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金色《こんじき》の巫女姫 ~イケメンとショタは乙女の敵なのです~  作者: 圭沢
第三章 「金色の巫女姫」編

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38 再会、そして

本日2話目

 コリント卿たち闇神官への罠が成功し、全員の捕縛に成功したという報告を守護龍の祠の前で受けていると。



 ――何をしている、フィリアリア。早く来るのだ。



 祠の向こう側、切り立った崖の奥から、大気を震わすような深い声が唐突に私の脳髄に響き渡りました。

 皆にも聞こえたのでしょう、マーテル様が、クラヴィス様が、その場にいる全員が雷に打たれたように祠の奥の結界を見詰めています。


 そして、水を打ったような沈黙の中、岩肌に模した結界を通り抜けつつゆっくりと姿を現したのは――




 この国の守護龍、風の大精霊アルゲオウェントス。




 白緑びゃくろくに輝く鱗を全身にまとい、その長い長い躰をくねらせて宙を泳ぎ出てきて。


 私の目の前で、ぴたり、とその顔を止めました。

 縦に裂けた金色の瞳孔を持つ濃緑の眼が、私を静かに見下ろしています。



 うひゃ、という乙女らしからぬ声を飲み込み、数歩下がってどうにか視線を合わせてみます。



 さっきの声は、この間、『精霊の裁き』をやって身体を失いかけていた私に話しかけてきたあの声です。ゲオ、と呼ばれていましたが、まさか守護龍アルゲオウェントスだったとは。


 でも、この濃厚な存在感は、かなり前にも感じたことがあるような気がするんですよね。



 ……ひょっとしたら、このフィリアの身体を得たあの時に、離れた山にいたのがこの白龍さんかもしれません。



 たしか、私が暴走を始めた時に慌ててこちらに向かってきていた、とび抜けて濃厚な存在。

 実体を持つ、アウローラと似たような高位の存在なのでしょう。

 そして、その時も今も、悪意は全く感じられません。あるのはただ――



 と、そこに、草花が風に遊ぶような透きとおった声が流れてきました。



 ……お母様、準備は整っています。さあ、こちらへ。



 光の神鳥アウローラがどこからともなく現れ、ふわり、とアルゲオウェントスと私の間に舞い降りてきました。

 また一段と大きくなっています。全身から光の粒子を静かに放散していて、その姿はまさに光の大精霊そのもの。



 ……どうぞお乗りください。結界の奥へとお連れしましょう。



 守護龍アルゲオウェントスの目と鼻の先、誰一人身じろぎすらしない広場の中央で、優雅に向きを変え、輝く翼を広げて恭しく地に伏せる神鳥アウローラ。


 へ?

 思わず周囲を見回して――どうにかマーテル様の視線を捉えました。

 マーテル様も状況を把握できていないようですけれど、小さく頷いて、どうやら「大精霊様たちの言うとおりに」と言っているようです。

 まあ、敬虔なマーテル様なら、ラエティティア様の眷属たる大精霊に逆らう判断はしないと思いますけれど――


 こちらの逡巡を察したのか、アウローラは僅かに頭を持ち上げ、淡々と周囲に告げました。



 ……他の者は先に村に戻っているように。心配することはありません。後ほど私が責任を持ってお母様を村へとお返ししましょう。



 ですがやはり、その言葉はマーテル様を始め全員の理解を超えたもので。

 至極日常的なようで、実は前代未聞のその内容に、皆が揃って人形のように固まっています。


 大精霊にこうして母親呼ばわりされて送り迎えしてもらうのって、やっぱり変ですよね。私自身は妙な親近感があって、なぜか違和感はないんですけども。



 でも結局、やっぱり誰も何の言葉も返さずに。



 ええと。

 集まる全員の注視の中、私は恐るおそるアウローラの背中に手を掛けました。――こうしろってことで良いんだよね?


