第1話 〜異世界に〜
ご飯を食べて眠たくなってきた5時間目、俺は窓の外を見ながら授業を受けている。
「次は龍二、この問題を解いてみろ。」
先生が俺を当てている。
うざい、うるさい、黙っとけ
「龍二!解けないのか?」
うざい先生がにやにや笑いながらこっちを見てくる。
その顔がうざいので、こっちを見るな!と思いながら黒板を見て問題を確認する。正直、問題は簡単だった。
「えっと、√71です」
先生は口を開けたまま塞がっていない。
周りの生徒も『おぉー』と歓声を上げている。
そんなに難しい問題じゃないはずだ。
確かにひらめくまでは大変かも知れないがひらめいて仕舞えば後は中学生でも出来る問題だ。
「流石、全国模試1位だな」
クラスの何処かからそんな声が聞こえてくる。
「あぁー!参った!授業をまた聞いてないから難しい問題を作って当ててやったが、また正解するとは……」
先生はそんな事を言っているが全然そう思えないほどの難易度だ。
もう少しマシな問題を作って欲しいものだ。
そのあとはいつも通りの授業に戻った。
俺は退屈な授業を寝そうになりながらも何とか乗り切った。
「堂川!お前なんであんな難しい問題解けるんだ?」
チャイムが鳴って先生が出て行ったと同時に中学の時からの友達の堀井才人が話しかけてくる。
「そんな事言われてもあのくらいの問題ならお前にも解けるだろ?」
「はぁ?何言ってんだよ無理に決まってんだろ!」
あのレベルの問題が堀井には解けないらしい。
「お前、やっぱり天才だよ!」
「うーん?どうだろうな?それなら友達を作る天才になりたかったよ!俺は友達を作りたくても作れないから」
そう、俺には殆ど話せる相手が居ない。
堀井とあと1人、幼稚園の時からの幼馴染の加藤咲だけだ。
それに対して堀井は顔が整っていて愛想が良いのでクラスの人気者だ。しかも、リーダーシップまでとれる。俺とは全然違う人生を送って来た人だ。
「そうか?お前が話し掛けるな!みたいなオーラを出してるからだと思うぞ!」
そうなのか、俺にはそんなオーラが出ているのか……。
「というか、結構注目されてる方だと思うし」
「それって勉強が出来るからか?」
「うーん、どうだろ?それだけじゃない気がするけどな」
はぁー、正直に言うと俺は友達が欲しい、自分からもっと話し掛けないといけないのは分かっているのだが、相手に否定されるのが怖いのだ。
本当に人生やり直したい。
異世界召喚とかも憧れるしな。
「おっと、授業が始まるぞ。お前寝るなよ!」
「わかったよ」
そう言って堀井は自分の席に戻っていった。
♦︎♢♦︎♢
そして、6時間目も睡魔と闘いながら何とか終わり、放課後になった。
俺はクラブに入っていないから家に帰るだけなんだが。
「堂川!一緒に帰ろうぜ!」
「何だ堀井、空手部はどうした?」
「今日は久しぶりのオフなんだ!」
やけに高いテンションでそう俺に言ってくる。
いつも思うのだが部活をしている奴は好きでその部活に行っているのに、やけにオフを欲しがる。
何とも不思議だ。部活が嫌なら辞めれば良いのにといつも思う。
「りゅーくん!!」
周りの人が振り向くぐらいの大声で俺を呼んでる女子がいる。
俺が喋れる唯一の女子の咲だ。
こいつは女子剣道部で次期主将だと言われている。
咲も堀井も全国レベルで全国大会の常連さんだ。
そして、俺の自慢だが、俺は剣道と空手で全国1位に中3でなった。
だから、高校でもどちらかはやろうと思い剣道部に一度入り掛けたのだが、怪我で医者から止められた。
俺の怪我はもう治らないらしい。
「咲もオフか?」
「そうだけど、そんなに驚くこと?」
剣道部と空手部はいつも体育館を取り合っていて両方がオフになる事は珍しい。
「被る事もあるんだな」
「あるよ、そら」
咲は当たり前でしょ?と言うような顔をして俺を見ている。
「よし!じゃあ一緒に帰ろうぜ!」
こうして俺はこの後、自分達にどんな事が起きるとも知らずに帰ることとなった。
♦︎♢♦︎♢
「なぁー!たまには寄り道しようぜ」
堀井が俺に言ってくる。
「駄目だよ、学校の校則にも書いてあるでしょ!」
そして何故か俺でなく咲が答えている。
確かに校則には書かれているが俺はそんな事を気にしないのでいつもなら行くのだが咲は真面目で絶対にそれを許さない。
「今日は諦めろ、咲を説得できないだろ?」
「うーん……。また今度行こうな!」
「おう!分かったよ」
まだ、納得はしていないようだが素直に承諾してくれた。
それから少し歩くとゲームセンターが見えて来た。
堀井はさっき、行かないと言ったくせにじっとゲームセンターを見つめている。
「堀井くん、早く行くよ!」
そう言いながら咲は堀井の腕を引っ張る。
俺は少し前を歩いていたが、あまりにも来ないので堀井を説得する為に戻った。
そして、予期ていなかった事が次の瞬間起きる。
俺が堀井と咲を落ち着かせようと2人の肩に手を置いた時だ。
地面から魔法陣の様な物が浮き出てきて気づけば目の前が真っ白になっていた。
咲と堀井の肩に手を置いている感覚はまだある。
そして徐々に光が薄れていった。
そして目に飛び込んで来た光景は現実ではあり得ない光景だった。
俺たちの前には童話で出てきそうな王様と王女様の様な格好をした2人と2人の騎士と言わんばかりの鎧を着た人1人が並んで立っている。
「どうか、この国を救って欲しい」
アニメなどでよく聞くあのセリフを俺たちは現実で言われたのだった……。
誤字脱字や文法が変な場所が多く有ると思います。お気づきの際はコメントでご報告下さい、修正させて頂きます。