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truth〜歩〜  作者: 樋山 蓮
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Ⅰ.ママの覚悟

あの日のプロポーズから3年が経った。

あれから、ママと誠人さんは一緒に暮らすことになり、中学の時に出会ってから31年…やっと婚姻に至った。

前年に大物俳優と離婚したモデル・夕蘭が、幼馴染で恋仲にあった政界で今をときめく内閣官房長官との復縁は話題になり、ついに結婚に至った事実は世間を賑わしていた。


私はママが誠人さんと暮らし始めてからも、宗太郎の家にそのまま住まわせてもらっている。

信一郎さんも、真由美さんも私のことを娘のように思ってくれているので、とても心地がいい。


私たちはもうすぐK大を卒業する。

私は、弁護士になるために法科大学院への進学が決まった。

宗太郎は、来春から樋川大臣の私設秘書になることが決まっている。


お正月が過ぎ、私と宗太郎は卒論も終えてほとんど家にいることが多くなった。



「凜、大変だ!」

宗太郎も私のことを凜と呼ぶことに慣れてきている。

「どうしたの!?」

「秋山総理が倒れたそうだ」

「え?総理が?」


2期6年続いている秋山内閣。誠人さんはずっと女房役・内閣官房長官として務めてきた。


「副総理は指名されていないし、当分…総裁が決まるまでは、山邑内閣官房長官が代理で総理をやられるかと。」

「誠人さんが…」

「優子さんも気が気じゃないでしょうね…」

「ママ…大丈夫かなあ。」

「優子さんのところに一度行ってみましょうか。きっと、うちの父以上に山邑さん忙しくて寂しがっているかもですね」

「あ、じゃあ…真由美さんにママの好きなフレンチトースト頼もうかな」

「じゃあ、頼んできます」


3年前に、宗太郎が言っていたことを思い出した。

『凜さんよりも先に…優子さんがファーストレディーになるかもしれないね』


ママが、ファーストレディー…。

でも、ママなら…務まりそうなきがする。


真由美さんにフレンチトーストを包んでもらい、私と宗太郎は港区にある高層マンションに向かった。

「ママに会うの久しぶりかも」

「優子さんも仕事忙しいからね」

「今日はたまたま休みだっていうから、楽しみ。」

「今日、僕も一緒に来ない方が良かったかな?」

「ううん。ママも宗太郎に会いたいって言ってたよ。」


オートロックのインターホンを鳴らし、ママが「凜〜!来てくれたのね!今開けるね〜」と声だけでもウキウキしているのがわかった。


「宗太郎くんもありがとね〜」

「これ、母が優子さんにって。」

「え、嬉しい!真由美の手作りフレンチトースト!」

「ママが元気そうでよかった」

「心配させちゃってごめんね」

「秋山総理が急病ってきいて、きっと山邑さんとっても忙しそうなので」

「確かに、昨日から一睡もできてないみたい。」

「そうなんですね…」

「当分はわたしも仕事が忙しくて…あの人のことちゃんとサポート出来てなくてね」

「ママ、いい恋してるね。」

「え?そう?」

「だって、こんなに忙しくても一緒に愛する人と居るだけで、とっても幸せそうだもん」

「ふふ。そうね。とっても楽しいもん。ちょっとしたら…仕事の量減らそうと思ってる。あの人のこと、もっと支えてあげたいの」

「もしかしたら、次の総裁選は山邑さんを擁立する動きがあるみたいなので、優子さんがファーストレディーになるかもしれませんね。」

「ファーストレディー…ね。」

「ママ、ズルイよ〜!私より先にファーストレディーになるなんて!」

「わたしも、こんなことになるとは思わなかったわ。」

「でも、私よりもママの方がファーストレディーに相応しいと思う!」

「そうかなー?」

「ファッションセンスもいいし、注目の的に!みたいな!」

「もー、まだなってないのに!凜ってばせっかちね!」


私とママの会話を聞いて、宗太郎はそばで笑っている。

「宗太郎くん。」

「は、はい!」

「凜のこと…よろしくね。信一郎も真由美も凜のこと大切にしてくれてるし…本当に感謝してもしきれないわ。」

「凜さんが居るだけで、うちの家はとっても明るくて。もう4年近く一緒にいるので娘のような存在です。」

「宗太郎くん、凜のこと頼んだわよ。」

「任せてください。ずっと守り抜きます。」

「凜も、大学院頑張ってね。」

「うん。いつか宗太郎の役に立つために絶対に弁護士になるから。」


ママは誠人さんのプロポーズを受けた後、私と3人で暮らしたいと申し出た。誠人さんも、私とママと3人で暮らすことを望んでいた。

でも、ママには絶対に幸せになってもらいたい、私のことをよりもずっと我慢してきた自分のことを大切にしてほしいと気持ちを伝え、宗太郎の両親も私の意思を汲み取ってくれて、「いつか義理の娘になるんだから当然だろ」と私との同居をママにお願いしてくれた。


何よりも、ずっとママと誠人さんを見守ってきた信一郎さんが望んでいたことかもしれない。


「ママ、寂しくなったら帰ってきてね。」

「大丈夫よ。寂しくなんかない。凜が立派に泉家で成長している姿を見て、わたしも頑張らなきゃって思って。」

「私も頑張るね。ママ。」


マンションを離れると、宗太郎が口を開いた。

「幸せそうでよかったね。」

「うん。」

「僕も、山邑さんを見習って、凜のこと幸せにしないと。」

「ずーっと、幸せだよ。」

「僕もずっと一緒に居れて幸せです。」

「ふふ。」

「でも…これからはずっと一緒に居られるわけではないので、心配です」

「何言ってるの?もうあの会社は倒産したんだし、怖くない。」

「凜が法科大学院に行くなんてびっくりしたけどね。」

「弁護士になって、宗太郎のことサポートしたいからね。」

「諒太さんは医学部だし…僕だけ卒業ってなんだか寂しいな。」

「加藤くんに全然会ってないね。」

「諒太さんは期待されてますからね。お父様は心臓外科の名医ですから。」


実は、加藤くんにも彼女ができたらしい。医学部というだけで外部ではかなりモテるという噂は聞いていたが…

加藤くんの彼女はどうやらキャビンアテンダントらしい。

宗太郎から聞いた話によると、国際線のキャビンアテンダントだという話だ。国際線となると、だいたい27歳位の女性だろうか。加藤くんが年上好きとはびっくりした。


宗太郎だけが今年卒業することもあり、私達は卒業旅行を宗太郎のためだけに秘密で計画している。

あと2年経ってしまうときっと私と加藤は国家試験などで忙しいだろうし、宗太郎も国会議員の秘書という仕事に就くわけだから、時間を合わせるのは今しかない。

その話のために連絡していたのだが、加藤くんの恋愛事情までおこがましくも聞いてしまっている私がいた。




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