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使命

なぜこの世界に飛ばされたのか

なにをすればいいのか

やっと本題です

「…ここは?」


目を開けると俺は真っ白な世界に居た。

なんだ?また異世界か?

勘弁してくれ。

おいおい今は丸腰だぞ。

熊なんて出てきたらお陀仏間違いなしだ。

周囲を見渡すがなにもない。

しばらくボーッとしている。

するとどこからともなく声が聞こえてきた。


『あー、あー。えーっと、何て読むんだこれ。あがつまか。あがつまりくと。汝は転生神の命によりこの世で使命を全うされたしー。門を開けよー』


なんとも緊張感の無い女の子の声が聞こえたあと俺の前に一枚の扉が現れた。


なんだ?ここに入ればいいってことか?


扉に手を当てるとゆっくりと音を立てて開いた。

そこには雲にあぐらで座っている少女がいた。

ショートヘアーで金髪の少女は白いローブに身をまとい小さな羽が生えている。

歳は十二~三くらいだろうか。


「やー!やー!あがつまりくとー!良く来たな!」


少女は雲からピョンと降り腕を組み仁王立ちをする。


テンション高ぇな


「私は転生神ディート。貴方をこの世界に転生させた張本人であります!」


ビシッと指をこちらに向けて決める少女。


は?ちょっとまて


「いやまて。俺をこの世界に呼んだのはお前なのか?」


「いかにもっ。というかさっきそう言いましたよねー!馬鹿なんですか?アホなんですか?」


小馬鹿にしたように笑う。


お兄さんちょっとムカついたゾー?


俺はディートに近づく。


「な、なにか?」


戸惑うディートは俺を見上げる。

俺は無表情で頬をつねる。


「いはい!いはいれす!!なんれすかぁ!かみはまだぞ!ぶれひもの!」


なにも言わずにつねる。


「ごめんなはい!ごめんなはい!ちょっとふざけまひた!ひっはらないで!」


謝ればよい。


頬をつねるのをやめディートから離れる。


「あー痛かった…何ですか急に…」


涙目になりながら頬を撫でるディート。


「何ですかじゃないよまったく」


転生させたのがこいつならば全てを知ってる筈だ。

洗いざらい聞き出してやる。


「何で俺がこの世界に呼ばれたか説明してもらおうか」


「この世界を救うためです!貴方は私たち転生神の中で選ばれたいわば救世主みたいなものなのです!」


救世主?なにそれめんどくさそう。帰りたい。

てか、神ならお前が救えよ。


「貴方には使命が課せられています。それが達成され次第元の世界に戻れるのです!」


うわーめんどくさ。

冗談じゃない。

あ ほ く さ。

辞めたらこの仕事?

俺の意思は固まった。

答えはひとーつ。


「断る」


「なんでぇ!?」


ディートが驚きの声をあげる。


「なんでもクソもあるか。めんどくさいわ。早く戻せよ」


「えー、ちょ、ちょっと待ってください。剣と魔法の世界ですよ?夢のファンタジーですよ?」


「俺は現実を生きるっ」


「うーん…そう言われましても正直言うと帰れないみたいな」


ディートはばつが悪そうに呟く。


「は?」


「実は使命を果たす以外の帰る方法は無い的な」


「ちょっとまてや。俺帰れないの?」


「端的に言えば。はい」


「いやいや!帰らせてくれよ!」


冗談じゃないぞ!

帰れないってまじか!?


「すいません帰れないです」


「なんで!」


「一回呼んだら戻しちゃ駄目な決まりなんですよ」


ふざけんなよぉ!

帰れないって…えぇ…?


絶望に刈られているとディートは俺の顔を覗きこみ話す。


「あー…言っときますけど私貴方を救ったんですよ?」


「救った?」


どういうことだ?


「一から説明しますから良く聞いておいてくださいね?質問はあとからまとめて受け付けます!」


ディートはコホンと小さい咳をしてから話す。


「まず私たち転生神がこの世界に呼ぶ人の基準は残り寿命が二十四時間以内の人なんですよ」


ちょっとまて一文目からわからない。

寿命が二十四時間以内ってことは俺死ぬの?


