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奴隷勇者の異世界譚~勇者の奴隷は勇者で魔王~  作者: Takachiho
第二章

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2-16.冒険者

「まずはレナ様の登録作業を進めますね」


 仁と玲奈は冒険者ギルドの新規登録手続きのために1階の受付カウンターを訪れていた。3階の応接室で合成獣キメラに関しての話が終わった後、バランに呼ばれたギルド職員の案内で受付に通された。ギルド職員が受付嬢に引継ぎを行った。カウンターを挟んだ受付嬢が、歓迎の意を示すかのように満面の笑みを浮かべていた。3階へ上がる前に会釈を交わした受付嬢だった。仁と同年代に見える受付嬢は、二つのおさげ髪を緩い三つ編みにしていた。濃い茶髪がギルド内の照明の中で映えて見えた。


「通常はE級からスタートとなりますが、今回は複数の推薦とギルド長の鑑定結果を受けて、C級での登録となります。間違いはございませんね?」


 仁と玲奈が同意を示すと、受付嬢は満足げに頷いた。


「では、こちらの受付用紙に必要事項をご記入ください。代理の方が記入されても構いませんし、文字が書けない場合はわたくしどもが代筆することも可能です」


 仁は玲奈の前に差し出された用紙を横から確認する。記入する項目は、得意なことと、受ける依頼の傾向のみのようだった。依頼の傾向は、採集や討伐、護衛、ダンジョン関連などいくつかの項目が書かれていて、その横にチェックを入れるようになっていた。


「名前、種族、年齢に関しては鑑定石を応用して作られた魔道具であるギルド証で自動的に認識されます」


 仁がこれだけでいいのかと疑問に思っていると、受付嬢が補足説明を加えた。


「得意なことの欄には、所持している技能や戦闘に主に使用する武器、魔法などを記してください。全て書く必要はありませんし、空欄でも構いません。こちらはギルドで公開され、パーティの募集や、一時補充などの際に参考にされます。受ける依頼の傾向も、指名依頼を出す際の参考資料となります。もちろんチェックを入れていない依頼を受注することも可能ですので、あまり深く考えずに記入なさって構いませんよ」


 受付嬢の説明を受けながら、仁と玲奈は小声で話し合い、玲奈の分も仁が記入することに決めた。仁は得意なことの欄には剣と氷魔法と記入し、依頼の傾向はダンジョン関連のみにチェックを入れた。帝国からの追手を考慮し、メルニールの外に出る依頼は極力受けるつもりはなかった。記入を終え、用紙を受付嬢に渡した。


「はい。ありがとうございます。それではレナ様。こちらのギルド証に手を乗せてください」


 玲奈の前に名刺サイズの金属板が差し出された。その板は銀色の光沢を帯びていた。受付嬢に言われるまま、玲奈がギルド証に手を当てた。受付嬢がギルド証の端に魔力を注ぐと、玲奈の手から魔力が吸い出され、銀光が波紋のように広がった。


「これで登録完了となります。レナ様が魔力を流せば名前、種族、年齢、冒険者ランクが浮かび上がり、身分証としても用いられます。ちなみに、銀色のギルド証はC級とB級用となっております。D級以下は銅色、A級以上は金色となります。なお、昇格を目指される場合は、依頼を完遂したり、ギルドへ素材を持ち込んだり、ギルドへの貢献度を上げてください。一定値を越えますとギルドから通知が行きますので、試験を受けていただきます。合格された場合、人格に問題がないようでしたらギルド長より昇格の認定がされます」


 その他にもいろいろな注意事項の説明を受付嬢から受けた。無理に昇格する必要もないが、下手なトラブルに巻き込まれないためにもしっかりと説明を聞いた。隣では玲奈が真剣な表情で何度も頷いていた。


「続いて、ジン様の登録に移りますね。ジン様はレナ様の奴隷ですので、奴隷冒険者としての登録となります」


 耳慣れない言葉が出てきた。仁は玲奈と同じくC級冒険者として登録されるものと思っていた。奴隷冒険者がどういうものなのか受付嬢に訊ねた。


「奴隷冒険者というのは、その名の通り、奴隷の冒険者のことです。通常の冒険者とは異なり、個人の冒険者ランクは存在せず、主人のランクに準じます。ジン様の場合はC級ですね。そして一番大きな違いは、奴隷冒険者単独では依頼を受けられない点です。依頼を受ける際は常に主人と一緒でなければなりません」


