑顔だった。その笑顔が怖さをより引き立てている。

横を見ると、先程まで喧嘩していた二人が黙って立っていた。

心なしか顔が青ざめている気がする。


「――アカシが死ぬ直前に、走り回ったり友達を作ったり、人助けをしたいって思ってたから。そ、それなら、この国に来れば全部叶うと思って……ワレも人間に来て欲しかったから、丁度いいと思ったのだ!」

「ふーん、なるほどねぇ」


母親はやっと手を離す。

カゲロウの頬にはくっきりと、指の跡が残っていた。


「でもね、カゲロウちゃん。感謝しろはダメだと思うのよ。――そうは思わない?」

「思います」

「そうよねぇ。だったら、アカシ君に言うことがあるでしょう?」


カゲロウは涙目で僕の前まで来ると深々と頭を下げた。


「この度は勝手にこちらの世界に連れてきてしまい、申し訳ありませんでした。それから、感謝しろなんて言ってすみませんでした。感謝するのは私の方です」


 一人称が変わるほど怖かったらしい。

実のところ、僕は別に怒っていない。生きている時には外にすら出られなかった僕が、元気に動き回れているのだから。


「別にいいよ、カゲロウ。怒ってないからさ」

「アカシ……!」


 カゲロウは心の底から嬉しそうに顔を上げる。


「よかったわねぇ。アカシ君が優しい子で」

「あぁ、本当にアカシでよかった!最初は可愛い女の子が良かったのだが、なかなか居なくてな。『お前でいいや』なんて言って連れてきたのだが、お前で本当に良かったぞ!」


 カゲロウは笑う。満面の笑みで笑う。

自身の後ろで口には笑みを浮かべながらも、目は一切笑っていない母親に気がつかずに・・・・・・。

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