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第24話 ~領主との対面~

 外に出ようと扉に手が触れる瞬間、ドン!と勢いよく扉が開いた。


「ここに堂川龍二と加藤咲はいるか!?」


 目の前に立っているのはダルダルの引き締まらないお腹のどデカいおっさんだった。顔には立派な髭を生やし、服も今まで見たことがないような装飾が施されたものだ。


「支部長!ここに堂川龍二と加藤咲はいるのかと聞いているのだ!」


 男は顔を真っ赤にし、息を荒げながら支部長に対し怒鳴っている。

 支部長は少しあっけにとられた後、慌てて片膝をつき男に向かって頭を下げた。


「領主殿、そちらにいる者が堂川龍二と加藤咲でございます。今回は我がギルドに登録をしている冒険者が御子息に対して大変無礼なことをしたと承知しております。よって今回の件でのギルドの対応は二名を謹慎処分にすることにいたしました」


 支部長は頭を下げたままこういった。

 領主は立派な髭を優しく触りながらこちらを一瞬見るとまた支部長の方へと向き直しゆっくりと口を広げた。

 

「バカモノーーー!!」


 領主はすごい声量で支部長に対して叫んだ。

 支部長はビクッとなりながらゆっくりと顔を上げった。汗がゆっくりと支部長の頬を滴るのがこちらからも見えた。

 

「ギルドと致しましては、領主様の要望とあれば二人の除名処分も考えております。しかし、この二人は非常に優秀な人材でありまして、除名処分にするのはいささかもったいないかと……」


 支部長は震えた声で言った。

 こんな緊迫した場面なのに俺はどこか余裕で、おいおいさっきと言っていることが違うじゃないかと心の中で言っていた。これは自分のしたことが間違いではないと自信があったからだと思う。


「バカモノーーーー!!!!」


 また、領主は叫んだ。それもさっきよりも大きな声で。

 支部長はもうダメだ。もう打つ手がないとでも言いたげに涙目になっている。まるで小さい子供が「なんでこんなことをしたんだ?」と怒られて何も言えなくなっている時の顔を見ているかのようだ。


「ど、どうすれば…よろしいでしょうか……」


 領主はフムと一息吐くとまたゆっくり口を広げた。

 またあの大きな声が響き渡ると思い俺は身構えた。しかし、それは杞憂に終わった。

 領主はとてもやさしい声でこう言った。


「お主は何か勘違いをしているようだな」


 支部長が「へ?」というような顔で領主を見る。


「そもそもわしはここに怒りに来たわけではない」


 領主はそういうとまた一息つき、話し始めた。


「あいつは昔から甘やかしすぎたのじゃ。あのように育ててしまったわしの責任じゃ。だがあれでもわしの息子、情はある。だから今回はなかったことにしてくれないか?次、同じようなことが起きた時にはあいつの継承権をなくし次男に家を継がせる。家ではしっかり言っとくので今回はどちらも処分はなしにしてくれ。いいか?支部長」

「もちろんです。それでは二人の謹慎処分は取り消させていただきます」


 支部長がホッとした表情でそういうと、領主は俺に小さく頭を下げると部屋の外へと出ていった。

 領主の大きな足音とが聞こえる中、ドンと扉が閉まった。扉が閉まると足音も聞こえなくなり部屋は静寂に包まれた。

 この中で初めに静寂を破ったのは俺の後ろにいた咲だった。


「はぁ~、怖かったぁ」


 そういうと咲は俺の肩に手をつき、もたれかかってきた。

 次に支部長がゆっくりと立ち上がりながら口を開いた。


「さっき領主様が言ったとおりだ。君たちの処分は取り消された。今回、君たちを不快にしてしまった。すまなかった。」


 そういうと、支部長は深々と頭を下げた。


「こちらこそお騒がせして、すみませんでした」


 俺はそう言って支部長に対して頭を下げる。横で咲も頭を下げていた。


「君たちは本当によくできた人だ。今日はゆっくりと休んでくれ。明日から引き続きよろしくな」

「はい。では失礼します」


 俺は最後に小さく頭を下げて部屋の外へと出る。咲も同じように頭を下げて俺に続いて部屋を後にした。


 帰り道、咲は最悪死刑になるんじゃないかと思って怖かったと言っていたが、今でも王都では指名手配されているので、そんなに変わらなんじゃないかと思いながらも、怖かったなと咲に同意を示しておいた。

 どこかで、女の子には正論で返すより同意で返した方がいい、というのを見たのを思い出したからだ。



気が向いたら投稿します。完全に自己満です。

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