 仁は特に問題を感じず、安堵の息を吐いた。仁は了承の意を示し、受付用紙の記入を始めた。受ける依頼の傾向は主人と同じということで省略されていた。仁は得意なことの欄に剣と雷魔法と書きこんだ。実力をひけらかすつもりも、殊更非力に振る舞うつもりもなかった。その後、玲奈と同じように銀色のギルド証に魔力を流し込み、登録を完了した。


「これで冒険者登録は終わりです」

「ありがとうございました」


 仁と玲奈は受付嬢に頭を下げた。受付嬢は二人の礼を仕事だからとやんわりと制し、何事か思いついたかのように胸の前で手と手を打ちつけた。乾いた音が仁と玲奈に届き、耳目を集めた。


「お二人はどこかのパーティへの加入を考えていますか? パーティというのは一緒に行動する冒険者数人のチームのことです」

「必要に迫られれば検討はするかもしれませんが、現状ではその予定はありません」

「それでしたら、お二人でパーティ登録されるのをお勧めします」


 仁はパーティ登録のメリットとデメリットを訊ねた。パーティは2人以上の冒険者で登録できるそうだ。メリットとしては、依頼を受ける際にパーティとして受けることができるため、手続きが少なくて済むこと。更に、一番効率よくステータスを底上げする方法であるレベルアップに必要な経験値を魔物討伐で稼ぐ際、得られる経験値がパーティ内に均等に分配されるということだった。


 デメリットとしては、魔物退治で活躍した人が得られる経験値が活躍していない人にも分配されて減ってしまうことだが、仲間内で魔物を取り合ったりして不要な不和が生じるのを防ぐと言うメリットにもなっていた。後は必要以上にパーティ人数を増やすと、一人一人が得られる経験値が減り、結果的にレベルアップが遅くなってしまうくらいか。


「お二人はダンジョン探索を主に行うようですし、パーティ登録をしておき、必要に応じて人数を増やされるのがよろしいかと。ダンジョンは危険なところですし、十分な準備が必要ですよ。それに、パーティに所属していない冒険者は既存のパーティから勧誘を受けます。レナ様のようにいきなりC級に登録される実力者で、さらに奴隷冒険者であるジン様も付いてくるというだけで引く手数多でしょう。煩わしい勧誘を避ける意味でも、登録をお勧めします」


 不必要に仲間を増やすのは考え物だが、登録だけでもしておくのは悪くないように思えた。


「玲奈ちゃん。どう思う?」

「登録することのデメリットも気にならないし、してもいいんじゃないかな?」


 仁と玲奈が話し合っていると、受付嬢が言葉を重ねてきた。


「それに、その、レナ様は大変可愛らしい方ですので、男の冒険者たちが放っておかないかと――」

「登録します! 何が何でも登録します!」

「で、では、こちらにパーティ名をご記入ください」


 仁のあまりの剣幕に、受付嬢が若干引いていた。それでも笑顔を絶やさない辺りは流石だった。仁は顎に手を当てて首を傾げ、視線を上に向けた。しばらくそうしていた後、仁は瞳を輝かせて玲奈を見た。


「玲奈ちゃん。俺に決めさせてもらっていいかな?」

「いいけど、何にするの?」


 玲奈が頭を軽く傾かせた。仁が用紙に記入を始めると、玲奈が横から覗きこんだ。


戦乙女の翼(ヴァルキリーウイング)


 それは玲奈が出演したアニメ作品で玲奈の演じるヒロインが所属したチームの名前だった。その異世界ファンタジーもののアニメのオープニング主題歌の発売記念握手会で、仁は玲奈と一緒にこの世界へ召喚されたのだった。


「俺、玲奈ちゃんの翼になりたいからさ」


 仁の好きな玲奈のソロ曲に“翼になりたい”という曲があった。その曲は、一生懸命がんばっている人が更に飛躍できるように、大空へ羽ばたけるように、その人の翼になって応援し、支えたいという歌詞の曲だった。


 右の人差し指で頬を掻きながら言う仁に、玲奈が微笑を返した。


「「登録お願いします」」


 仁と玲奈は受付用紙の左右の端をそれぞれ掴んで、一緒に受付嬢に差し出した。


 こうして玲奈をリーダーとしたC級冒険者パーティ“戦乙女の翼(ヴァルキリーウイング)”が自由都市メルニールに誕生した。青白い大きな満月が二人を祝福するかのように、冒険者ギルドの上空で優しく輝いていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] いや、ちょっとヴァルキリー何とかには主人公が似合わないからもうちょいひねって2人の要素を合わせようよ? セリフもカッコよさはほとんど見えずクサイ
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