 この二人には確かに待ってると言われていましたし、私自身、この先に行かなければいけないという不思議な予感もあって。

 アウローラの背中に乗るのは初めてではないということも、私の気を少しだけ楽にしてくれています。


 まあ、こんな風に自分からよじ登るのは初めてですけれど。

 この美しい背中を土足で踏むのはなんだか躊躇われ、私はそうっと全身を陽だまりの匂いがする背中に滑らせて、周囲を靴で汚さないようゆっくりと跨りました。



 ……うふふ、お気遣いありがとうございます、お母様。少しだけ目を瞑っていてくださいね。



 私はこくりと頷き、広場を一瞬だけ見渡してから――みんな、呆然とこちらを見詰めたままで、クラヴィス様だけが「後でしっかり説明しろ」とばかりに私を睨んでいます――、息を大きく吸い込んで言われたとおりに目蓋を閉じました。



 音もなく上昇したのが分かります。

 隣にアルゲオウェントスの濃厚な気配が寄り添っています。

 次いで微かな加速感、そして瞬間的に身体を何かが通り抜けた違和感。



 ……さあ、着きました。目を開けていいですよ。



 胸の高鳴りを抑えつつ、ゆっくりと目を開けると――
















 そこは、息を飲むほど神秘的な谷間でした。

 幽かな霞がたなびき、そこに、太陽の光が幾筋も折り重なるように差し込んでいて。


 そして、目の前、谷底一面に広がっていたのは、白く可憐な花をいっぱいにつけたマヤリスの大群生。



 わぁ……。

 自然に声が漏れてしまいます。



 そう、ここに咲き誇っているのは、谷間の姫百合とも呼ばれる可憐なマヤリス。イネス姉さまに買ってもらった、例の鉢植えに元々植えられていたあの花なのです。

 お店のたくさんの花の中から、私が一目で惹きつけられた不思議な花。豊かで清浄な森の奥でしか育たない貴重な花が、ここには目の届く限り、何千株も咲き誇っていて。



 思わずアウローラの背中から降りて一歩、二歩、しゃがみ込んでその可憐な花を間近で眺めていると。



 ――ようやく来たな、フィリアリアよ。



 頭の上から、大気を震わす深い声が降ってきました。


 この神秘的な谷間の主、アルゲオウェントスです。慣れた様子で谷底の外側を囲むようにその長躰を横たえていて、これが彼の定位置でしょうか。


 それはまるで、このマヤリスの大群生を守っているようで。


 うふふ。

 この人やっぱり悪い精霊じゃなさそう。




 ――当たり前だ。




 うげ。

 怒られちゃいました。

 大人一人がまるまる入れそうな鼻の穴から、ふんす、と突風が吹き出ています。


 でも、あれ? 口に出してはいなかったと思うけど――



 ――我が名はアルゲオウェントス。魔を祓う風を司るもの。そなたが考えていることは顔に全て出ておるぞ、ラエティティア様の愛娘よ。



 わわ、ごめんなさい――って、ラエティティア様の娘?



 ――何を今さら。生物学的に言うと違うが、生物的には娘であろう。それにそもそも、フィリアリアという呼称自体が神の娘という意味であろうに。



 えええ、ちょっと何言ってるか分かりませんですよ?

 フィリアリアなんて呼び方、アウローラに呼ばれて初めて聞きましたし?



 ――ほう、今の人の世にフィリアリアという言葉は残っておらなんだか。ならば、長らく存在をなくしていた光の大精霊、アウローラをそなたが生み出したのが良い証拠だ。まさかいきなりアウローラを復活させるとは思わなかったがな。



 ……うふふ、本当に感謝しております、お母様。



 ええと、ええと……?

 本当に私がアウローラの産みの親で、だからその私はラエティティア様の娘ってこと?

