11,最強
奏と信冶は苦戦していた。相手はたった1人の軍人。政府軍の実質の総隊長となっている賢吾である。
「信冶っ、下からッ!」
奏は叫びつつ、賢吾に向かって抜刀する。彼女の刀は左腰の鞘から右上方に向かって放たれた。と同時に腰を低く落とした信冶がその斬撃の下で水平に剣を振る。互いに互いの力を抑制することもなく、まさに最高のコンビネーションであった。
「ッ!」
しかし賢吾の実力は、それを上回っていた。奏と信冶、2人の攻撃を尽く受け流しているのだ。
「ぐッ……!」
それどころかすぐに反撃に転じ、奏たちを跳ね飛ばした。
「……強い……!」
信冶は焦りを隠せない。
「負けないッ!」
奏は、半ば自分に言い聞かせるように叫び、賢吾に向かって再び突進した。
「待っ、奏!」
信冶の制止も聞かずに、彼女は刀を振る。実際のところ、奏も焦っていたのだ。
「あッ……!」
奏の刀は、賢吾に止められる。賢吾は剣を振り上げて彼女を跳ね上げた。そして体勢の崩れた奏に素速く斬撃を放つ。
「……ッ!」
賢吾の剣は、ギリギリのところで信冶に止められた。
「ぐ……!」
しかし強引に割って入ったため、信冶の姿勢は乱れている。
「その子のためか。……いい度胸」
賢吾は剣を強く払った。賢吾の攻撃のタイミングがわずかに遅れたことで、奏は体勢を立て直してその攻撃を受けることができたが、同時に信冶の体勢が崩される。
「信冶ッ!」
次の瞬間、高速の斬撃が信冶を駆け抜けた。
「!」
信冶はなんとか防いで致命傷こそ避けたが、彼の守りの穴を抜けたいくつかの斬撃は信冶の肩や、腕、脚と体中に傷を負わせた。
「中途半端な戦いをする奴は……」
言いかけた賢吾に向かって、奏が抜刀する。しかし彼女の刀は賢吾に届かず、逆に強い力で地面に叩き付けられてしまう。
「……死ぬんだ」
地面に転がる奏を見下ろして、賢吾はそう続けた。
(勝てないっ……!)
奏は相手と自分との実力差を思い知る。
「奏っ……!」
信冶がなんとか起き上がってもう1度賢吾に斬りかかろうとした、その時だった。
「……なんだ?」
建物の外で大きな爆発音が響いた。
「……ふう。ようやくここまで来れたな」
激しく燃え上がる炎の中から姿を現したのは、総一郎と修だった。
「何者だ?」
賢吾が問う。
「何者かって訊かれると、『杉田総一郎』って答えるしかねえな……、俺肩書きとかねえし」
総一郎が答える。
「お前名乗れば?」
これは修に向けて言ったものだ。
「名乗る必要なんてねえ」
修は吐き捨てるように言う。
「そうか。……まあいい」
そう言うと同時に、賢吾は動いていた。
「!」
次の瞬間、激しい金属音が鳴り響く。賢吾が素速く抜いて振り下ろした剣を、総一郎が受け止めたのだ。
「速……!」
奏が唖然とした様子で呟く。
「ほう……、受け止めたか」
賢吾は感心した様子を見せる。
「うわ、面倒くせえのに当たったなー……」
総一郎は苦笑して言った。




