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第5話 〜嫉妬〜 堀井才人より


なんでこうなるんだ……。


俺は勇者として、この世界に特に仲のいい堂川と加藤と一緒に召喚された。


♢♦︎♢♦︎



俺は小学生の時に初めて空手で負けた。

相手の名前は堂川龍二。パッとしない奴だった。

初めて堂川を見た時、俺は「こいつにだけは負けない」と自信を持って言えるぐらい堂川に負ける気がしなかった。

そして、俺と堂川が初めて試合をしたのは全国大会の2回戦だった。

いくら負ける気がしなかったと言っても、相手は全国大会に出ている。油断はしてはいけないと自分に鞭を打って試合に挑んだ。



結果は大敗である。

何も出来なかった……。



それから俺は打倒堂川を掲げて空手に打ち込んだ。


中学2年生の時、俺は親の転勤で引っ越すことになった。

前の学校に心残りはあったが、気持ちを切り替えて新しい教室に入ったのを今も良く覚えている。

そして教室に入った瞬間、目に入ったのは俺が空手で目標にしていた堂川龍二だった。

俺は休み時間になると話しかけて来る周りのクラスメイトを無視して、堂川の方に行った。


「お前って、堂川龍二だよな?」

「うん、そうだけど……」


俺の事を覚えている訳がないよな。

俺の中では忘れられない試合だったが、堂川の中では大勝した一試合に過ぎない。

そんな、試合の記憶なんか残っているはずがない。


「俺と堀井くんって会った事あったか?」


やはり覚えていなかった。

それに目標にしていた人から君付けされるのは気が引ける。せめて、君付けは辞めてもらおう。


「堂川、俺を君付けするのは辞めてくれないか?それに、一応俺達は会った事がある。一回だけだが……」

「それっていつ?もしかして空手の全国大会か?」


まさか、堂川から答えが出てくると思わなかった。


「そう!その時だ!」

「思い出したよ、2回戦で当たったはずだったよな?」

「堂川、なんでそんなに覚えているんだ?」


素直に気になった。普通敗者は記憶に残りやすいが勝者は覚えていない時の方が多い。


「俺って、記憶力だけは自信があるんだ!」


それから俺は堂川をライバル視するようになった。

だが、俺はまだ一度も空手で堂川に勝った事がない。

そして、勉強でも堂川と俺は雲泥の差だった。

堂川の定期テストの合計は5教科で493点だったのに対して俺は356点だった。

俺もスポーツをやっている者としてはそこまで低くないかもしれないが、堂川と比べ物にならないくらいの差があった。

そして、俺が唯一堂川に勝っていたと思っていたのは顔だ。

俺はクラスで中々モテた。

それに対し堂川は告白された事がないらしい。




そして中学3年の時同じクラスになった女の子を好きになった。


名前は加藤咲。


なんと、堂川の幼馴染だ。

加藤さんとは堂川を通じて仲良くなった。

堂川の話せる、唯一の女子らしい。

俺は加藤さんと距離を縮めて行き、遂には堂川が居ない時に2人で帰るくらいの関係になった。


そして、時は経ち高校受験が近づくなか俺は志望校を決める事が出来ていなかった。

理由は俺は空手で色んな高校から推薦を貰っていた。

しかし、堂川が行く高校が気になって決め切れなかったのだ。

正直に言うと堂川と同じ高校に行きたかったのだ。

そして、とうとう俺は堂川に何処の高校に行くのか聞いた。

すると、意外なことにそれほど難しい高校ではなかった。受ければ俺も受かるぐらいの高校だ。

志望動機は家に近いかららしい。

堂川にはもったいない高校だ。

しかし良かった。


俺も堂川と同じ高校を受ける事にした。

学校の先生からは反対されたが、それでも堂川と同じ高校に行きたかったのだ。

そして見事、俺は堂川と同じ高校に受かる事が出来た。

それに、加藤さんも同じ高校だったのだ。


これは俺の頑張りに対するご褒美だったのか……。



しかし、堂川が空手をする事は無かった。

怪我をして、医者からもう辞めろと言われたのだ。

俺は信じられなかった。

今までライバル視していた堂川が空手を辞めるのだ。

俺はどうやって堂川に勝てば良いのだろう……。


高校1年の冬、俺は又もや辛い現実を突き付けられたのだ。


俺は放課後、加藤さんに呼び出された。

その時は一瞬淡い期待をしたのも嘘ではない。

加藤さんの話は恋愛相談だった。


その時点で嫌な予感はしたが、その時は考えない事にした。


加藤さんが俺に聞いてきた理由は恋愛経験豊富そうな人に聞きたかったそうだ。それに誰にでも話せる事じゃないと言われた。


俺なら良いのかよ!


内容はこうだ。

加藤さんは堂川の事が好きみたいだ。

そして、いつかは告白したいのだそうだが堂川の察しが悪すぎていつも告白出来ないらしい。

だから、どうやってすれば加藤さんの気持ちを堂川が気付けるかって聞いてきた。


俺は一瞬頭の中が真っ白になった。

唯一勝てると思っていた恋愛で俺は堂川に負けたのだ……。


その時は笑って誤魔化したがその日の夜はずっと泣いていた。


まったく、恥ずかしい……。


それから2ヶ月後、加藤さんと堂川と3人で帰っている時、俺達は異世界召喚にあった……。


「どうか、この国を救ってほしい」


異世界で初めに言われた言葉はこれだ。

俺は頭が真っ白になった。

そんな中、加藤さんが王様に今の状況を聞いてくれた。


「……2人は巻き込まれたという事じゃな……」


俺はこの言葉だけが頭の中でぐるぐると回った。

俺は冷静を失い声を荒げる。


「ちょっと待て!巻き込まれたって、巻き込まれた2人の安全は確保されてるんだよな?それに俺たち帰れるのか?」


俺は必死だった。

しかし、隣では堂川が冷静にこの状況を把握しようと平気な顔をして立っていた。



まただ……。

こんな時でもあいつは何で冷静なんだ……。



そして、堂川は冷静に勇者を見極める方法を王様に聞いた。


王様は『ステイタスオープン」を教えてくれた。


早速、俺は教えられた通りやってみる。



『ステイタスオープン』



そして、俺は初めて堂川に勝ったと思った。

なぜなら、勇者の職業を持っていたのは俺だったのだ。


そして、俺は自信を持って俺のステイタスを写しだした。王様も大いに喜んでくれた。


そんな俺に対して堂川は俺ら3人の中で一番弱かった。


初めて堂川に勝てた!


そして、俺たちは部屋に案内された。

舞い上がる俺に対して加藤さんは静かに堂川を見ている。

加藤さんは堂川がステイタスを弄っていると疑っていたみたいだ。

俺はそんなこと有り得る訳が無いと思いながら堂川に本当のことを聞いてみる。


結果はこうだ。


堂川はステイタスを弄っていた。

しかも、堂川のステイタスは俺よりも強い。

そう、俺はまた負けたのだ……。







なんでこうなるんだ……。






布団に包まって泣くのを堪えた。

俺は負けず嫌いなのかも知れない……。



何か1つでも堂川に勝ってやる!




堀井才人くんは嫉妬深いですね……

それに負けず嫌いです。

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