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truth〜歩〜  作者: 樋山 蓮
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Ⅲ.誠人の決意。

「次のニュースです。自国党の総裁選は来月10日に行われることになりました。既に井上派の平山議員、坂城派の千木良議員が出馬届けを提出しております。最有力候補である内閣官房長官を務める山邑議員は未だ表明をしておりません。」

「山邑さんへは、秋山派と中山派の出馬要請がかかっているそうですが、なぜ山邑官房長官は出馬を表明しないのでしょうか?」

「周辺の議員の話を聞きますと、自分は総理の器ではない、もっと優秀な方に頼むべきだ、と謙遜しているそうですね。彼も素敵な国会議員ですし、今回総裁選に立候補すれば、確実に当選すると思われます。」


総裁選の立候補の締め切りが近づくほど、連日テレビの報道は加速した。

芸能人のコメンテーターや、政治評論家などはこぞって誠人さんを推薦している。


「誠人さん…大変そうだね。」

「今は代理で総理やってるし…そんなの考えてる暇ないのかも。」

「そうだよね…。」

「でも、いいチャンスだと思うけどさ。」

「いつかは、宗太郎も総理大臣にならないとね。」

「凜がファーストレディーになるために頑張らないと。」

「まずは、秘書としてちゃんと勉強しないとね。」

「樋川先生はうちの父とも大学時代から仲がいいみたいだし、山邑さんとも仲がいいしね。いつかは総理になる器の方だよね。」

「あ!!そういえば!」

「な、何!?」

「来月、加藤くんも休講があるから、みんなで旅行行こうって!」

「え、旅行?」

「うん。宗太郎の卒業旅行。もう宿も予約してあるから!」

「僕の予定を聞かずにですか?」

「宗太郎の予定なんて知ってるもーん。」

「さすが、凜さん。」

他人の前や私を持ち上げるときは「凜さん。」と呼ぶ宗太郎。私の扱いにはもう慣れてきてしまったみたいだ。

「宗太郎だけ大学からいなくなっちゃうから…最後の思い出としてね。議員秘書になったら私たちと休みが合わなさそうだし。」

「諒太さんと3人ですか。」

「本当は、加藤くんの彼女さんも誘いたいんだけど、OLらしいからさー。」

「なーんだ、諒太さん年上の彼女がいるんだ。」

「宗太郎も年上の彼女が欲しかった?」

「とんでもない。凜さんが一番ですよ。」

「さ、あとは新幹線予約しよーっと!」

「どこ行くの?」

「秘密!」


宗太郎との日々はとても楽しい。

私たちはお互いがお互いを支え合って生きている。喧嘩をしない理由に繋がってると思う。


いつもの他愛ない会話をしていると、私の携帯が鳴り響いた。

「電話だ…誰だろ…?」

着信画面には珍しい人の名前が表示されていた


【山邑 誠人】


「誠人さん…!」

「え、官房長官?早く出ないと。」

「うん。」


わたしは恐る恐る電話に出た。


「もしもし。」

「凜ちゃん?」

「誠人さん。どうされたんですか?」

「いや…相談したいことがあってね…。」

「相談?」

「今夜、宗太郎くんも一緒に神楽坂にある夏目、という店で会いたいと思ってるんだが…。」

「わかりました。何時ですか?」

「ちょうど身体が18時には空くから、19時に予約を入れておくよ。よろしくね。」

「わかりました。」

「じゃあ、公務に戻るよ。気をつけてきてね。あ、優子には内緒で。」

「はい、わかりました。」


電話を切り、宗太郎に話すと心配そうな顔をして「分かった。」とわたしの手を取った。


「そんな、心配そうな顔するなよ…。」

「宗太郎…。」

「そばに居るから。泣きたい時は泣けばいいし、笑いたい時には一緒に笑おう。」