 うわあ……なんだか頭がついていかないです……。



 ――そなたは本当に何も知らぬのだな。その現身を形作る前、あれだけふらふらしていたというに……。



 そう告げてまたその巨大な鼻の穴から、ふんす、と突風を吹き出す守護龍アルゲオウェントス。

 うへ、私がずっと漂っていたことも知ってるんですか? でもあれって――



 ――仕方ない、まずは大まかに教えてやるとしようか。



 そう言って守護龍はその長躰をくねらせ、これまで人が知ることのなかった世界の歴史を語り始めたのでした。




 今の世界に瘴気が蔓延しているのは知っているな――アルゲオウェントスはそこから話を始めました。


 こくり、と頷く私。それはもちろん知っています。

 そのせいで大地は荒れ果て、人は精霊の祝福を受けなければ生きていけないのですから。



 ――その瘴気は何故発生したかは知っているか? いや、その顔は知るまいな。



 金色の瞳孔を眇め、若干不機嫌そうな白龍さん曰く、全ては世界の精霊たちの数が減ったのが原因だと。


 きっかけは遥か昔。

 当時、人間の社会はひとつの大きな国の下、今とは比べ物にならないほどの繁栄をしていて。

 ですが、ある日突然、その中枢にいた人たちと契約していた闇の精霊たちが暴走を始め、その力を抑えて調和を図っていた光の精霊をも駆逐してしまったらしいのです。


 闇の精霊は本来、風や火といった基本四属性の精霊たちに休息を与え、更なる成長の糧とさせる特異な精霊。

 それが四属性の精霊たちを強制的に眠らせ、その成長の糧とするべき力を、こともあろうに自らの成長に注ぎ込みだしたのです。


 それに気付いた闇精霊の天敵、光の大精霊アウローラが闇の精霊たちを一掃するも、脅威的な成長を遂げていた闇精霊たちと相打ちのような形で自身の存在も消えてしまって。

 結局、全てが終わってみれば、世界からほとんどの精霊たちの姿が消えてしまっていたのです。



 ――それを救ったのが我らが主、ラエティティア様だ。



 あ、その部分なら聞いたことがあります。

 精霊がいなくなったことを嘆き悲しんだラエティティア様が涙を零し、それが一株のデアステラとなって精霊たちを再び生み出した、とか。



 ――だが、精霊がいなくなった世界を支えなければいけなくなったラエティティア様はそれだけで御力を殆ど取られてしまっていてな、多少精霊が増えたとはいえ、その後ずっとそのままの状態が続いているのだ。



 精霊は再び生み出されましたが、それでも以前ほどの数にはなっていないそうで。

 歪に回り続ける世界に、いつしか滅びの気配が漂い出して――



 ――その滅びの気配が、瘴気だ。そして、そんな世界に現れたのがそなたなのだ。フィリアリア……いや異界の女神よ。



 うーんと、確かに瘴気が滅びの気配っていうのはなんとなく分かります。でも、今度は異界の女神って……。


 …………。


 話を聞くと、この身体を得る前、ふらふらと漂う私が初めにこの世界に現れた時、瘴気に紛れてなにやら異質な魂が迷い込んだようだ、とこの白龍さんは思っていたそうです。

 ですが、異常な速度で成長し、いつしか大精霊に匹敵する存在になっていたそうで。


 けれど、ただひたすら漂うだけで何をする訳でもなく――うわわごめんなさい! 見られてるなんて知らなかったんです!――、何より、ラエティティア様と同じ金色の神気をまとうようになっていて。


 そこでアルゲオウェントスは気付いたそうです。

 これは、ラエティティア様が異界より呼び寄せた、神の同胞なのではないか、と。


「ふぇっ! ないない、それはないですっ!」


 思わず叫んでしまいました。

 だって、私、ごくごく普通の女の子だったと思うんですよ? まあ、あんまり覚えてはいないですけれど。



 ――まあ、前世がどうであれ、この世でそなたの魂がラエティティア様の深い寵愛を受けているのは事実だ。なにより、そなたが人の現身うつしみを望んだとき、ラエティティア様ご自身が顕現して祝福と共にその身体を授けたのだからな。



 え、この身体、ラエティティア様が作ってくれたということ!?

