第18話〜別れ〜
またもやペースが落ちてしまいました。
一度書いたデータが飛んでしまうというトラブルもあったものの、結局は小説を書く時間の確保ができなかったです。
これからも掲載は不定期になると思いますがよろしくお願いします。
盗賊との一戦から2日が経った。
次の町ナタリアまではあと3日と言うところで野宿の準備をしている。
予定ではもう少し進んでいるはずだったが少し遅れている。
理由は盗賊に会って以降、魂がどこかに飛んで行ってしまったような堀井にあるだろう。
堀井はあれから全ての事にやる気を無くした。
今まで賑やかだった旅は静かになり会話は必要最低限しか話さなくなった。
今はまだ、魔物が出ても難なく倒せているがこれからもっと強い魔物が出ないと言う保証はどこにもない。
今の俺たちでは呆気なく殺されてしまうだろう。
まずは堀井をどうにかしなければならない。
「りゅーくん……」
「なんだ?咲」
咲がもう我慢ならないと言うような表情で話しかけてきた。
「堀井くんこのままで大丈夫なのかな?」
「うーん、大丈夫ではないだろ。このままだったら魔物に襲われていた殺されてもおかしくない」
咲は一瞬、口に手を当てて小さな悲鳴を出したがすぐに取り直した。
「どうすれば前みたいになってくれるんだろう?」
「そんなの俺に聞かれても……こんな表情の堀井を見たことないし……」
咲は顎に手を置いて少し考えたがる何も思いつかなかったのか、こっちを向いて今にも泣き出しそうだ。
俺はここで一ついい方法を思いついた。
「咲!ちょっと耳を貸してくれ」
「なに?」
咲に作戦を話すと咲は笑顔で
「うん!大丈夫だと思う!」
それから少し前を歩いていた堀井に話しかける。
「堀井!」
「堂川!」
俺が堀井に話しかけた瞬間堀井は急に止まって俺のことを呼んだ。
「どうした……?」
俺がそう聞くと堀井は真剣な顔で話し始めた。
「俺さ。この2日いや、ずっと前から思ってたんだけど。このメンバーで一番使い物にならないよな」
「いや!そんなことは……」
堀井の真剣な言葉に俺は強く言い返せなかった。
俺は自分の精神力の弱さを一生後悔する事になる。
「そうだよな。それで俺、思ったんだ。俺は勇者でこの立派な剣もあるのにそれを使いこなす事も出来ない……」
堀井は左腰に携えた剣を撫でるように優しく触りながら弱い声で話し続ける。
「……堂川。お前は剣も武術も使える。剣の腕も加藤さんよりも強くて武術も俺より出来る」
「そんな事な……」
「お前がそんな事ないって思っているのは知ってるよ。お前はいつもそうだ。何も出来なそうな顔をしてなんでも難なくこなす。正直そんなお前がまじで羨ましい。でも、俺はそんな事出来ない。このままだったら剣術も使えないのにこの剣を持って、いつもお前の足を引っ張るんだ。そんな俺を俺は許せない」
堀井の言葉に徐々に熱が加わっていく。
「だから、俺は今から北に向かう」
「……えっ?」
堀井の言っている意味を理解するのに少し時間が掛かった。
「それでお前の意思は変わらないのか?」
「ああ、絶対に変わらない!北に行って俺は剣の修行をして戻ってくる」
「本当に行っちゃうの?私は絶対行って欲しくないよ!ねぇ、りゅーくん!堀井くんを止めてよ!」
俺はなんとも言えない。
たしかに行って欲しくはない。でも、堀井はそれを望んでいる。
「ねぇ!りゅーくん!」
「行く……」
「堂川お前がどう言おうと俺は行くぞ。これは俺の意思だ。お前だったらわかってくれるよな?」
堀井の気持ちは何となくだが分かる気がする。
俺も堀井が転校してきてから、堀井の周りに集まるクラスメイトを見ては堀井の存在感に憧れていた。
今の堀井はそんな気持ちなんだろう。だったら俺が何と言おうとも引き留めることはできないだろう……。
それでも、最後に一言だけ言いたい。
「絶対に帰って来いよ!」
「ああ!堂川!お前よりも強くなって帰ってくるよ」
俺は堀井を笑顔で見送る事に決めた。
「堀井くん、本当に行っちゃうの?」
「うん……」
「りゅーくんはそれで良いの?」
「ああ……」
「わかった。だったら笑顔で見送るべきだよね!」
咲はさっきからは考えられないほどの笑顔を作った。
「絶対に強くなって帰ってきてね!」
「ああ!」
こうして、堀井は北にある剣の聖地アルサレムに、俺と咲は2人で次の町に向かう事になった。
この決断が将来的に大変な失敗になるとは思わずに……。
堀井才人
・種族:人族
・年齢:17歳
・容姿:髪の毛先が金色に染められており、少しチャラい印象。空手の影響で筋肉質ではあるがそれほと太いわけではない。いい意味で細い。普通に女子モテるイケメン。




