プロローグ
プロローグ
4月1日。冬の凍てつくような寒さも終わりを迎え、いよいよ日差しも暖かくなってきて桜もつぼみが膨らみ始めたころ、俺は一人新たな生活の始まりを迎えていた。
必死に勉強に明け暮れなんとか都内の大学から合格通知をもらった俺は家を飛び出し、東京と言う大都市にやってきた。そんな右も左もわからない見慣れぬ街で、今日から一人で暮らしていくのだ。
東京の都市の少し外れの小さな駅――事前に調べておいた新たな住居の最寄り駅で、予定通りに電車を降りる。電車を降りた後の経路も調査済み。手にした地図を頼りに見慣れぬ街を一人で歩く。
が、ホームを出た時に少し面食らう。駅の路線の数の多さや、何よりその利用人数。そのあまりの規模に辟易したし、改札を抜けた後は店の数やビルの規模に驚かされた。別に東京に来るのは初めてではないが、行ったことがあるのは新宿や渋谷などの大都市だけだ。
今まで名前も知らなかったような中心部の外れの駅がここまで大きいとは知らなかった……ただ単に俺が世間知らずなだけだったのかもしれないが、そんなことでいよいよ東京に来たのだと実感する。
当然、少なからず東京での新たな生活への不安もある。学業のことや、身の回りのことなど……同じ大学に進学する知り合いは一人もいないし、一人暮らしをするということは料理も洗濯も全部自分一人でこなさなければいけないのだ。正直なところ、楽しみよりも不安が勝っていたかもしれない。
だが、東京という憧れの街で、夢にまで見た大学で新しいスタートを切れるのだ。これ以上に楽しみなことはない。
これから暮らしていくことになる町を観察しながら、ゆっくりと歩いていく。コンビニにスーパー、居酒屋にカラオケと実家のそばでは貴重だった店が、何件も乱立している。ただ道を歩いているだけでも興奮してしまって、田舎者丸出しだ。
駅から新居まではそう遠くない。駅から歩いて10分程度のなかなかの好立地で、大学生活を送るには絶好の条件だ。
しばらく歩くと、目指していた小さなアパートがようやく目に入ってきた。体感時間的には20分くらいたっている気がしたが、時計を確認すると駅を出てから12分しか経っていなかった。
そこで、改めてこれから暮らしていくことになる小さな建物に目を向ける。
――絶対に最高の大学生活にしてみせる……!!
そして、そう決意してこれから俺が暮らしていくことになる新居の階段を駆け上がる。学生向けのアパートらしい、そんなに立派な建物ではない。けれど、俺一人が暮らしていくだけなら問題ない。
205号室……俺がこれから暮らしていくことになる部屋の番号だ。目の前の部屋の番号ともらったキーに付いている部屋番号を確認する。
――よし、間違いない。
そして、いよいよ、新生活を迎えるべく205号室の扉を勢いよく開いた。
眼前に広がるまっさらな部屋。決しておせじにも広いとは言えないが、それでも一人で暮らしていくには十分すぎる大きさの部屋。
――が、そんな綺麗でまっさらな部屋に異質なものが一つ。いや、一名と言うべきか……
俺の借りた部屋のはずなのに、堂々と部屋でくつろぐ少女が一人。そいつは何の邪気もない目で俺を見つめていた。
「あ、こんにちは!私、この部屋の自縛霊をやらせてもらってる片桐惣乃って言います!!」
あろうことかそいつは、出会いがしらにそんなことを言い放ちやがった……




