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悪魔-デモンズ-  作者: 北郷 信羅
第6章 悪魔
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14,協力

 「……へへっ」

凄まじい速さで斬撃が飛び交う。総一郎はそんな戦いの中で思わず笑う。

「何がおかしいんだ?」

彼と互角の戦いを繰り広げている賢悟が問う。しかし、そう言う賢悟も愉快そうにしている。

「こういう戦いは、俺の主義じゃないんだけどさ、」

賢悟の攻撃を受け流しながら、総一郎は答える。


 しかし話しながらの戦闘とは言っても、そのレベルは常人のそれを遥かに凌駕しており、周りにいる軍人たちが入っていけるようなものではない。下手に手を出せば、即座に切り刻まれてしまうだろう。


 「……だけど、何でかな、今はすげえ楽しい」

「そうか」

総一郎の払った剣を跳んでかわしつつ、賢悟は言う。

「それは多分、自分と同程度の剣士と戦っているからじゃないか?お前くらい実力があると、互角の戦いができる相手は殆どいないだろうからな」

「なるほどね。確かに俺は、心のどこかで物足りなさを感じてた」

賢悟の剣を受け止めて、総一郎は納得したように頷く。

「……で、そっちはどうなのよ?」

総一郎は足を蹴り上げ、半歩さがった賢悟に再び剣を水平に入れる。しかし賢悟は冷静に剣を立てて受け止めた。

「俺がそうだから、お前もそうなのかと思ったんだ」

賢悟は総一郎の剣を跳ね上げて、反撃に出る。……と、

「……!?」

建物全体が揺れた。2人は剣を止める。

「何だ……?」

総一郎が怪訝そうな様子で辺りを見回す。

「多分、うちの大将だ」

賢悟が言う。

「アレを動かしたに違いない」

「アレ?」

総一郎は首を捻る。

「俺の推測が正しければ……」

賢悟は淡々と話す。

「こんなとこで喧嘩してる場合じゃない」


◆ ◆ ◆


 「……」

広間まで戻ってきた信治は、そこに残っている渚に気がついた。彼女は、泣き止んではいたが、壁際で膝に顔を埋めていた。

「その魔族はいいでしょ。放っておきなよ」

奏が言う。

「うん……」

信治は広間を出ていく彼女を追う。が、途中で引き返して渚の元に戻った。

「逃げないと死ぬよ」

「……」

渚は答えない。

「ほら。早く」

信治は彼女の手を引く。

「……」

しかし渚は首を横に振って、その場から動こうとしない。

「死んだら何にもなんないよ」

「生きてたって何にもなんない」

渚は声を震わせながら言う。

「どうして?」

「お父さんがいないから」

渚の頬を再び涙が伝う。

「そっか……。でも、それなら尚更生きなくちゃ、お父さんの分も」

「無理。できない。ずっと、お父さんの言う通りにしてきたもん。お父さんいなかったら私、何したらいいか分かんないよ……」

「なるほど、ね」

信治は納得する。この少女には、善も悪もないのだ。ただ、父親の言葉に従って動く。そのように教育されてきたのだろう。

「……でも、こう言っちゃアレだけど、君は自由になったんだよ。これからは自分の好きなことを好きなようにできるんだ」

信治は幼い子供に言い聞かせるように、柔らかい物腰で話す。実際この18前後の少女は、身体こそ年相応に発達しているが、その中身は10歳にも至っていないようだった。

「好きなことなんて……わかんない」

「それならこれから見つければいい」

渚は顔を上げる。

「な。ほら、行こう」

信治はもう一度、彼女に手を差し伸べる。

「……」

渚はようやく、その手を掴んで立ち上がった。

「よし」

……と、再び建物が揺れる。

「マズい……。急ごう」


 信治と渚が外に出た時には、本部1階の床は既に凍り始めていた。

(このままじゃ……、本当に国が氷に覆われかねない……!)

信治は凄まじい勢いで凍り付いていく軍本部を振り返って危惧する。


♦ ♦ ♦


 その頃、反乱軍は既に、本部を囲うように展開していた。

「でもこの数じゃ抑え込めない……!これで目一杯なんですかっ!?」

奏が他の隊長に訊く。

「ええ。最大、です」

「……ッ!」

奏は拳を握りしめる。


 「我々も協力しよう」

奏にそう言ったのは賢悟だった。

「え……、どういうことです?」

奏は怪訝そうに訊く。

「まあ確かに、我々は総帥側の人間だが、だからといって大将と心中する気はない」

賢悟はキッパリとそう言った。

「だいたい、この『氷』は、あくまでも威嚇のためのものだったんだ。本当に使用されて俺たちも正直驚いてる」

「……ではお願いします」

奏としては、言いたいことは山ほどあったが、今はひとまず、素直に協力を要請することにした。


 氷はその勢いを増しながら、街へと迫っていた。

「突出するなよ!全員で人工魔法を使いながら、接近してくる氷を叩くんだ!」

賢悟が指示をとばす。再び一体となった掃討軍は、本部を囲うように隊列を組んで氷塊を打ち砕く。……しかし。

『ダメですっ!砕いても砕いても氷の勢い弱まりません!』

美奈が、反乱軍の医療班のテントに作られた臨時の本部にいる奏に連絡する。

由美香(ほんたい)を叩かないとダメか……!」

『私もそう思います!じゃないと……うわッ!』

「美奈!?」

奏が叫ぶ。

『あっ……、私は大丈夫ですっ!でも……』

「北側の部隊の陣形が崩れましたっ!」

連絡班の1人が賢悟に報告する。

「……隣の部隊を……」

「どこも手一杯の状況で動けません!」

「……まだ足りないか……!」

賢悟は唇を噛む。


 先ほどまでの政府軍と反乱軍との戦闘で、多くの軍人が死亡もしくは、重傷をおっており、この作戦には参加できない状況にある。作戦に参加している者たちもかなり疲弊しており、その体制が万全とは言えない。


 (どうする……!?)

賢悟が策を思索していた、その時だった。

「あっ……!北の部隊が態勢を立て直せたようですっ!」

連絡班の軍人の1人が叫ぶ。

「な、何で……」

賢悟は驚いて問う。

「魔族ですっ!魔族の一団が、北の部隊に加勢したとのことです!」

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