「うん。」


宗太郎と私は、真由美さんにも内緒で出掛けることにした。

「あら、二人でお出かけ?」

「うん。ちょっと買い物に行ってくるよ。」

「お願いがあるんだけど、銀座のいつも行ってるセレクトショップで蜂蜜買ってきてくれない?」

「うん、分かった。」

「遅くなるときは連絡するのよ?」

「行ってきます!」

「凜ちゃんのことちゃんと頼んだわよ。」

…と、真由美さんは心配性で家を出るときはとっても口数が多く、家を出るのが遅くなったりする。


「母さんも口うるさくなったよな。」

「宗太郎のことが心配なのよ。」

「凜も母さんみたいになりそうで怖いな。」

「宗太郎にはその方が似合ってるけど?」

「言ったなー!」


二人で出掛けるのは学校以外では本当に珍しい。

真由美さんから頼まれていた蜂蜜を買い、誠人さんとの約束の時間まで買い物をすることにした。

「凜、こっち来て。」

「なに?」

「これ…どうかな?」

「マフラー?女物じゃない?」

「母さんにだよ。」

「あ!真由美さんそろそろお誕生日だもんね!」

「やっぱアクセサリーのほうがいいかなあ?」

「じゃあ、今度オススメのお店連れて行ってあげるね!」

「本当?あ、もう時間になるしそろそろ電車乗らないとな。」


神楽坂に着き、道に迷いながらも誠人さんに指定された『夏目』というお店にたどり着いた。

「凄いお店だね。」

「国会議員ともなると、こんな料亭に来るのは普通なんだろうけど。」


古民家風のお店の扉を開けると、上品で清楚な女性がお出迎えしてくれた。

「いらっしゃいませ。松風様ですね?」

「は、はい。」

「山邑先生はもうすぐ到着されるそうなので、お先にお部屋にご案内いたします。今回、担当させていただきます。夏目の女将をしております、宮原奈津子と申します。よろしくお願いいたします。」

「よろしくお願いします。」

宮原さんの後ろをついて行き、建物の中でも奥の方の部屋に案内された。

他の客席は小さく区切られた和室になっているようだった。


「凄い部屋だね…。」

「そうだね。政治家っていつもこんなところで食事してるのかな。」

「まさか。きっと大切な話があるんでしょ…?」

二人で話していると部屋の襖が開き、誠人さんが顔を出した。

「凜ちゃん、宗太郎くん。今日はありがとうね。」

「いえいえ。二人で出かけることも久しぶりで…宗太郎のママに心配されたんですけどね。」

「そうかそうか。今日はご馳走させてもらいたくてね。女将さん、とりあえず3人前お願いね。」

「かしこまりました。」

料理が運ばれてくると、さっきまで大学の話をしていたが、いきなり誠人さんの声がワントーン下がった。

「実は…君達も察していると思うが…総裁選に出ることになった。優子には迷惑をかけるが…優子もやってみればと言ってくれた。それと…まだ言ってはいないんだけども、結婚式を挙げようと思う。」

「結婚式…ですか?」

「でも…総理になったらそんな暇…。」

「急なんだが…二週間後の土曜日に式場を予約できた。総裁選の前に、結婚式をしたいんだ。」

「二週間後の土曜日…。」

「10月4日…付き合い始めた記念日なんだ。」

「私たちは何をすれば…?」

「とりあえず、信一郎と真由美ちゃんにも協力してほしい。そのためには君たちの力が必要だ。優子には当日まで秘密にしておいてくれ。」

「なんか、重要な役割ですね。」

「ドレスなんだが…サイズがなあ…。」

「あ、いいこと思いついたんですけど…!」

「いいこと?」

「マネージャーさんに、衣装合わせって言ってドレスの試着して貰えばいいんじゃないんですか?ドラマや映画の監督さんが好きなものにしなさいって言ってるとか言えば、ママが好きなの選びそうだし!」

