第23話 〜規約違反~
「お前らほんとにDランクなのか?」
「あぁ」
おれはギルド証を見せる。
「ほんとだぜ、まさかこんなにも強いDランクがいるなんてな」
「ほんとだぜ、しかも成人したてホヤホヤだろ?」
この世界での成人は16歳だお酒も16歳から飲めるようになる。だからと言って、まだ飲んだことはないのだが。
やはり、お酒は20歳になってからだ。
「そんなことより本当にありがとな。おかげで命拾いしたぜ」
「そうね、あなたたちがきてくれなかったら私たちは今こうして話すこともできなかったでしょうから」
「よかったらなんだが、なんかお礼をさせてくれないか?」
「そうだな、一度町に戻ってお礼させてくれ」
「そうだな、ついでにギルドにも報告しないといけないしな」
4人パーティーの、男3人は息ぴったりでそう言った。
そういえば顔も似ている、兄弟だろうか。
「一緒に来てくれるよな?」
「お礼させてくれるよな?」
「飯おごってくれるよな?」
「お前は逆だろ!」
唯一の女メンバーの、お姉さんが最後に言った男の頭を思いっきり殴った。
ほんと息のあったパーティーだ。
俺は咲の顔を見ると咲は小さくうなずいた。
エラも隣で行きたそうに上目遣いで俺の顔を見ている。
なんやかんやでエラも可愛いと不意に思ったのは心にしまっておこう。
「じゃあ、お願いします」
「おぉー、一緒に来てくれるのか嬉しいな」
「嬉しいぞー」
「楽しいな」
「だからお前だけ違うんだよ」
また、さっきの男を姉さんが全力で殴った。
こうして、俺たちのはじめての迷宮探索は幕を閉じることになった。
俺たちは話し合いの末にギルドにある酒場でお礼をされることになった。
ビシャ・スパイダーから取れた素材を換金することができるのでありがたい。
ちなみに、魔石だけは4人パーティーのものになりそれ以外の素材は俺たちの自由になった。
初めは「何もいらない」と言われたが、さすがにそれは気が引けるので遠慮した。
ギルドに着き、真っ先にギルドカウンターへと向かった。
「依頼は完了です。ほかに素材なども引き受けますがお持ちですか?一応、昇格の足しになるのですが。」
「あります。」
俺は、4人組から譲り受けた素材を出した。
「え?あなた達が倒したのですか?」
「はい……」
「少しお待ちください。」
ギルド職員は一息置いた。
「報酬は依頼と素材を合わせて銀貨1枚です。そして昇格です……Cランクに昇格です。史上最速でのCランク昇格です。」
周りからの視線が急に集まる。そして、「おぉぉ!」と歓声が上がり、ギルドがお祝いモードに変わった。
すると、咲が肩をたたかれた。
振り返るとピカピカの鎧に包まれた高貴なオーラ丸出しな男がいた。ちなみにその後ろにいる二人は完全にピカピカ鎧の引き立て役だ。
「そこの女よ、俺と一緒にパーティーへ行かないか?そのモブ男では到底食べさせてもらえないものを食べさせてやるよ。」
咲は俺の後ろに隠れた。
「おいおい、隠れるなよ。」
男は詰め寄ってくる。
俺は一歩後ずさった。
それが間違いだった。
男は咲の手を握った。
俺は咲を掴んだ男の手をとっさに振り払った。
その時力が入りすぎた。
叩かれた肌は赤くはれた。
「貴様!何をする!俺は男爵家の息子だぞ!ここは俺の家の領地だぞ!ただで済むと思うなよ!」
男は顔を真っ赤にして殴り掛かってきた。
俺は殴り掛かってきた腕をつかみ背負い投げをした。
男の殴り掛かる勢いで背中を強く打ち付けた。
男は咳をしながら立ち上がり俺をにらめつけた。
「覚えてろよ!親父が許すわけがないんだからな!」
男はそう吐き捨てると走ってギルドから出て行った。
「お前は痛い目見るぞ!」
「後悔するぞ!」
一度静寂が訪れたあと歓声が沸き上がった。
「やるなお前!」
「感心したぞ!」
酒場で酒を飲んでいた者たちがこちらにやってきた。
「大きい声では言えないが、あいつはいつもあんな感じでな。俺たちもうんざりしていたんだよ。一発バシッと決めてくれてありがとな!」
俺は少し戸惑ったが、同時にうれしい気持ちになった。
「おい!堂川龍二支部長室へ来い!」
一声で賑やかだった周りが静まった。
「ついでに加藤咲も来い!」
俺と咲は叫んだ声の主の男についていった。
支部長室と書かれたドアの前で立ち止まった。
「どうぞお入りください。」
あれ?この人が支部長だよな?
男はドアを開けた。
中には超絶美人が高級感のある、いかにも校長室にある机と椅子みたいだ。
「突然呼んですまない。さっきの騒動についてなんだが、お前に処罰を与えることにした。悪い、本当なら正当防衛を認めるのだが、今回は規約違反になることになった。本当にすまない。」
「て、ことは除名処分ですか?」
「いやいや、それはない。一か月の謹慎処分だ。迷宮に入ることを禁止し、買取は受け付けない。お前たちみたいな有力な奴を見捨てるわけないだろ。話はこれまでだ。今回は本当にすまなかった。」
「失礼します。」
俺たちは扉へと向かった。
久しぶりの投稿です。
またこれぐらいの期間が開くかもしれません。




