六話
また遅くなりました。
ギリ今週です。
朝起きると、母親はいなくなっていた。
書き置きには、
「もう現場に入らなきゃ。今度はバラエティなのよ。しっかり笑いを取ってくるんだから!」
と、可愛い猫のイラストとともに書かれていた。
「猫なんて、この世界からいなくなって随分たつのに」
キャラクターとしては生き残っている。
可愛いものは、文化として保護されるのだ。
「学校……」
メイアは呟く。一人でいると、どうしても独り言が多くなってしまう。人の声を求めているのだろうか。
寂しいのかもしれない。
メイアは自分を冷静に分析する。
「アルセ」
昨日の母親の発言が思い出される。少し顔を赤らめた。
「好きなんかじゃないし」
「うん?」
近くにアルセの顔があった。
「え⁉︎」
「昨日メイアのお母さんから電話があって。朝メイアを迎えにいってあげてって。ほおっておくとまた町の外の方に行っちゃうでしょ」
アルセが微笑む。余計な気を回しやがって、とメイアは母親を恨んだ。
「で、好きなんかじゃないって何?」
アルセはにやにやとメイアを見つめる。
「何? 僕に恋しちゃったの?」
なわけないよねぇ、と、アルセは笑い飛ばしたが。
メイアはちょっぴり、可能性を感じてしまっていた。