「それ、いいアイディアだね!」

「じゃあ、マネージャーさんには私が連絡しておきます!」

「日にちもないし、知り合いとか家族が集まれたらいいけど…。」

「楽しみです。ママがやっと好きな人と結婚式を挙げられるなんて。結構サバサバしてるように見えて、ロマンチックなのが好きだし…喜ぶと思う。」

「優子のことだから…エステも行かないのに結婚式なんて!とか言いそうだし、真由美ちゃんか凜ちゃんにエステに誘ってほしいんだけど…どうかな?」

「わかりました!ママのスケジュール確認して誘いますね。」

二週間後の結婚式に向けて、話が盛り上がり、時間はもう21時になってしまった。

「それじゃ、二人とも頼んだよ。」

「今日はご馳走さまでした。」

「信一郎と真由美ちゃんによろしくね。」

「はい!」

誠人さんは迎えの車に乗り、店を後にした。


それから一週間後、マネージャーさんに協力してもらってドレス選びをしてもらい、結婚式の前日にはママをエステとネイルサロンに誘った。


「急にエステなんてどうしたのよ!」

「真由美さんから、エステの割引券もらったの!とっても有名なお店でね、母娘で行くと半額にしてくれるんだってー!」

「凜も大人になったのね。」

「そうだよ、大人!」


ママにはブライダルエステコースを、と事前に予約して伝えてあり、私は脱毛コースの安いプランをママに勘付かれないように予約した。


「こんな本格的なエステ久しぶりにしたわ!これで半額なの?」

「そうなの!」

「お会計、ママがするわね。」

「大丈夫!もう払ってあるから!」

事前に、誠人さんの秘書さんが払いに来てくれたそうだ。


「ママ、ネイルも新しくしよ!」

「え〜、この前やったばっかりよ?」

「ママの行きつけのネイルサロンもう予約してあるの!店長さんがママのネイルやってくれるって!」

「もう、今日はどうしたの?いきなり親孝行するつもりになったの?」

「ふふ。だって、ママと離れて暮らしてるとママのありがたさを感じてるの。たまには親孝行しないとね。」

「ママも凜が居たから今こんなに幸せなんだもん。ありがとね。」


ネイルも白ベースにして欲しいと電話で伝えておいたおかげで、ウェディングネイル仕様にしてもらえた。

「わー!白ってあんまりやったことなかったけど、こんなに指が綺麗に見えるのね!」

「婚約指輪が映えて見えるね。」

「本当?帰ったら誠人に見せないと!」

「誠人さん、総裁選に立候補したって言ってたから、忙しいの?」

「そうみたい。しかも今は秋山総理の代理もやっているしね。でも、必ず家に帰ってくるから、料理だけでも作っておくのよ。」

「ママ、幸せだね。」

「うん。ありがとね。」

「あ!やばい!わたし用事があるんだった!ママ、気をつけて帰ってね〜!」


今日は今から式場に向かい、打ち合わせをする予定がある。


式場に向かうと、ちょうど黒い車が停まって後部座席から誠人さんが出てきた。

「凜ちゃん、ありがとね。」

「エステもネイルもバッチリです!」

「2時間だけしか余裕が無いんだが、凜ちゃんが来てくれたら明日も楽勝だな。」

「宗太郎も多分中にもういるかもしれない。」


二人で式場に入っていくと、ロビーに宗太郎と信一郎さんが居た。

「信一郎!わざわざ来てくれたのか?」

「宗太郎から連絡が来てね。ちょうど時間が空いたからさ。」

「ありがとう。」

「山邑様、お待ちしておりました。当日の打ち合わせをしたいと思いますので、別室にお願いします。」

担当の藤川さんは数日前に誠人さんとドレスの確認とタキシードを一緒に選んだ時に会っている。


「お母様のご結婚式をサプライズされるなんてとても幸せですね。」

「はい!」

「では式次第を確認させていただきます初めの挨拶は泉信一郎様。ご紹介文ですが…ご祝辞のお言葉を頂戴いたしますのは、新郎新婦の中学時代からの親友であります、自国党衆議院議員・外務大臣をお勤めになられております、泉信一郎様でございます。泉様よろしくお願いします。…という形になります。他の方も同様の紹介文になります。」

二週間前にいきなりきまった結婚式なのに、お母さんの知り合いが真由美さんや信一郎さんのおかげで集まってくれることになった。

披露宴の途中にはお母さんの友達からのお祝いのメッセージ、また事務所のマネージャーさんが知り合いの方に結婚式の映像を頼んでくださった。スライドショーは宗太郎と二人で作ることになり、ここ二週間で2人の昔の写真なども預かり、一生懸命作成した。

ウェルカムボードは真由美さんの手作りで、信一郎さんは知り合いのパティシエに帰りに渡すクッキーを作ってもらった。


「では、明日よろしくお願いします。」

「誠心誠意、素敵な挙式になるよう、サポートさせていただきます。わざわざ足を運んでいただき有難うございます。」

「官房長官、次の公務がありますので、お急ぎください。」

「ああ。凜ちゃん、宗太郎くん、信一郎…ありがとう。明日もよろしく頼む。」

「誠人さん、くれぐれも明日は寝坊しないでくださいね!」

「誠人、いい式にしような。30年越しの結婚式な。」

「おう!じゃ、また明日!」

そう言って、誠人さんは車に乗って式場を後にした。



お久しぶりです!

更新が遅くなってしまい、申し訳ないです。


ついに、誠人さんが決心しましたね。

総理大臣ってどんな人がなるんだろーって色々調べましたよ!笑


今の総理大臣である、安部総理のお爺ちゃんは岸信介総理だったとは…笑。

麻生総理のお爺ちゃんが吉田茂で、そのまたお爺ちゃんが大久保利通ってのはなんとなく知ってましたが…総理になるって相当大変なんだなー!って思います!


私は高校時代、日本史を受験科目にしていたので一時期は歴代総理全部覚えてたんですけど、今は覚えてないなあ〜…(笑)


えー、今後の展開も楽しみにしててくださいね!

わたしも宗太郎と凜ちゃんを見守っていきたいと思います!


樋山 蓮

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