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ともしびスペース  作者: 厚木さめ
1/8

一話

  この世界はどうにも終わってる。

  メイアは皮肉げに笑った。

  街を一歩出れば、そこはもうゴミの山。科学という利便の代償となった環境のシンボルだ。腐敗臭が漂っている。バイオテクノロジーを研究して、そして採算が取れなくて失敗した時の生ゴミの匂いであろうか。いや、それは大昔のことだ。きっとホームレスが街の外でのたれ死んだのだろう。

  メイアという少女は、この世界が嫌いだった。

  科学がもたらした利便性。それは一部の者にしか意味のないことだ。反重力など、なんの役に立つのだろうか。

  街は小さい。ゴミに圧迫されて、圧縮されているかのよう。高いビルが無数に建っている。そうでもしないと場所が足りないのだ。

  メイアは、街の外を眺めるのが嫌いではなかった。

  科学によって滅ぼされゆく人間の、罪そのものを眺めている気がするからだ。

「もっとマシな世界に生まれたかった」

  メイアは呟く。

「この時代の前……こうなる前の時代に生まれたかった。科学と人間がまだ共生してたころ」

  終末。

  メイアはこの時代を、そう呼んでいた。

  大きな街を残して、世界は産業廃棄物に飲み込まれてしまった。ある時代にこぞって作られた原子力発電所。それよりも発電効率の良い方法が見つかってから、原子力発電所は次々と無くなった。

  核のゴミを残して。

 仮のゴミ置場は正規のゴミ置場になり、そこには核のゴミ以外の物も捨てられるようになった。膨れ上がったゴミはどんどん世界を飲み込んでゆく。

  大きな街ですら、小さくなってしまった。

  そうしてできたのが、この世界。

  歴史の授業で習ったことを頭に思い描きながら、メイアは街の外れ、外との境目を去る。

  学校に行かなければ。

  学校は街の真ん中付近にある。

  走らなければ間に合わないかも。

  少しだけ、足を早めた。


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