「その人達を無作為に抽出してこの世界に転生させます。そしてこの世界で救世主として貢献してもらって成功させた人は寿命を延長して元の世界に戻す。いわば救済システムです」


頭が混乱しているがシステムは何とか理解した。


「次にあなたの役目ですがずばり貴方が今いる町の復興と繁栄です」


復興と繁栄?


「見ればわかる通りこの町は市長の私物と化しています。まずこの状況を壊し再建してほしいのです。いわばスクラップアンドビルドってことですよ」


そんな事言われてもなぁ…

ただの一般人に何ができるってんだ。


「説明は以上です。なにか質問は?」


とりあえず寿命について聞かせてもらう。


「さっきこの世界に呼ばれるのは寿命が二十四時間以内の人って言ったが俺は電車に轢かれて死ぬ運命だったから呼ばれたのか?」


「いいえ。貴方を線路に飛び込ませたのは私です。ちなみに足が悪いおじさんも私の変装です。本来あそこでは死にませんがお出掛けの際、帰りに飲酒運転のトラックに轢かれてお亡くなりになります」


まじかよ…

にわかにも信じられんが。

てかやっぱり足が勝手に動いたのは間違いじゃなかったみたいだな。


「今、元の世界はどうなっている?この世界で死んだらどうなる?」


「今、元の世界の時は止まっています。貴方が使命を果たすか死ぬまで動きません。もし貴方がこの世界で死んだら轢かれ状態で再び動き出します。ちなみに貴方はこの世界で歳はとらないのでタイムリミット的なのはないですよ。まぁ使命を果たすつもりが全くないと判断されたら強制送還されますけどネ」


くそ…やっぱりそうか。

まぁ死んで戻れるなら今すぐ死ぬしな。

何となく予想はついていた。


「でもなんでこっちに転生させるときわざわざ俺を飛び込ませたんだ?」


「未来の改変を防ぐためです。もし貴方が死んで元の世界に戻ったとき確実に死んでないと貴方はその日にトラックに轢かれて死ぬことがわかっているから死なないような行動を取るでしょう?神の力を介入せずに死期を伸ばしたり縮めたりするのはダメなんですよ」


「そのくらい許せよ。ケチ」


「許せるわけないじゃないですか!そもそもこの転生だって貴方にとってはチャンスなんですよ?感謝してほしいくらいですよ!」


プリプリと怒るディート。


まぁたしかに寿命を伸ばすチャンスをもらったんだ。

むしろ幸運だ。


「冗談だよ…んでまぁ町を救えってのはわかったんだがなんか特殊能力とかスキルとかはないのか?」


圏外のスマホとゲロスプレーだけじゃ流石に無理があるぞ。


「もちろんありますよ。あなたのスキルはこれです!」


ディートは紙を一枚俺に渡してきた。

その紙にはシェイプシフターと書かれていた。


「シェイプシフター?なんだこれ」


「この能力は貴方自信、そして物の姿を変える事が出来るのです!」


まじか。くそ強チートスキルじゃん。

石ころを銃にして突撃すれば国落とせるぞ。

簡単だな。心配して損した。


「まぁ姿形を変えるだけでその物の使い方とかは変わらないんですがね」


ディートはハハハと笑いながら言う。


は?


「ちょっとまて石ころを銃に出来たりしないのか?」


「もちろんできますよ?まぁ弾は撃てませんけどね」


「はぁ!?なんだこのクソザコスキル!」


なんて使えないんだ!

ただの見かけ倒しじゃないか!