 うわ、それも知らなかったですよ、私。

 まあ確かに、どうやってあの赤子の身体を得たか、当時の自分もさっぱり分かってなかったですから。


 ……ラエティティア様、今更ですが、本当にありがとうございます!


 あ、だからあの時、アルゲオウェントスは慌ててこっちに飛んで来ていたのかな――



 ――とまあ、大体そんなところだ。だから、我が何故ここでそなたを待っていたか、これで分かったであろう?



 はい?

 話、飛んでませんか?

 全然分からないんですけれど。


 美しい谷底の中心でぽかんと口を開ける私に、白龍さんはその巨大な鼻の穴から、ふんす、とまた突風を吹き出しました。

 ちょ汚い! 何か飛んできた!



 ――そなた、ラエティティア様と同じ金色の神気を持っているであろう? そなたの霊力は、属性で言えば女神ラエティティア様しか持ち得なかった<聖>だ。その霊力で精霊を生み出して欲しいと言っているのだ。



 そう言って周囲のマヤリスの大群生を見渡す、白龍の現身を持った風の大精霊。

 そこに、これまで沈黙を保っていたアウローラが私に説明するように言葉を挟んできました。



 ……マヤリスの花は、ラエティティア様がお作りになったデアステラのいわば子孫。お母様が鉢植えのマヤリスにその神力を注いで私を生み出したように、ここのマヤリスにもお母様の祝福を授けて頂けないでしょうか。我が友、アルゲオウェントスが長きに亘って守り育ててきた、この谷の精霊の揺り籠(マヤリス)たちに。そうすればきっと、たくさんの精霊の命が宿る筈で――



 ああ、そういう流れですか。さすがはアウローラ、ナイスフォローです。


 つまり、ラエティティア様に縁近い私がここのマヤリスに祝福を贈れば、もしかしたら新たな精霊が生まれてくるかも、ということですね。

 そうしたら世界を支え続いているラエティティア様の助けになりますし、瘴気も減らせるということで。


 それなら私も望むところです。本当に精霊が生まれるかどうかは分かりませんけれど。

 白龍さんは偉いのかもしれないですが、ちょっと説明が分かり辛いのです。変なの飛ばすし。


 でもそうすると、やっぱりアウローラは私の祝福がきっかけで生まれてきたということで。

 お母様ってそういうことかと、今さらながら分かった気がします。

 まあ、未婚のうら若き乙女に対してお母様呼びは切実に辞退したいところではありますが。だってそのアウローラ、一度消滅する前の記憶も持っているぽいですし、いったい何歳なのかと。時々おばさんみたいな行動も――ぎゃああっ! 嘘です、すみませんすみません! 嘴でつつかないで!




 ま、まあ、とにかく、ここのマヤリスを私が祝福すればいいってことですよね?

 試すのは構わないですけど、この谷間全部のマヤリスに祝福を贈るのは、さすがに一度では厳しいような。病み上がりでまだ本調子ではないですし――



 手前だけでも良いですか、などと聞いてみようと思った時。




 トクン。

 手首でラエティティア様の腕輪が脈打ちました。


 私の巫女服の袖から光が漏れています。

 エマ姉さまに作ってもらった特製の内衣の、その布地の隙間から針のような金色の光の針が何本も立ち昇っていて。


 トクン。トクン。


 これまで、暴走しようとした私の光を散々吸い込んでくれたラエティティア様の腕輪が。

 

