表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「よく頑張ったでちゅねぇ~」という言葉を聞きたくて

作者: tktk1919

 僕たち働き蜂には毎日ノルマがある。それは女王様よりも課せられている、『花粉を最低1g以上貢ぐこと』だ。僕は落ちこぼれでいつもノルマの半分も達成できず、皆から馬鹿にされている。僕はこのノルマが大嫌いだ。

ただ、僕にも目標はある。1年に1回表彰される蜂キングに選ばれることだ。蜂キングに選ばれると、女王様から「よく頑張ったでちゅねぇ~」をという言葉を頂ける。それを目標にして、成績ビリではあるが毎日働いている。


「おはようございます…」

 今日も8時ギリギリに出社し、嫌々ながら六時間働く。僕たち働き蜂の一日のスケジュールは、朝にミーティングをして、その後、各自で花粉を探しに行くという流れだ。

 僕は今日もいつもの野原に行こうと支度する。支度をしていると、誰よりも早くエース蜂さんが飛び立っていくのが見えた。エースさんは五年連続蜂キングに輝いた蜂だ。今年で引退という話を聞いていて、来年以降がチャンスだと蜂界では噂されている。

(エースさんは誰も知らない秘密を知っているから、蜂キングになっているのでは?)

 僕はエースさんが何か秘密を持っているのではと思い、こっそりエースさんについていくことにした。

10分ぐらい経つと突然エースさんが飛ぶのをやめた。何かあったのかと様子をうかがうと、うめき声が聞こえてきた。 

「ああぁぁぁっっ!腰がぁぁぁ!」


「さっきは感謝するぞ、まさかぎっくり腰になるとは思っておらんかったわ」

 そういって、エースさんは大声で笑った。

「お前さん名前は?」

「私はビリ蜂と申します」

「ああ、お前さんがあのビリ蜂君か」

 万年ビリをとることで僕の名前を知っている人は多い。

「お前さんも大変じゃの、ノルマがなかなか達成できないのじゃろ?」

「そうですね…やっぱりつらいですね…僕がここに居る意味があるのかな…っていつも考えてしまいますね…」

 笑顔でごまかそうと思っても、自然と涙が流れてしまう。

「それに…ノルマも達成はしたいのですが…どうせやるなら僕はエースさんのように蜂キングになりたいですね…」

「ほう…蜂キングになりたいと!それだけの向上心があるのであれば、一つだけ儂からアドバイスをしてもよいか?」

 僕は涙を流しながら夢を正直に話すと、エースさんは笑わずに真剣な顔で提案してくれた。


 エースさんは僕が泣き止むのを待ってじっと待ってくれていた。

「そうじゃの、アドバイスといっても実はお前さんが先ほど言ったことをどこまで実行できるかなのじゃよ」

「え?どれですか」。

「『どうせやるなら』とお前さんはいったじゃろ?その考え方をどんな時でも持ち続けるのじゃ」

「すみません、エースさんのおっしゃることが少しわからないのですが…」

 エースさんは一息いれ、楽しそうな顔をして続けた。

「そうじゃな、必要最低限を超えないことをやり続けても何も意味がないのじゃ。それは、時間を浪費しているだけになるのじゃ。『どうせやるなら』の精神ならば、その時間はずっと将来への投資になる。挨拶一つとっても、どうせやるなら元気に挨拶をしてみる。そうすることで、将来の相手との関係が円滑になる。何事に関しても、必要最低限を超えることを日々できるようになり、将来に投資ができれば蜂キングになれるのじゃ。儂はそれを意識し続けたのじゃ」

 僕は今まで考えたことがなかった価値観に触れ、自分が少し成長できた気がした。


3年後

 表彰台の一番上にいる僕に対して、「よく頑張ったでちゅねぇ~」と女王様が笑顔で言ってもらえた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