「そんなこと言わないでくださいよ!それが限界なんですよ!」


「それが限界ってことはお前の力不足って事じゃねぇかよ!上司呼べ上司!!もっと強いスキルよこせ!」


「そんなことしたら私のレベルがいつまでたっても上がらないじゃないですかぁ!」


「んな事知るか!お前の経験値稼ぎの為に命かけるこっちの気持ちにもなれや!メタルスライムじゃねぇんだぞ!」


「うるさい!うるさーい!これしかないんです!我慢してください!」


「こんなクソザコスキルでどー救えってんだよ!もうちょっとましなスキル持ってこいやぶぁーーか!!」


「……っ!!」


はっと気がつくとディートはプルプルと震えて俯いていた。

あっ、これは泣く。


「うっ…そんな…事っ…言わなくても…良いじゃないですかぁぁぁ……」


目尻に涙が浮かぶ。


「す、すまん…少し言い過ぎた。あれだよな使いようによっては強いよな。ディ、ディートは凄いなぁ!おにーさんタスカッチャウヨー!」


「本当…?」


「うんもちろん!」


「なら良いですけど…」


ディートは涙ぬぐう。


アホの子だ。良かった。

まぁでもチャンスをもらったのにあれは言い過ぎたな。

ついカッとなってしまった。


「んで、これはどうやって使うんだ?」


「自分の姿を変えたかったら目を瞑ってなりたいものになれー!って思えばなれますし物の姿を変えたいなら物に向かって思えば変わりますよ。リベート。つまり戻れ!って念じるまで効果はつづきます」


よかった。恥ずかしい詠唱は要らないようだな。

それに制限時間がないのもいいな。


「ちなみに物から物へ。物から生き物へ。生き物から生き物への変身は出来ますが、生き物から物への変身はできませんので注意してくださいね」


うーむ。なんともややこしいな。

まぁ人を物にできないってだけ覚えとけばいいか。


早速目を瞑むる。


むむむ…俺よ…美少女に…美少女になれぇ!!


……


しかし俺の姿は変わらない。


「ちょっと!変わらないじゃないか!」


ディートに問うとはぁ…とため息を漏らした。


「まだ習得してないんだからなれるわけないじゃないですか…バカなんですか?そして美少女って…」


まったくこの人は…みたいな視線ムカつくなこのやろう。


「このやろ!先に言えよ!ってかなんで美少女って知ってんだよ!」


「私は神ですよ?人心掌握なんて朝飯前ですよ」


「くそっ…んで、どうやったら取得できるんだ?」


「えーっと、いまから私が言うことを復唱してください」


そういうとディートは先ほどの紙を読み始めた。


「我は転生神ディートの命により」


ディートがくいくいと指をまげる。


読めってことか。

いちいち鼻につくな。


「我は転生神ディートの命によりー」


「使命を果たすことを誓う」


「使命を果たすことを誓うー」


「神よ我に力を与えたまえ」


なんだよお前が神様じゃないのかよ。


そんなことを思ったが口には出さない。


「神よ我に力を与えたまえー」


「はいこれで大丈夫です」


もう終わったのか?

とくに変化は見られんが


「試しに何かに変身してみてください」


まぁやってみようか。

シェイプシフター!剣士!

目を瞑り脳内でそう叫ぶと一瞬俺の体が光る。

端の方でぼそっと「あっ、美少女じゃないんですね」と聞こえるが無視無視。


目をゆっくり開けると俺は西洋の剣士がつけるような鎧を身に纏っていた。


「おお!本当に剣士になってる!!」


「どうです?凄いでしょう?」


ディートはしたりがおで聞いてくる。


「ちなみに防御力は?」


「生身のままですよ?」


「ですよね」


本当に見かけ倒し用だな。


「てなわけでこのスキルで頑張って救ってください!」


「んな無茶な」


「出来ます出来ます!!人間やれば出来ます!」


「はぁ…」


「んじゃあ戻しますんで引き続き頑張ってくださいね」


「あ、ちょっと」


「なんです?」


「カリヤツネオって知ってるか?」


戻る前に聞いておこう。

なにか知ってるかもしれない。


「カリヤさんですか?私が呼んだわけではないですが知ってますよ?」


「あの人はどうなった?」


「えーっと魔物から町を守るっていう使命を果たして無事現世に戻られました。これ以上は個人情報なので話せませんが」


「ありがとう。それだけだ」


戻れたということが知れるだけで満足だ。

カリヤさんは戦死まで二十四時間以内の人だったから呼ばれたのだろう。

現世に戻ったということは終戦まで生き延びて天寿を全うされたのだろう。

それさえ分かれば満足だ。


それから俺の意識はゆっくりとフェードアウトしていき目を覚ますと家の中にいた。


窓からは朝日が差し込んでいた。


読んでいただきありがとうございました

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