 トクン。トクン。トクン。


 なぜか今、その貯め込んだ膨大な量の光が一斉に表に浮かび上がり始めていて。


 トクン。トクン。トクン。トクン――――


 巫女服の右袖全体がぼんやりと輝き始めて――





『フィリア、私の愛しい娘』





 どこからともなく美しい声が響いてきました。

 それを聞いたアルゲオウェントスが、アウローラが、揃って恭しく首を垂れました。


 この声…………知ってます。


 唐突に、理解しました。

 そう、この声は、輪廻からはぐれて消えそうになっていた私を、無償の愛をもって拾い上げてくれた恩人の声。

 感情をなくしていた私を自らの世界に孕み、人として再び生み出してくれた母の懐かしい声。

 初めての祝福祭で暴走し、自らの力に翻弄されていた私を、同じ力を持つ者として優しく労わり導いてくれた先達の声。


 それは、女神、ラエティティア様の声――



『ああフィリア、心配することはありません。よくここまで神気を育てましたね。これだけあればかなりの精霊を生み出すことが出来るでしょう。私が自分で出来なくて申し訳ない限りですが――。さあ、その腕輪に貯めたあなたの神気で祝福を贈りなさい。精霊の母たるあなたから、新たな精霊の誕生を祝って、惜しみない祝福をこの世界に――』



 ――――っ!



 途方もない金色の奔流が、とめどなく全身からほとばしり始めました。

 私はそれを止めることはしないで。

 腕輪に貯まっていた全ての光に、胸の中で高まるあたたかい気持ちを乗せ、どんどん押し出していきます。



 そんな私の口から、知らず知らずのうちに先ほどのラエティティア様の言葉が零れていました。


「……新たな精霊の誕生を、祝って」


 世界の瘴気を払ってくれる、無垢で貴い存在の誕生を願い、寿いで。



「……惜しみない祝福を、この世界に」


 私を暖かく守り育ててくれた全ての人へ、この国に暮らす素朴で善良な全ての人へ。



「心の底から、祝福を――」


 祝福を、贈ります――




 私の想いを乗せ、かつてない規模の光が、視界いっぱいに広がって。

 そしてそれが、金色に輝く無数の祝福に変わり、谷間いっぱいに漂い降りてきて。




 風の大精霊アルゲオウェントスがこの日のために守り育ててきたマヤリスの大群生、そのひと株ひと株が、奇跡の煌めきを宿し始めました。

 それはまるで、光の絨毯のよう。無数の白いマヤリスが、無数の輝くデアステラに変わっていって。


 白緑びゃくろくに輝く鱗を全身にまとった守護龍アルゲオウェントスが、眼前の一面のデアステラを前に、まるで涙をこらえるかのように目を瞑っています。


 神鳥アウローラはまた一段と体が大きくなり、誇らしげに佇んでいて。





『ありがとう、愛しい娘よ。精霊の揺り籠(デアステラ)に命は宿りました。この精霊たちが成長して世界に出ていけば、この国の瘴気は格段に減るでしょう。私もこれでだいぶ楽になります』





 美しい声が、まるで私に微笑みかけるように虚空から紡がれました。

 そして、少し間を置いて、かなり高いところから再び声が降りてきます。



『さあ、後はアルゲオとアウローラに任せて、フィリア、あなたは村に戻り、人として人の中で幸せに生きていきなさい。――それがあなたの望みだったでしょう? また力を借りることがあるかもしれませんが、あなたの心のままに生きて良いのですよ。……ああ、少し話し過ぎました。繋がりが途切れそうです……フィリア、私の愛しい娘……いつまでも、見守っていますよ……』



「ラ、ラエティティア様ぁ!」

 途中から急速に遠ざかっていく懐かしい声に、思わず叫び声が零れました。




『そう……人の中で……心のままに……新たな精霊の母……私の愛しい娘……』











 お帰りになられた――アルゲオウェントスが、誰にともなく呟きました。



 女神が去った谷底には、その身に確かな灯りを点した無数のデアステラが揺れていて。

 風もないのに、静かに、微笑むようにずっと揺れ続けていました。








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